第6話「IRENE CASSINI(アイリーン・カッシーニ)という名前に秘められた物語:中篇」 〜『GATTACA(ガタカ)』徹底考察〜

  • 2019.03.24 Sunday
  • 18:52

 

 

 

 

 

 

さて、「IRENE(アイリーン)」の話はこれくらいにして、次は苗字の「CASSINI(カッシーニ)」を深読みしよう…

 

 

 

ファーストネームの「アイリーン」についてはコチラをどうぞ。

 

 

 

「カッシーニ」は、深読み要らへんやろ。

 

あの「カッシーニ」そのまんまや。

 

 

 

土星突入シーンとか、ちょー泣ける…

 

最初から帰って来れないミッションだったんだ…

 

 

そうよ…

 

カッシーニは長い旅路の果てに土星へ到達し、与えられた任務を全うし、最後は燃え尽きることでその使命を終えた…

 

あれだけずっと土星のそばにいたというのに、カッシーニは結局、土星の地面…つまりコア部分を見ることも触れることもできなかったの…

 

土星は厚さ1000劼離スに包まれていて、その本当の姿は誰にもわからない…

 

カッシーニはただ、バカみたいに土星の軌道上をぐるぐる回っていただけ…

 

 

相変わらず意味深やな。

 

重い女は嫌われるで。

 

 

そういえば、カッシーニの打ち上げが「1997年10月15日」で、映画『ガタカ』の公開日は「1997年10月24日」だよね。

 

しかもどっちも最終目的地は土星…

 

これって偶然?

 

 

偶然じゃないよ。

 

『GATTACA(ガタカ)』は「カッシーニ打ち上げ」に合わせて作られた映画だからね。

 

だからヒロインの苗字が「カッシーニ」なんだ。

 

 

ちょー単純 (笑)

 

 

でも、それだけじゃない。

 

「カッシーニ」という名前には、もっと深い意味が隠されているんだ。

 

 

深い意味?

 

 

ワタシハ…ワタシハ…

 

 

ん?


 

ガタガタ…ガタガタ…

 

 

ここで《深詠み》!?

 

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタ…

 

 

花笠君…

 

 

ピタッ

 

 

 

 

こ、これは…

 

元レピッシュ上田現の『カッシーニ(土星に環がある理由)』…

 

 

せやから「重い」のはアカンて言うとるやろ。

 

最後に自分で言うとるやんけ…

 

 

あそこは「重い」じゃなくて「想い」なの…

 

 

だけどタイトルがズバリ『カッシーニ』なんて面白いね。

 

映画『ガタカ』にも重なる感じがする。

 

 

せやな。

 

歌詞の中の「あなた/土星」、つまり「わたし/カッシーニ」が惚れてもうた相手は、決して手に入れることの出来へん存在や。

 

『ガタカ』でユマ・サーマン演じるアイリーン・カッシーニは、イーサン・ホーク演じる主人公ヴィンセント・アントン・フリーマンを愛してもうた…

 

最初から死ぬつもりで土星へ旅立とうとしとったヴィンセントのことを…

 

 

 

そしてジュード・ロウ演じるジェローム・ユージン・モローも、最愛のヴィンセントのことを想いながら、最後は焼却炉の中で燃え尽きてしまうんだったね。

 

ジェロームの場合は「灰や塵」になることで、いつかヴィンセントと一緒になることを望んだんだ。

 

カッシーニが「灰や塵」になって土星と一体化したように…

 

 

 

・・・・・

 

 

それだけではない。

 

『ガタカ』と『カッシーニ(土星に環がある理由)』の世界観が似ている理由は、他にも大きな共通点があるからなんだよ。

 

 

大きな共通点?

 

 

両者とも「イエス・キリスト」が投影された物語なんだよね。

 

『ガタカ』の主人公ヴィンセントは、両親が「普通とは違う形」で妊娠し、出生時に「寿命が30年くらい」と宣告され、エリート層である適正者たちからは「神の子」と馬鹿にされていた。

 

まさにイエスの投影だね。

 

そして『カッシーニ(土星に環がある理由)』の歌詞の中の「土星/あなた」にも「イエス・キリスト」が投影されている。

 

あの歌はイエスを想う歌なんだよ。

 

 

来た来た!いつものパターン!

 

 

では歌詞を見ていこう。まずは1番から。

 

たとえ世界が喜びに溢れ

光り輝いた朝を迎えても

もしあなたが消えてしまったら

私にとっては もうここはさみしい所

 

いきなり「わかりやすい」出だしでしょ?

 

喜びに溢れた朝を迎えたというのに、「あなた」が居なくなってしまうことを憂いているんだよ…

 

 

うわ…ホントだ…

 

これってモロにイエス・キリストのことじゃんか…

 

 

喜びと悲しみが混じり合った複雑な朝…

 

救世主イエスの誕生と、馬小屋の屋根にとまって死を予兆したMAGPIE(カササギ)やな…

 

『キリストの降誕』ピエロ・デラ・フランチェスカ

 

 

その通り。

 

『ガタカ』でも「喜びに溢れた朝を迎えるはずだったのに、愛する人の不在・死を予感して悲しむ」というシーンがあったよね。

 

ヴィンセントとアイリーンが初めて結ばれた翌朝、ベッドからこっそり出て行ったヴィンセントを、アイリーンは寝たふりをしながら感じていた…

 

身体には喜びの余韻が残っているけど、頭には悲しみの予感が渦巻いているんだ…

 

 

 

切ないわね…

 

 

 

 

 

 

せっかくエエところやのに間抜けな声出すなボケ。

 

なにが「ぽえ〜ん」やねん。

 

 

そんなこと言ってないわ…

 

 

じゃあ、お前か?

 

 

なんでオイラが「ぽえ〜ん」なんて言うんだよ。

 

幻聴じゃないの?

 

 

変やな…ワイの空耳か?

 

 

では1番の続きを見ていこう。Bメロの部分だ。

 

はっきり目に映る程 こんなに近くにいる

唯それだけのことが 本当に不思議で嬉しい

 

ここで重要なのは、「あなた」は「私のそばにいない」ということだ。

 

だけど何らかの形で「目に映る」んだよね。だからまるで「近くにいる」ように感じられるんだ。

 

 

つまり…

 

「私」には「あなたそのもの」が見えているわけじゃない、ってこと?

 

 

そういうこと。

 

僕らは「土星の姿」を直接は見ることはできない。カッシーニが撮影した画像でしか知ることはできないよね。

 

そしてこれは、そのままイエス・キリストにも当てはまる。

 

 

確かに絵や彫像でしか知らへん。

 

 

そして1番のサビだ。

 

土星の環っかがある理由を

知らないまま この地上で

今日も暮らしてるけど

重なる手と手の間(あいま)に広がる

銀河の深さに ねぇ吸い込まれそうだよ

 

 

「土星」も「イエス・キリスト」のことだから…

 

「土星の環っか」といえば…

 

 

額の「荊の冠」と…

 

頭の周囲に光の環として描かれる「光背」のことやろ…

 

『十字架のイエス』カール・ハインリヒ・ブロッホ

 

 

このカール・ブロッホの絵にもあるように、地上で暮らす人々は、イエスに光の環「光背」がある理由をわかっていない。

 

主イエスが地上に降り立ち十字架で磔にされたことは、すべて全知全能の「神の計画」によるものだから、未完全な存在である人間にはその意図も仕組みも理解はできないんだ。

 

 

そしてまた「重なる手と手」が出て来たぞ。

 

さっきの「MAGPIE(カササギ)」といい、なんだか『スリー・ビルボード』の時を思い出すな。

 

 

 

クリープハイプの『手と手』も『スリー・ビルボード』も、イエス・キリストがモチーフに使われているからね。

 

「最愛の人の不在」をテーマにする時って、イエスを重ね合わせたり、聖書の物語を引用するケースが多いんだ。

 

世界で一番有名な「不在」だからね。

 

 

手と手を重ねたら「幸せ」やろ。

 

 

 

確かに「重なる手と手」は「幸せ」なんだけど…

 

『カッシーニ(土星に環がある理由)』の歌詞における「手」には、別の意味が隠されているんだ。

 

 

別の意味?

 

 

「重なる手と手の間」には「吸い込まれそうなほどの銀河が広がっている」んだよ。

 

つまり「手と手の間に宇宙がある」というんだね。

 

この意味わかるかな?

 

ヒントは「手」という文字の形にあるんだけど…

 

 

「手」の形?

 

 

わかった!十字架のことじゃない?

 

 

なぬ!?

 

 

その通りだ。

 

思わず吸い込まれてしまいそうになる「重なる手と手の間に広がる宇宙」とは、これを指していたんだよ。

 

古から宇宙は神と同一視されてきたからね。

 

 

 

イエスと一緒に磔になったゲスタスとディスマスか…

 

ホンマかいな…

 

 

それが2番でハッキリわかるんだよ。

 

この歌には「手」が3つ登場するんだ。ゴルゴダの丘みたいにね…

 

まずAメロから見ていこう。

 

世界中に転がってる 石ころのような

でも誰も壊せない祈り

ああ あなたを思うだけでも

こんなに苦しくて こんなにも愛しい

 

 

来た!石ころ!

 

 

2番の出だしも面白いよね。

 

聖書で「石」といえば「ケファ」、つまり使徒ペテロのことだ。

 

イエスはガリラヤ湖の漁師だったペテロに「今日からあなたをケファと呼ぶ」と言い、「ケファの上にわたしの教会が建つ」と語った。

 

弟子たちの中で最も意志の弱かったペテロを「硬い石」だとし、そういう弱き者の上にこそ堅い信仰が築き上げられ、それを広める教会が作られると説いたんだ。

 

 

なるほどな。

 

 

あなたを思うと、こんなに苦しくて、こんなにも愛しい…

 

わかるわ、その気持ち…

 

 

いちいち涙ぐむな。重い言うたやろ。

 

せやから男が出来ひんのや自分。

 

 

そしてこの後、私に「苦しみ」と「愛しさ」を与える「あなた」へ、言葉にならない「呼びかけ」が続く。

 

イエイエイエ…イエイエイエ…フッフ、イエィ…

 

 

 

そこはどうでもええやろ。

 

 

そんなことないんだな。

 

この「イエ」は「イエス」のことだから。

 

「イエス」と直接言ったらバレちゃうんで「イエフ」で誤魔化しているんだね。

 

 

ホンマかいな!

 

 

冗談のように聞こえるかもしれないけど、イエス・キリストをモチーフにした歌では、たまに使われる手法なんだ。

 

いずれ、同じように「イエ」を効果的に使った他の歌も紹介すると思う。

 

 

・・・・・

 

 

そして2番のBメロが始まる。

 

カンパネルラが聞こえた

何処かで誰かが生まれた

そして誰かが消えていく

わたしはあなたの手を握ってる

 

 

カムパネルラ?『銀河鉄道の夜』の猫?

 

 

 

「カンパネルラ」とはイタリア語で「小さな鐘」という意味だ。

 

「何処かで誰かが生まれた」ことを知らせて鐘の音が聞こえてきたというんだから、これのことだよね。

 

 

 

メリクリか。

 

そんで「誰かさん」は「消えていく」わけやな。

 

 

そうすると「わたしはあなたの手を握ってる」という歌詞の意味もわかるよね。

 

1番の「重なる手と手」はイエスの両脇の十字架のことだった。

 

つまり、わたしが握る「あなたの手」とは…

 

「イエス・キリストの十字架」に他ならない…

 

 

 

 

ああ!

 

そういえば『ガタカ』の主人公ヴィンセントの誕生シーンでも…

 

 

オカンがロザリオを手で握りしめとったわ!

 

 

 

2番のサビは、さらに興味深いよ。

 

土星に環っかがある理由を

考えてみた

ガリレオはきっと笑うかな?

 

 

なんでガリレオが笑うの?

 

 

土星の輪を発見した本人やさかいな。

 

ガリレオ・ガリレイ(1564−1642)

 

 

正確に言うと違うんだよ。

 

ガリレオ・ガリレイは望遠鏡を使って、土星の周りに「何かがある」ことを発見した。

 

だけどそれを「環っか」だとは気付けなかったんだ。

 

ガリレオは、土星の両脇に二つの星があって、星が三つ並んでいると思ったんだね。

 

 

ゴルゴダの丘みたい…

 

 

 

それが「環」であることを発見したのは、オランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスだ。

 

クリスティアーン・ホイヘンス(1629−1695)

 

そしてホイヘンスは、土星の衛星タイタンも発見した。

 

だからタイタンに着陸した探査機は「ホイヘンス」という名前が付けられていたんだよ。

 

 

じゃあなんで「ガリレオはきっと笑うかな」なの?

 

 

環であることに気付けへんかったガリレオへの嫌味か?

 

 

違うわ…

 

この「ガリレオ」とは「イエス」という意味…

 

 

ハァ!?

 

 

ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)という名前は「ガリラヤ地方のガリラヤ人(びと)」という意味になるんだよね。

 

これは「イエス」のことを指すんだ。

 

イエスはガリラヤ地方ナザレ在住だったから、聖書でも「ナザレ人(びと)」とか「ガリラヤ人(びと)」と呼ばれるんだよ。

 

つまり…

 

「土星に環がある理由を考えたらガリレオが笑う」とは…

 

 

キリストに環がある理由を考えたら…

 

イエスが笑う…

 

 

 

そして歌のクライマックスよ…

 

最愛の人を絶対に手に入れることの出来ない切なさが歌われる…

 

好きで 大好きで もうどうしようもなくて

気が付いたら あなたの

周りを ぐるぐる回ってる

土星は 今日も 遠く空にいて

見渡しても 見上げても

私には 見つからない

 

 

・・・・・

 

 

そして最後に…

 

溢れんばかりの情熱がもう一度繰り返されるの…

 

好きで 大好きで もうどうしようもなくて

気が付いたら あなたの

周りを回ってた 想い

 

 

なんかすっごく思い入れのある感じだよね、花笠君…

 

 

 

 

 

 

 

「ぽえ〜ん」は要らん言うとるやろ!

 

 

だから言ってないってば。

 

 

(ぽえ〜ん?)

 

 

せやけど「カッシーニ」は誰やねん?

 

なんで土星探査船に名前が付いたんや?

 

 

(どこかで聞いたことあったような…)

 

 

おっさん!聞いとんのか!?

 

カッシーニって誰や?

 

 

あ、ああ…

 

「カッシーニ」とは、イタリア出身でパリ天文台の初代台長に就任したジョバンニ・カッシーニのことだよ。

 

ジョバンニ・カッシーニ(1625−1712)

 

カッシーニは、土星の環が「レコード盤」みたいに幾重にも重なった筋で出来ていることを発見した。

 

「土星の周りに何かあること」を発見したガリレオの名前は木星探査機に使われたし、それが「環」であることを発見したホイヘンスは土星最大の衛星タイタンの発見者でもあるからタイタン探査機の名前に使われた。

 

だから「環の構造」を解明したカッシーニの名前が土星探査機に付けられたんだよ。

 

 

なるほどな。

 

せやけどガリレオやホイヘンスに比べたらイマイチ弱い感じがするな。

 

 

でも「カッシーニ」は「土星関連」以外でも、映画『ガタカ』で重要な役割を果たしているんだ。

 

 

土星関連以外でも?

 

 

「宇宙開発局GATTACA」も、ジェローム・ユージン・モローが持っていた「メダル」も…

 

実は「カッシーニ」が元ネタなんだよね…

 

 

 

ええ!?

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

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全米映画週末興行収入ランキング(3/15〜17編)2019

  • 2019.03.19 Tuesday
  • 10:31

 

 

 

 

 

 

お待っとさんでした。

 

毎週月曜恒例のBOX OFFICE全米週末映画興行収入ランキングの時間です。

 

3/15〜17のトップ10は、こちら!

 

 

 

1)CAPTAIN MARVEL

 

$69.3M ($266.2M) 2週目(ー)

 

 

2)WONDER PARK

 

$16.0M ($16.0M) 1週目(初)

 

 

3)FIVE FEET APART

 

$13.2M ($13.2M) 1週目(初)

 

 

4)HOW TO TRAIN YOUR DRAGON: The Hidden World

 

$9.3M ($135.6M) 4週目(⇩)

 

 

5)A MADEA FAMILY FUNERAL

 

$8.1M ($59.1M) 3週目(⇩)

 

 

6)NO MANCHES FRIDA 2

 

$3.9M ($3.9M) 1週目(初)

 

 

7)CAPTIVE STATE

 

$3,2M ($3,2M) 1週目(初)

 

 

8)THE LEGO MOVIE 2:The Second Part

 

$2.1M ($101.3M) 6週目(⇩)

 

 

9)ALITA:BATTLE ANGEL

 

$1.9M ($81.8M) 5週目(⇩)

 

 

10)GREEN BOOK

 

$1.3M ($82.6M) 18週目(⇩)

 

 

 

1位は二週連続で『キャプテン・マーベル』だい!

 

 

 

さすがやな。

 

 

すごいね。

 

 

2位は『ワンダー・パーク』だぞ!

 

 

 

なんで予告編に声の出演とか監督の名前が出て来んのや?

 

 

この映画、監督が「ノン・クレジット」なんだよ。

 

監督がいない映画なんだよね。

 

だからそれに合わせて声優紹介も予告編に入れなかったんじゃないかな?

 

 

ど、どゆこと!?

 

 

僕も詳しいことはわからない。

 

ただ、ある映画ニュースサイトには「複数の人からの訴えがあり」と書かれている。

 

まだ係争中で詳細は発表できないんだろう。

 

パラマウント映画も慌てて代わりの監督を用意したみたいなんだけど、映画がすでに撮り終えてしまっていたから、規約上、別の人物をクレジットすることは出来なかったらしい。

 

だから「監督なし」になってしまったんだ。

 

 

そうゆうオトナの事情か…

 

 

日本でもアメリカでも「問題を起こした人の作品問題」は難しいよね。

 

過去の問題発言で一度は降板報道のあった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の監督さんは、3も撮れることに決まったらしいけど。

 

 

大きな予算が動く作品はいろいろ大変だなあ。

 

 

さて、3位は『ファイブ・フィート・アパート』だ。

 

 

150センチのアパート?

 

狭すぎるやろ。

 

 

『5フィート離れて』という意味だよ。

 

嚢胞性繊維症(CF症)という難病を患っているが故に「6フィート(約180cm)」離れていなければならないカップルの、悲しくも美しい青春映画だ。

 

ヤングアダルト、日本でいうとラノベの典型作みたいな物語だね。

 

 

 

M・ナイト・シャマランの『スプリット』に出てたヘイリー・ルー・リチャードソンと、イケメン双子ユニット「スプラウス兄弟」のコール・スプラウスだね。

 

これはアメリカのティーンエイジャーには堪らないカップル。

 

 

6フィート離れんとアカン病気やろ?

 

せやのに映画タイトルは「5フィート離れて」やんけ。どないなっとんねん。

 

 

予告編を見る限りだけど・・・

 

本来は「6フィート」離れていなければならない二人が勇気を出して「1フィート」距離を縮める…という内容っぽい。

 

ビリヤードのキューで距離を測るシーンが出て来るけど、キューの長さは「5フィート」だからね。

 

 

「6フィート」も「5フィート」も大して変わらないような気がするけど。

 

 

僕たち日本人にとってはそうだけど、アメリカ人にとってはそうでもないんだな。

 

「6フィートの距離」って「死体を埋葬する深さ」でもあるんだよ。

 

だから詩などの芸術表現でも「6フィート」は「死・孤独」を暗示する数字として使われる。

 

 

せやせや。

 

映画『スリー・ビルボード』でも主人公ミルドレッドがTVインタビューの時にこう言っとった。

 

「娘が6フィート埋められている間も警官たちは…」

 

 

ケイティ・ペリーの名曲『FIRE WORK』でも「孤独」を表す「6フィート」が使われてるね。

 

 

 

まさにその通りだね。

 

さて4位は『ヒックとドラゴン3』で、5位はタイラー・ペリーの『マデア家のお葬式』だ。

 

 

どっちもアメリカでは大人気やけど日本では劇場公開されへんシリーズの最新作。以上。

 

 

6位はメキシコ映画『ノー・マンチェス・フリーダ2』だぞ!

 

 

 

「フリーダ」は名前ってわかるけど「ノー・マンチェス」は何や?

 

 

スペイン語で「No manches」は「マジかよ」とか「ふざけんなよ」という意味だ。

 

だから日本で劇場公開にあたって邦題にするとしたら『マジかよフリーダ2』だね。

 

 

されへんやろ。

 

せやけど「2」ってことは「1」がメキシコやアメリカでもヒットしたっちゅうことやな。

 

 

そうだよ。「1」はヒットした。

 

というか元々は世界的に大ヒットしたドイツ映画のスペイン語リメイクなんだ。『FACK JU GÖHTE』という映画のね。

 

英語に訳すと「FUCK YOU GOHTE」という意味。

 

 

 

いい意味でバカバカし過ぎる…

 

芸術の中の表現にもいちいちうるさくなって来た日本に情報が入って来ないのも頷けるね…

 

 

まったく世知辛い世の中や。

 

 

ドイツでは人気シリーズとして「3」まで作られた。

 

それとは別に北中米でもシリーズ化されたというわけだね。

 

メキシコ映画『NO MANCHES FRIDA 1』はドイツ映画『FACK JU GÖHTE1』のリメイクだけど、それぞれの「2」は全く関係ない。

 

覚えておいても何の役にも立たない知識だけど、メキシコ人やドイツ人の友達が出来たら披露してみるといい。

 

 

7位も初登場の映画だね!

 

ジョン・グッドマン主演の『キャプティヴ・ステート』だい!

 

 

 

ジョン・グッドマン主演のSF映画って地味過ぎやろ。

 

製作陣はチェレンジャーやな。

 

 

『猿の惑星 創世記』のルパート・ワイアットが監督だからね。

 

一般ウケはしないだろうけど、かなり通好みの仕上がりとなっている。

 

 

そういえば、あの黒人青年は『ムーンライト』で主人公シャロンのティーンエイジャー時代を演じていたアシュトン・サンダースでしょ?

 

 

 

だね。

 

ジョン・グッドマン、ヴェラ・ファーミガ、アシュトン・サンダースという、かなり玄人好みのキャスティングなんだ。

 

監督の自信というかプライドを感じさせるよね。

 

 

というわけで、今回はここまで。

 

また来週。ごきげんよう。さようなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『WONDER PARK』

監督:UNCREDITED(ディラン・ブラウン)

脚本・製作:ジョシュ・アッペルバウム(『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』)、アンドレ・ネメク(『MI ゴースト・プロトコル』)

出演:ブリアンナ・デンスキ、ケン・ハドソン・キャンベル、ジェニファー・ガーナー(『エイリアス』『デアデビル』)、マシュー・ブロデリック(『フェリスはある朝突然に』)、ケナン・トンプソン(『スマーフ』『グリンチ』)、ケン・チョン(『ハングオーバー』『怪盗グルー』)、ミラ・クニス(『ブラック・スワン』『バッド・ママ』)、ジョン・オリバー(『愛の伝道師ラブ・ブル』『スマーフ』)ほか

 

 

JUGEMテーマ:映画

第5話「IRENE CASSINI(アイリーン・カッシーニ)という名前に秘められた物語:前篇」 〜『GATTACA(ガタカ)』徹底考察〜

  • 2019.03.12 Tuesday
  • 22:27

 

 

 

 

 

 

 

 

では次に「IRENE CASSINI(アイリーン・カッシーニ)」の名前について深読みしてみよう…

 

 

 

「JEROME EUGENE MORROW(ジェローム・ユージーン・モロー)」についてはコチラ

 

 

そして「VINCENT ANTON FREEMAN(ヴィンセント・アントン・フリーマン)」についてはコチラを参照してください。

 

 

 

そういえば花笠君って、アイリーン役のUma Thurman(ユマ・サーマン)に似てるよね。

 

よく言われるでしょ?

 

 

ええ…たまに…

 

 

シレーっと肯定すな。少しは謙遜せえ。

 

 

花笠君は学生時代、本当に「UMA(ユーマ:未確認生物)」と呼ばれていたからね。

 

あの不可思議な能力《深詠み》で難事件を次々と解き明かすもんだから、深読み探偵学校の生徒たちは皆、花笠君を畏れていた。

 

いや、生徒だけでなく、講師たちも花笠君には脱帽してたな…

 

当時は「神様仏様UMA様」なんて言われていたっけ…

 

 

UMA様〜ん(笑)

 

 

もう、教官…やめてください…

 

 

今日の「恩師を囲む会」には、君の知る人も何人か来る。

 

あの頃の深読み探偵学校の講師たちは、ほとんどが僕と同じように恩師の門下生だったからね。

 

せっかくだから君も少し顔を出したらいいよ。

 

恩師も、君みたいな優秀で美しい孫弟子がいると知ったら喜ぶだろうし…

 

 

で、でも…

 

 

そんなことよりも「アイリーン・カッシーニ」の名前解読を始めようよ!

 

 

そうだったね。

 

まずはファーストネームの「IRENE」から深読みしていこう。

 

 

「アイリーン」っちゅうたら『GOODNIGHT IRENE』やろ。

 

 

 

ベタ過ぎ…

 

 

「IRENE」とはギリシャ神話の女神「エイレーネー」が由来の名前だ。

 

「平和」という意味で、ローマ神話では「PAX(パックス)」となった。

 

 

平和?

 

せやったら『GOODNIGHT IRENE』は『おやすみ、平和』になるんか?

 

この歌はアイリーンと別れてもうた男の歌やで。しかも結婚した翌週にな。

 

 

結婚した翌週!?

 

 

「まだ時期尚早」という親御さんの反対を押し切って結婚したっちゅうのに、男は夜遊びをやめへんかったんや…

 

そんな夫の姿を見て、新妻アイリーンは出て行ってもうた。

 

落ち込んだ男は、現実世界ではもう会えへんから「おやすみアイリーン。お前と夢で逢えたらええな」って歌うんや。

 

 

あれだけ結婚を切望してたのに、変われなかった男…

 

そんな男に愛想をつかして出て行った「平和」…

 

そして男は「平和」の夢を見る…

 

なんか、めっちゃ意味深…

 

 

だから1950年代のフォークブームの時にリバイバルで大ヒットしたんだよ。

 

50年代には朝鮮戦争があって、東西冷戦が激化した時代だったからね。

 

人々は、第二次世界大戦の終結でようやく待ち焦がれた「平和」が訪れたと思っていたのに、すぐに「平和」が去ってしまってショックを受けていた。

 

そんな世情に歌詞がドンピシャだったんだ。

 

 

男も…国家も…本当に身勝手…

 

悲しい思いをしている人のことなんて、これっぽっちも考えない…

 

 

今日はやけに棘があるな…

 

なんかあったんか?

 

 

そして「IRENE」といえば、歴史上にもうひとり有名な人物がいる。

 

ローマ帝国史上初の「女帝」となった「東ローマ皇帝エイレーネー ”アテナイア”」(アテネのアイリーン)だ。

 

Irene of Athens(752〜803)

 

 

女帝アイリーン?

 

知らないなあ…

 

 

皇帝に就いていた期間が5年間という短いものだったからね…

 

しかも、ただでさえ女帝なんて前例が無かったのに、皇帝となった経緯が「超ワケアリ」で、西ローマ帝国政府やローマ教皇は彼女の皇位を認めなかったんだ。

 

 

訳あり?

 

 

エイレーネーの夫である皇帝レオ―ン4世は病弱に生まれ、30歳という若さで亡くなった。

 

そして二人のひとり息子がコンスタンティノス6世として即位する。

 

だけどコンスタンティノスは当時まだ9歳だったため、母であるエイレーネーが摂政になり実務を取り仕切ることになったんだ。

 

コンスタンティノスは十代も半ばになると、当たり前の事なんだけど、何かと母に反抗するようになっていった。

 

それに激怒したエイレーネーは、コンスタンティノスを捕らえ、眼球をくり抜いて追放する…

 

そして自ら皇帝となったんだ。

 

 

実の母親によるクーデター!?

 

しかも息子の眼球をくり抜くなんて…

 

 

女は怖いわね…

 

あなたたちも気を付けなさい…

 

 

そして西ローマ帝国政府とローマ教皇は、このクーデターによる女帝誕生に抗議する形で、長らく廃されていた西ローマ皇帝を復活させる。

 

それがシャルルマーニュの戴冠、つまりカール大帝なんだよ。

 

焦ったエイレーネーはカール大帝に結婚を申し込んだりしたんだけど断られてしまい、最後は部下のクーデターによって退位させられ、島流しにされる。

 

 

そんな女帝がいたのか…

 

だけどそれと『ガタカ』に何の関係が…?

 

 

アイリーン・カッシーニのキャラクターに「アテネのアイリーン」こと女帝エイレーネーが投影されているんだ。

 

いや…キャラクターだけじゃない…

 

『ガタカ』という映画の舞台背景にも、女帝エイレーネーの物語が投影されているんだよ。

 

 

舞台背景っちゅうたら…

 

人間が露骨に「適正者」と「不適正者」に分けられとる「ディストピア社会」のことか?

 

 

その通り。

 

あれは女帝エイレーネーが生きていた8世紀後半の東ローマ帝国が元ネタなんだ。

 

 

東ローマ帝国はディストピアだったのか!?

 

 

多くの人にとってはね…

 

それはエイレーネーの夫レオ―ン4世の祖父レオ―ン3世の時代から始まった。

 

レオ―ン3世の家柄はシリア朝とも呼ばれる通り、帝国東方のシリア地方に基盤をもつ王朝だった。

 

つまり、周囲には偶像崇拝を嫌う厳格な一神教であるユダヤ教徒やイスラム教徒の多い地域だ。

 

そんなこともあってか、レオ―ン3世は8世紀当時のキリスト教を「劣化したもの」と捉えていた。

 

ギリシャやローマの多神教文化と混じり合って聖人が大量生産され、教会の内装はどんどんケバケバしくなり、聖書に根拠を見いだせない儀式ばかりが行われ、初期の教えとはかけ離れたものになっていたからね。

 

レオ―ン3世は強い使命感をもって、社会の「純化」を始める。

 

十戒やイエスの教えに立ち返り「偶像崇拝」を厳しく罰し、社会の隅々まで蔓延していたイコン(聖像)を排除するという「イコノクラスム(聖像破壊運動)」を始めたんだ。

 

 

聖像破壊?

 

 

神の姿を絵や彫像などの形に表すことを禁じたんだ。

 

たとえば十字架に付いていたイエス像を撤去させたりとかね…

 

 

せやったらヴィンセント出産シーンでオカンが握っとったロザリオもアウトやな。

 

イエスがついた十字架やったで。

 

 

 

そうだね。エイレーネーが生きていた8世紀の東ローマ帝国ならアウトだ。

 

フリーマン夫妻の名前は「ANTONIO」と「MARIE」だったよね。この名前はどちらもラテン系(西ローマ帝国圏内)の名前なんだよ。

 

つまりヴィンセントの家系はカトリックだったというわけだ。

 

だから母MARIEはカトリックのシンボルであるロザリオを握りしめて出産に臨んだんだね。

 

 

 

そうゆうことだったのか…

 

 

さて、レオ―ン3世の時代、東ローマ帝国内の教会や修道院をはじめ、あらゆる場所からイコンが撤去された。

 

イコンを所有する者は「劣った人間」とされ、人々はイコンを廃棄するか、あるいは誰にも見つからぬよう隠し持たなければならなかったんだ。

 

当然この政策は、西ローマ帝国とローマ教皇庁だけでなく、ギリシャやバルカン半島など東ローマ帝国西方の聖職者や貴族、そして一般庶民からも猛反発を受けた。

 

だけどレオ―ン3世の跡を継いだ息子のコンスタンティノス5世は、さらに厳しくイコン破壊運動を推し進めて、社会の純化を図ったんだ。

 

 

確かに『ガタカ』の世界観と似てるかも…

 

イコンを必要としない「純化された人間」が、非論理的なことをしない「適正者」で…

 

イコンを必要とする「劣った人間」が、”神の子”と揶揄される「不適正者」だね…

 

 

ホンマやな。

 

 

そしてコンスタンティノス5世に息子が生まれる。

 

だけどその息子は生まれながらに病弱で、あまり長生き出来そうになかった。

 

不憫に思ったコンスタンティノス5世は、アテネで見つけた身寄りのない美しい娘を息子の妻にあてがった。

 

せめて生きている間は幸せに暮らしてほしいとね…

 

しかしコンスタンティノス5世は戦争で急死してしまう。

 

そして急遽、病弱の息子が皇位を継ぐことになり、アテネから来た美しい娘が皇后となった。

 

それがレオ―ン4世とエイレーネーだ。

 

 

余命わずかな皇帝と、なんの政治的後ろ盾もない、若くて美しい皇后…

 

悲劇の予感しかしないわ…

 

 

エイレーネーは多神教文化のメッカであるギリシャのアテネから嫁いだんでしょ?

 

聖像破壊運動的に大丈夫だったのかなあ…

 

 

エイレーネーをアテネからコンスタンティノープルの王宮に連れて来たコンスタンティノス5世は、息子との結婚にあたり、彼女に誓約書を書かせていたんだ。

 

「自分はイコンの所有も崇拝も一切しない純化された人間です」とね。

 

だけど、本当はそうじゃなかった…

 

結婚後もずっとエイレーネーは「隠れイコン擁護者」だったんだ…

 

 

それって『ガタカ』のアイリーン…

 

 

その通り。

 

選ばれし「適正者」しか入ることが許されない宇宙開発局GATTACA(ガタカ)において、アイリーン・カッシーニは異色の存在だった。

 

彼女は遺伝子操作で生まれた「適正者」なんだけど、主人公ヴィンセント同様に心臓に「欠陥」があって、宇宙飛行士となるには「不適正」な人間だったんだ。

 

だから彼女は「小さな錠剤ケース」を密かに携帯していた。

 

ヴィンセントとのデートの際、お酒を飲む前に白い錠剤を服用していたよね?

 

あれは心不全のリスクを抑えるための薬なんだ…

 

 

 

避妊用のピルかと思っとったわ…

 

 

そんなもの、デート中に男性の目の前で、これ見よがしに飲むわけないじゃない…

 

それにあのタイミングで飲んだところで効果はないわ…

 

 

その通りだよね。

 

その証拠にアイリーンは錠剤を飲んだ後、ヴィンセントとこんな会話を交わす。

 

 

ア「(ガタカに入れた)私の人生はラッキーだけど、アンラッキーなこと(心不全のリスク)もあるの」

 

ヴィ「わかるよ」

 

ア「嘘よ。あなたは健康なくせに…」

 

 

 

ところで、なんでわざわざヴィンセントの目の前で心不全の薬を飲んだんだろう?

 

化粧室にでも行って飲めばいいのに…

 

 

自分の秘密というか弱さをさらけ出して、カマをかけるためだよ。

 

ずっとアイリーンは、ヴィンセントが「何かを隠している」と疑っていた。

 

自分と同じように「正真正銘の適正者ではない」ということに薄々気付いていたんだ。

 

GATTACAの中でヴィンセントだけが「信仰」などという「適正者らしからぬ言葉」を口にし、病的なまでに「潔癖症」で、他の人たちとは明らかに違う行動をとっていたからね…

 

だからデートに誘い、まず自分がさらけ出すことによって、ヴィンセントにも告白を迫ったんだよ…

 

 

なるほど!そうゆうことか!

 

 

そして二人は、海を見下ろす部屋で結ばれる…

 

その交わりは荒波のように激しく熱いもので、男は身も心も女に許したかと思われた…

 

だけど…

 

やっぱり男は本心をさらけ出せず、本当の自分を隠し続けてしまったの…

 

あの熱海の夜のように…

 

 

へ?何の夜だって?

 

 

な、なんでもないわ…

 

 

まだ夜が明けきらぬうちに目覚めたヴィンセントは、枕元に落ちていた自分の毛髪に気付き、恐怖に陥る。

 

 

他にもベッドの中に「自分の痕跡」がないか捜し、起き上がると海岸へ向かった。

 

そして波打ち際にあった海藻を丸めて全身をこすり始めるんだ…

 

まるで穢れてしまった自分の身体を清めるかのように…

 

 

 

そういえばあの時のアイリーンは切なそうな顔をしてたよね…

 

すっごく悲しそうだった…

 

 

 

あれは「切ない」とか「悲しい」とかいう感情を超えてしまった表情よ…

 

一夜を共にした男が、自分と愛し合った痕跡を徹底的に消そうとしてるんだから…

 

 

花笠君、キミは…

 

 

おい、おっさん!なにボケーっとしとんねん!

 

これも女帝エイレーネーが元ネタなんか?

 

 

あ、ああ…その通り…

 

これもレオ―ン4世とエイレーネーの逸話が元になってるんだよ…

 

アテネから来たエイレーネーは、結婚時に「イコン(聖像)廃棄」の誓約書にサインしたんだけど、ずっと「隠れイコン崇拝者」だった。

 

ある夜、レオ―ン4世は妻エイレーネーの寝所を訪れ、夫婦の営みを交わした。

 

そして翌朝、枕元にイコンを発見する。

 

愕然としたレオ―ン4世は「なぜここにイコンがあるのか?」とエイレーネーに問いただした。

 

するとエイレーネーは「これは自分のものではない」と、しらを切った。

 

そもそもレオ―ン4世は、イコン所有者を厳しく弾圧してきた祖父や父と違って、穏健派の聖像破壊主義者だった。

 

自身が生まれつき病弱なこともあって、イコンにすがる人たちを厳しく罰せられなかったんだよね。

 

だからレオ―ン4世の時代は、よほど目立たない限りイコン所有が大目に見られていた。

 

だけど自分の妻の裏切りは許せなかったんだ。

 

その夜以来、レオ―ン4世は妻エイレーネーを汚れたモノのように扱い、夫婦の営みを行うことはなかったそうだ…

 

 

なるほど…

 

レオ―ン4世の「枕元のイコン発見」が、ヴィンセントの「枕元の毛髪発見」になったのか…

 

 

枕元での「神の発見」と「髪の発見」…

 

 

そんでレオ―ン4世もヴィンセントも「極度の潔癖症」で、ベッドを共にした女アイリーンを悲しませた…

 

 

そういうことだ。

 

ちなみに、その後レオ―ン4世は30歳という若さで亡くなった。

 

そして9歳の一人息子コンスタンティノス6世が皇位につき、母であるエイレーネーは幼い息子の代わりに摂政として実務を取り仕切ったことは話したね。

 

まずエイレーネーは、国内の安定化を図るためイコノクラスム(聖像破壊運動)を止めさせる。

 

そして聖像破壊運動に反発していた西ローマ帝国との関係修復のために「第2ニカイア公会議」を主宰し、「聖像破壊主義は異端」ということが宣言された。

 

「聖像自体を神聖視しているのではなく、聖像によって満たされる心の在り方を神聖視する」という理論に落ち着いたんだ。

 

 

そういや宗教改革者ジャン・カルヴァンは『キリスト教網要』で、エイレーネーの「第2ニカイア公会議」をめっちゃディスっとったな。

 

 

懐かしい。カルビンの『キリスト教網要』といえば、映画『LIFE(ライフ)』だ。

 

『LIFE(ライフ)』徹底考察

 

 

ちなみにこのエイレーネーが開いた公会議が、正教会とカトリックの東西両教会が公認した最後の公会議となってしまったんだ。

 

エイレーネーの死後、9世紀以降は教会が東西に完全分裂してしまったからね…

 

さて、「アイリーン」の話はこれくらいにして、次は苗字の「カッシーニ」を深読みしよう…

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

全米映画週末興行収入ランキング(3/8〜10編)2019

  • 2019.03.11 Monday
  • 13:09

 

 

 

 

 

 

 

お待っとさんでした。

 

毎週月曜恒例のBOX OFFICE全米週末映画興行収入ランキングの時間です。

 

3/8〜10のトップ10は、こちら!

 

 

 

1)CAPTAIN MARVEL

 

$153.0M ($153.0M) 1週目(初)

 

 

2)HOW TO TRAIN YOUR DRAGON: The Hidden World

 

$14.7M ($119.7M) 3週目(⇩)

 

 

3)A MADEA FAMILY FUNERAL

 

$12.1M ($45.9M) 2週目(⇩)

 

 

4)THE LEGO MOVIE 2:The Second Part

 

$3.8M ($97.8M) 5週目(ー)

 

 

5)ALITA:BATTLE ANGEL

 

$3.2M ($78.3M) 4週目(⇩)

 

 

6)GREEN BOOK

 

$2.5M ($80.1M) 17週目(⇩)

 

 

7)ISN'T IT ROMANTIC

 

$2.4M ($44.2M) 4週目(ー)

 

 

8)FIGHTING WITH MY FAMILY

 

$2.2M ($18.7M) 4週目(⇩)

 

 

9)GRETA

 

$2.2M ($8.3M) 2週目(⇩)

 

 

10)APOLLO 11

 

$1.3M ($3.8M) 2週目(初)

 

 

 

 

1位は『キャプテン・マーベル』だい!

 

 

 

最初の週末で1億5300万ドルか。ドカンと来たな。

 

 

すごいね。

 

そして2位は…

 

 

ちょい待てや。「すごいね」だけか?

 

ちゃんと説明せえ、どこがどう凄いのか説明を。

 

 

ここで紹介しなくても、ネット上では山ほど紹介されている。

 

それに僕、マーベル映画ってよく知らないんだ。

 

一本も観たことないから。

 

 

ハァ!?

 

 

ヒーロー映画って苦手でね。

 

だけどDCコミックの映画は一本だけ観たことあるよ。

 

ジャック・ニコルソンがジョーカーで、プリンスの主題歌がヒットした『バットマン』。

 

 

それ30年前の映画やで…

 

お前に聞いたのが間違いやった…

 

 

に、2位は『ヒックとドラゴン3』だよ!

 

 

 

 

3位はタイラー・ペリーの『マデア家のお葬式』だね。

 

 

 

4位は『レゴ®ムービー2』で5位は『アリータ:バトル・エンジェル』だい!

 

 

 

アリータ…

 

もう北米ではヒット作の目安「1億ドル」達成不可能やな…

 

 

その代わり中国では「アリータ、大アターリ」だよ。

 

たった2週間で1億1300万ドルを稼ぎだしている。これで赤字は回避できた。

 

 

あーよかった!

 

日本でもイマイチな滑り出しだったから、一時はどうなることかと思ったよね。

 

 

まさか埼玉に負けるとは誰も想像してへんかったさかいな。

 

 

6位以下も全部紹介済みの作品だな…

 

 

10位にドキュメンタリー映画『アポロ11号』が入ってるよ!

 

 

 

なんで今頃?

 

 

アポロ11号の打ち上げミッションは、当初MGMによって「映画化」される予定だったけど、MGMが途中で映画化を断念してしまったんだ。

 

テレビで大々的に放送されちゃったし、打ち上げの瞬間と月面着陸以外は映画にするには「地味すぎる」からね。

 

NASAによって撮影された1万時間以上に及ぶ膨大なフィルムのほとんどは「お蔵入り」になっていたんだけど、1969年の打ち上げから50周年にあたる2019年に向けて、ついに映画化されることになった。

 

それがこの『アポロ11号』というわけ

 

 

なるほどな。

 

1972年生まれのワイはリアルタイムでは見てへんけど、ガキの時分、アポロチョコは仰山食べたわ。

 

 

僕もアポロチョコが大好きだった。

 

チョコといえばアポロチョコかガラナチョコだったよね。

 

 

ガーナチョコや。

 

ガラナは子供が食ったらアカンやつやろ。

 

 

何の話してんだよ。

 

 

とにかく、僕らは「アポロ世代」ってこと。

 

 

そんならオイラは「カッシーニ世代」だな。

 

 

カッシーニ…

 

 

ああ、いけない!こんな無駄話をしてる場合じゃなかったんだ!

 

映画『GATTACA(ガタカ)』徹底考察:第5話「アイリーン・カッシーニという名前に秘められた物語」を書かなければ!

 

(タップで『ガタカ』目次ページに飛びます)

 

それでは皆さん、ごきげんよう!

 

さようなら!

 

 

ごめんね、強引で…

 

 

 

 

 

 

『APOLLO 11』

 

監督:トッド・ダグラス・ミラー

音楽:マット・モートン

配給:NEON

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

第4話「VINCENT ANTON FREEMANという名前を深読みすると、どんな物語が見えてくる?」 〜『GATTACA(ガタカ)』徹底考察〜

  • 2019.03.10 Sunday
  • 16:55

 

 

 

 

 

 

壮大かつロマンチックな物語よね…

 

 

何を言ってるのかわからない人は前回を未読の人だな。

 

まずコチラからどうぞ。

 

 

 

次は「適正者:ジェローム・ユージーン・モロー」に成り済ます「不適正者:ヴィンセント・アントン・フリーマン(演イーサン・ホーク)」と、その弟である「適正者:アントン・フリーマン(演ローレン・ディーン)」の名前の秘密に迫ろう。

 

 

 

 

兄やんのファーストネーム「VINCENT」の由来は、ラテン語の「克服・勝利」やったな。

 

生後すぐの検査で心臓に異常が見つかり「寿命は長くて30年」と言われたもんやさかい、オトンは「VINCENT」と名付けたんや。長生きして欲しくてな。

 

宇宙飛行士を目指すには致命的なハンディキャップやけど、ヴィンセントは名前の通り、執念で運命を克服したんやで。

 

 

弟アントンとの遠泳チキンレースにも勝利したわね。

 

 

「VINCENT」は、もうこれでOK?

 

 

いいや。まだ重要な意味が込められている。

 

西洋社会において「VINCENT」といえば「サラゴサの聖ヴィセンテ」のことを指すんだ。

 

 

聖ヴィセンテ…?

 

 

世界一セクシーなギタリスト「St. Vincent(セイント・ヴィンセント)」の名前の由来となった聖人ね。

 

 

 

間奏のギターソロが凄まじ過ぎ…

 

 

「サラゴサの聖ヴィセンテ」は、3世紀後半にイベリア半島で活躍した人物だ。

 

当時まだローマ帝国ではキリスト教が認められていなかったので、聖ヴィセンテは、ありとあらゆる残酷な拷問を受けた。

 

それでも最後まで屈せず殉教したので聖者と崇められ、今でもスペインやポルトガルを中心に人々の信仰を集めている。

 

港町バレンシアとリスボンの守護聖人でもあるんだよ。

 

『サラゴサの聖ヴィセンテ』作者不明

 

 

縄で首に繋がってる巨大な石の円盤は何だ?

 

 

詳しくはわからないけど、聖ヴィセンテは「リング状の石の円盤」とセットで描かれる。

 

あれを錘にして海にも沈められたんだよね。よく見ると窓の外には、その光景が描かれてるでしょ?

 

 

「VINCENT」と「大きな石のリング」って…

 

なんだか『ガタカ』っぽい…

 

 

「ぽい」じゃなくて「そのもの」なんだよ。

 

 

 

うわあ…

 

こっちの絵のリングは、さらに「土星の環」そのもの…

 

 

それだけじゃない…

 

最初の遠泳チキンレースで弟アントンに負けた時にも「聖ヴィセンテ」のモチーフが再現されていたわね。

 

 

 

どこに!?

 

 

力尽きたヴィンセントは、浮かんでいた海藻を枕にして、水面に横たわっていた…

 

あれは「海に浮かぶ聖ヴィセンテ」の宗教画そのものよ…

 

 

 

マジかよ…

 

頭の後ろの「浮き輪」みたいに見える聖ヴィセンテの「光背」を、「海藻の枕」で表現していたのか…

 

 

なかなかトンチが効いてるよね、アンドリュー・ニコル監督は。

 

ファーストネーム「VINCENT」については、これくらいでいいだろう。

 

 

次はミドルネーム「ANTON」やな。

 

 

お兄ちゃんはミドルネームが「ANTON」で、弟はファーストネームが「ANTON」…

 

なんで兄弟して「アントン」がつくんだろう?

 

お父さんとお母さんがアントン・チェーホフのファンだったとか?

 

 

 

なんでやねん。

 

オトンの名前や。オトンは「アントニオ・フリーマン」やさかい。

 

ちなみにオカンは「MARIE(マリー)」やで。

 

 

 

「ANTON」は「ANTONIO」のことだったのか。

 

 

ラテン語で「燃える闘魂」っちゅう意味や。

 

 

ああ、それ聞いたことある!

 

 

嘘を教えちゃいけないよ。

 

「ANTONIO」とは「ヘラクレスの末裔」という意味だからね。

 

 

ヘラクレス?

 

 

 

「アントニオ」という名前の起源は「英雄ヘラクレスの息子アントン」なのよ。

 

ゼウスを父にもつヘラクレスは、数あるギリシャの神々の中で、最も強く、最も人気のあった半神半人の英雄…

 

「アントニオ」という名前は、その血を引く者という意味なのよね。

 

ちなみに歴史上で最も有名な「アントニオ」は誰だか知ってる?

 

 

猪木に決まっとるやろ。

 

 

 

日本ではそうかもしれないけど…

 

ワールドレベルで「アントニオ」といえば「マルクス・アントニウス」の名が真っ先に挙げられる。

 

マルクス・アントニウス(BC83〜BC30)

 

独裁官ジュリアス・シーザー(カエサル)の死後、後に初代皇帝アウグストゥスとなるオクタウィアヌスと壮絶な後継者争いをして敗れ去った人物ね。

 

エジプト女王クレオパトラと恋に落ち、自分自身を「偉大なる御先祖様ヘラクレスの生まれ変わり」だと考え、ことあるごとに自分とヘラクレスを重ねていたと言われている…

 

 

シェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』やな。

 

 

 

『アントニーとクレオパトラ』といえば、有名な絵画があるよね。

 

海に浮かぶ寝室で密会するアントニーとクレオパトラの絵だ…

 

『Anthony and Cleopatra』

ローレンス・アルマ=タデマ

 

 

なんか既視感があるんやけど、気のせいやろか?

 

 

気のせいなんかじゃないよ。

 

アンドリュー・ニコル監督は『ガタカ』の中で「この絵」を再現したんだ。

 

主人公ヴィンセント・アントン・フリーマンとアイリーン・カッシーニが結ばれたベッドは、まるで海に浮かんでいるようだったよね…

 

 

 

ああーーーー!

 

 

アタミノヨルモ…ソウダッタ…

 

 

ん?なんか言ったか?

 

 

な、なんでもないわ…

 

 

しかもあのラブシーンのベッドルームは、既存の「海に浮かぶように見える部屋」ではないんだ。

 

わざわざ海沿いの高台の上にセットを用意して撮影したんだよ。

 

『アントニーとクレオパトラ』の絵の構図を完璧に再現するためにね。

 

 

そこまでして、あの絵を…

 

誰も拾ってくれないかもしれないのに…

 

 

だから僕みたいな人間が必要なんだ…

 

映画公開から22年後になって発見してくれるような物好きな人間がね…

 

 

ワイも拾ったるで!

 

熱烈合体の翌朝にヴィンセントが浜辺で全裸でしゃがみ込んどったのは『ターミネーター』のアーノルド・シュワルツェネッガーを再現するためや!

 

 

 

何の意図で?

 

 

そこまでは知らん。

 

 

これは「ヘラクレス」の再現なんだよ…

 

全裸になったヴィンセントは、まるで全身の皮膚を剥がしたいかのように、無我夢中でこすっていた…

 

ヘラクレスも全く同じことをしたんだ…

 

そしてこの「全裸で皮膚こすりまくりシーン」は、映画のラストシーンの伏線にもなっている…

 

 

ええ!?

 

 

映画『ガタカ』には「ヘラクレスの生涯」も投影されている。

 

宇宙を題材にした映画なら、前に紹介した「天空の神ウラヌス」同様に、ヘラクレスは避けては通れないからね。

 

 

なるほど。詳しく教えてくれ…

 

頼まなくてもするんだろうけど…

 

 

まず『ガタカ』に登場する「ヴィンセントとアントンの兄弟」は「ヘラクレスとイピクレスの兄弟」そのものと言える。

 

兄ヘラクレスは「神の子」と呼ばれ、弟イピクレスは「人の子」と呼ばれた。

 

そして、両親のセックスという偶然の行為で誕生した兄ヴィンセントは「神の子」と呼ばれ、遺伝子操作と体外受精によって人工的に作られた弟アントンは「適正な人間」と呼ばれていたよね…

 

 

ヘラクレスとイピクレスは兄弟なのに、なんで「神の子」と「人の子」と違うの?

 

 

「種」が違うからだよ。

 

兄ヘラクレスの父は神ゼウスだ。いっぽう弟イピクレスの父は人間であるアムピトリュオン。

 

神ゼウスは、ミケーネ王の娘アルクメネの寝所へ、その婚約者アムピトリュオンが不在の夜に忍び込み、こっそり種付けをしたんだ。自分の子を将来のミケーネ王にするためにね。

 

同じ母アルクメネから生まれた二人なんだけど、受け継いだ遺伝子が別々のものだったんだよ。

 

 

婚約者がおる処女を神が孕ませるって、聖母マリアの処女懐胎みたいやな…

 

 

ちなみに映画『ガタカ』で出産シーンが描かれるのも、神の子ヘラクレス誕生の有名な絵の再現だろうな…

 

ヘラクレスは難産の末、生まれたんだ…

 

 

 

さて、ゼウスは半神半人で生まれたヘラクレスの神パワーを強化させようと考え、本妻ヘーラーが寝ている隙に「神の母乳」を飲ませた。

 

しかしヘラクレスが乳首に吸い付く力があまりにも強烈だったのでヘーラーは目を覚ましてしまい、乳房からヘラクレスを引き離そうとした。

 

その時の衝撃で乳首から母乳が天空へ飛び散り、それが「天の川(ミルキーウェイ)」となったんだ。

 

「galaxy(銀河)」という言葉の由来も、古ギリシャ語の「kyklos galaktikos(乳の環)」なんだよね。

 

 

赤ちゃんヘラクレスの吸引力のおかげで、たくさんの星が誕生したのか…

 

 

成長したヘラクレスは、数々の試練を乗り越え、英雄の名を欲しいままにした。

 

スポーツの祭典として知られるオリンピック競技会を創設したのもヘラクレスだ。

 

初期の大会はヘラクレスの子孫たちの独断場で、ことごとくメダルを独占した。

 

 

オリンピック競技会とメダルは『ガタカ』でも重要なモチーフだね…

 

 

そしてある日、ヘラクレスは家族で旅をしていた時に、向こう岸が見えないほどの大きな川に辿り着いた。

 

流れも激しいため、妻と子を同時に背負って渡ることはできない。

 

そこにたまたまケンタウロス族のネッソスが通りがかり、ネッソスが妻を、ヘラクレスが我が子を背負って渡ることになった。

 

急流の中、泳ぎが得意なネッソスはぐんぐんとヘラクレスを引き離してゆく。

 

そして、いち早く向こう岸まで着いたネッソスは、なんとヘラクレスの妻を犯し始めた。

 

それを見たヘラクレスは、毒矢でネッソスを撃ち殺してしまう…

 

 

神話の時代はワイルドやな…

 

 

でもこれって『ガタカ』の「二人のアントンによる遠泳レース」の元ネタじゃない?

 

 

そうだよね。

 

さて、毒矢で射抜かれたネッソスは、ヘラクレスの妻にこう言い残して死んだ。

 

「俺の血には媚薬効果があるので、夫の愛が冷めて来たと思ったら、この血を沁み込ませた服を着せるといい」

 

ヘラクレスの妻はネッソスに感謝して、その血を保存しておいた…

 

 

ええ奴やん、ネッソス。

 

 

ちょっと待って…

 

相手は自分を手籠めにしようとして、そこを夫に見つかって殺された男だよね…

 

意味わかんないんですけど…

 

 

男と女のことって、そう単純じゃないのよ…

 

子供にはわからないでしょうね…

 

 

そしてヘラクレス夫妻にネッソスの血を使う時が訪れる。

 

よその女に夢中になっていた夫ヘラクレスに対し、妻はネッソスの血を沁み込ませた衣服を着せた。

 

しかしヘラクレスは、発情して妻に求愛するどころか、全身を掻きむしりながら激しく苦しみ始めたんだ…

 

 

ど、どゆこと!?

 

 

ネッソスはヘラクレスに復讐するため妻を騙したんだ。

 

実は「ネッソスの血」には「猛毒」が入っていたんだよね。ヘラクレスが放った毒矢の猛毒が。

 

ヘラクレスは激しく痛む表皮を剥がそうと全身を掻きむしったけど、時すでに遅し。猛毒は全身の皮膚に回って、もはや我慢できないほどになってしまった。

 

そこでヘラクレスは自分の周りに薪を組み、そこに座って火をつける…

 

苦しさのあまり、全身を焼いてしまったんだ…

 

『ヘラクレスの死』

フランシスコ・デ・スルバラン

 

 

それって…

 

 

映画『ガタカ』のラストシーンね…

 

 

 

うひゃあ!

 

しかもヘラクレスが衣を引き裂こうとしてる手のポーズが一緒だ!

 

伸ばした右手は布を強く握りしめ、左手は布に掛ける感じ…

 

 

それだけじゃない…

 

ジェロームはヘラクレスの「上目遣い」も再現する…

 

 

 

マジかよ…

 

だからメダルの布をチラッと上目づかいで見たんだ…

 

 

アンドリュー・ニコル監督の執念ね…

 

 

ところで、主人公ヴィンセント・アントン・フリーマンのファミリーネーム「FREEMAN」は?

 

 

ヤーマンやろ。

 

 

レゲエの話をしてるんじゃないよ。

 

 

「ヤーマン」っちゅうのは「FREEMAN」のことや。

 

日本語では「独立自営農民」っちゅうノリの悪い訳語が当てられとるけどな。

 

自分で土地を所有し、封建領主の支配から自立しとった農民のことを指す。

 

 

確かにそうなんだけど…

 

僕は「FREEMAN DYSON(フリーマン・ダイソン)」から取られたんじゃないかなと思う…

 

FREEMAN DYSON(1923〜)

 

 

誰?

 

 

理論物理学の分野で20世紀を代表する科学者よ。

 

『地球交響曲(ガイア・シンフォニー)』のコンセプトに大きな影響を与えた人物で、『第三番』に出演もしているわ。

 

 

 

物理学の大科学者で「神の意思」に言及するっちゅうのも珍しいな…

 

 

フリーマン・ダイソンは、科学者の世界では珍しく、とても敬虔なキリスト教徒なんだよ。

 

それというのも、彼の父親はイギリスの超名門校「王立音楽大学」の学長を務めたほどのパイプオルガン奏者で、数多くの宗教音楽を作曲した偉大な芸術家でもあるんだ。

 

そんな環境に生まれ育ったから、聖書や宗教音楽が、数学や物理の数式同様に、彼の血肉になっているんだよね。

 

だから彼の宇宙論では「神の存在」は欠かせない。

 

「主人公が不可能と思われた宇宙への旅を実現させる」という大筋の中に、聖書やギリシャ神話のモチーフが散りばめられた『GATTACA(ガタカ)』という物語には、うってつけの人物だと言えるよね。

 

 

なるほど。

 

 

では次に、ユマ・サーマン演じるヒロイン「アイリーン・カッシーニ」の名前について深読みしてみよう…

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

第3話(改定版)「JEROME EUGENE MORROWという名前の意味とは?」 〜『GATTACA(ガタカ)』徹底考察〜

  • 2019.03.07 Thursday
  • 21:05

 

 

 

 

 

 

そういえば土星へ向かう主人公の名前「Vincent」とは「乗り越える・克服する」という意味よね。

 

生まれ持ってのハンデキャップを「克服する」というプラスイメージだけでなく、サトゥルヌスの「他者と一体化することでの克服」というマイナスイメージも込められていたんだわ…

 

 

実に面白いよね。

 

この映画は、登場人物の名前を見れば、その役割がわかるようになっている。

 

まあ名前というのは神話や聖書の時代から、だいたいそういうもんなんだけど。

 

せっかくだから主要人物の名前について話しておこうか。

 

 

その前に…

 

前回を未読の人はコチラからどうぞ。

 

 

 

まずはジュード・ロウ演じる「適正者:JEROME EUGENE MORROW」から…

 

 

 

めっちゃわかりやすいわ。

 

「JEROME」は初期キリスト教会における二大中心地「JERUSALEM(エルサレム)」と「ROME(ローマ)」のことやろ。

 

 

『スリー・ビルボード』にも「ジェロームさん」は出て来たよね。

 

意見広告のポスター製造&貼り付け担当の人。

 

 

 

「JEROME」は小説や映画でよく使われる名前だ。

 

特に聖書が元ネタになっているような物語では特にね。

 

そして「JEROME」というキャラクターには「聖ジェローム」が投影されることが多い。

 

『荒野の聖ジェローム』ピントゥリッキオ

 

 

誰?

 

しかも何で上半身裸?

 

 

聖ジェロームはこのように「上半身裸」で、しかも「苦悩した顔」で描かれることが多いんだ。

 

聖ジェロームはローマ帝国でキリスト教が認められた四世紀中頃から五世紀初めにかけて活躍した人物で、ヘブライ語・アラム語・ギリシャ語で書かれていた新旧約聖書をラテン語に翻訳し、キリスト教の普遍化に絶大なる貢献をした。

 

グーテンベルクの活版印刷で大量生産されたのも聖ジェロームが書いた標準ラテン語版の聖書だったし、なんと20世紀に入るまで聖ジェローム版聖書がカトリックの「公式聖書」とされていたんだ。

 

人類史上もっとも多くの人に読まれた本の著者ともいえるよね。

 

ちなみにその聖ジェロームのラテン語聖書を「VULGATA(ウルガタ/ヴルガータ)」と呼ぶ…

 

 

ウルガタ?

 

なんか『ガタカ』っぽい。

 

 

「ぽい」じゃなくて、ここから取られたんだと思うよ。

 

『GATTACA(ガタカ)』という名前は、4つの塩基を表すアルファベット「G・A・C・T」の組み合わせだ。

 

だけど別に「GATTACA」じゃなくてもいいはずだ。どうせ造語なんだから、他の組み合わせでもいいよね?

 

 

確かにそうだな…

 

「GACTACT」でもいい…

 

 

「ガクト法」か。

 

 

だけど物語を書いたアンドリュー・ニコルは、あえて「GATTACA」という組み合わせにした。

 

これは聖ジェロームが書いた共通訳聖書『VULGATA(ウルガタ)』の「GATA(ガタ)」を入れたかったからに違いない。

 

 

おめーら、わがったか?

 

 

へ?

 

 

ごめんなさい…つい山形弁が…

 

わたし…尾花沢生まれ尾花沢育ちだから…

 

 

ズコッ!

 

 

ちなみに「GATTACA」の「CA」は「CASSINA(カッシーナ)」の「CA」だろうね。

 

これは別の登場人物の時に詳しく説明しよう…

 

 

ユマ・サーマン演じるアイリーンの苗字やな。

 

せやけど何で聖ジェロームは上半身裸で苦悩しとったんや?

 

 

聖ジェロームはシリアの荒野で隠遁生活を送っていた。

 

精神修行や翻訳作業に集中したいために、誰も訪れない荒野の洞窟の中に引き籠り、ひとり暮らしていたんだよね。

 

孤独・清貧・禁欲が聖ジェロームのモットーだったんだ。

 

 

じゃあ何で「WHY?」みたいな顔して困ってるのさ?

 

自分で選んだ道なんでしょ?

 

 

 

聖ジェロームは「幻覚」に悩まされていたんだよ。

 

若い頃に遊んだ女たちが現れて、官能的な歌や踊りで誘惑してくるという幻覚にね…

 

『歌と踊りで聖ジェロームを誘惑する過去の記憶の女たち』

フランシスコ・デ・スルバラン

 

 

そんな幻覚を見るなんて…

 

 

そうとう溜まってるってことや…

 

無理して禁欲生活なんかするからやで…

 

 

いやだわ…男の人って…

 

 

引き籠り時代の聖ジェロームは、女性を遠ざけていた。

 

この逸話が「ジェローム・ユージーン・モロー」のキャラクターに反映されたんだよ。

 

限りなく「自殺未遂」臭い「交通事故」のあと、引き籠り生活をしていた彼は、女性と一切接触していなかった。

 

口では「コールガールでも呼んで性欲を発散させるよ」と言いながら、そういうシーンもなかったし、女性を呼んだような形跡も全く見られなかったんだ…

 

 

ジェローム・ユージーン・モローが唯一「人肌に触れた」のは、ヴィンセントに抱きかかえられてベッドに運ばれた時やったな…

 

 

そしてヴィンセントを庇うために、刑事の前でユマ・サーマン演じるアイリーンと偽装キスをした時も、その表情は非常に複雑なものだった

 

「自分が愛する人と寝た女とのキス」だからね…

 

 

本当だったら、キスどころか顔すら見たくなかったはずだ…

 

まさに、幻覚の女たちに「あっち行け!消えて失せろ!」とやってる聖ジェロームの気分だったはず…

 

 

 

なるほど…

 

「JEROME」という名前から、ここまで導き出せるのか…

 

 

これが深読み道よ。

 

 

ではミドルネームの「EUGENE」に行こうか。

 

 

ミドルネームは簡単だ。

 

「EUGENE」はギリシャ語で「well-born(生まれが良い・優生)」という意味。

 

 

そうだね。ここは他の意味は特にないだろうな。

 

じゃあ次はファミリーネームの「MORROW」…

 

 

「MORROW」はSF怪奇小説の傑作『ドクター・モローの島』からやろ。

 

優れた遺伝子をもつ「適正者」っちゅうのは、遺伝子操作で生まれた「改造生物」やさかい。

 

 

ちなみに「モロー博士」の綴りは「Dr. Moreau」よね。

 

 

フランス語っぽいな。

 

 

「morrow」は「tomorrow」の昔の形じゃないの?

 

「翌日・翌朝」って意味でしょ?

 

 

「Morrow」というのはスコットランドが起源の苗字で、ゲール語で「海の戦士・海を渡る者」という意味なんだ。

 

ジェローム・ユージーン・モローが「水泳の銀メダリスト」で、彼のDNAがヴィンセントによって宇宙へ運ばれたのは、まさに「Morrow」から来ているんだよ…

 

 

そうだったのか!

 

 

ちなみにビル・マーレイの「Murray」や、エディ・マーフィーの「Murphy」なども、この「Morrow」の変形バージョンよね。

 

 

じゃあクリストファー・ノーランの『インターステラー』に出て来たマーフことマーフィーも?

 

 

 

そうだね。

 

主人公クーパーが娘に「Murphy」と名付けた理由は「マーフィーの法則」からではなく、ゲール語の意味「海を渡る者」からなんだ。

 

かつて宇宙飛行士を目指していたクーパーは、生まれて来た娘に「Murphy」と名付け、大きな夢を託した。

 

そして「Murphy」は人類にとって最大の謎だった「重力の謎」を解き、地球に縛られていた人類を宇宙という大海へ導いた。

 

名前の由来の通り、人類に宇宙という海を渡らせたんだね。

 

 

壮大かつロマンチックな物語よね…

 

 

そういえば『ガタカ』のジェローム・ユージーン・モローも『インターステラー』のマーフも…

 

最愛の人が宇宙へ旅立ち、自分は地上に残されたんだよね…

 

 

偶然か、これ?

 

 

さあ、どうだろう?

 

これで「ジェローム・ユージーン・モロー」の名前解説はおしまい。

 

次は「適正者:ジェローム・ユージーン・モロー」に成り済ます「不適正者:ヴィンセント・アントン・フリーマン」とその弟「アントン・フリーマン」の名前の秘密に迫ろう。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

第2話(改定版)「瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の…」 〜『GATTACA(ガタカ)』徹底考察〜

  • 2019.03.05 Tuesday
  • 23:21

 

 

 

 

 

 

遅くなって、すみません…

 

渋滞に巻き込まれちゃって…

 

 

いいんだよ。うちの事務所は暇だからね。

 

定時に出勤しても、特にやることはないんだし。

 

 

お前が言うな。仕事とって来いや。

 

 

では映画『GATTACA(ガタカ)』の話を続けようか。

 

 

第1話を未読の人はコチラからどうぞ。

 

 

 

 

「むかし映画は観たけど、詳しいこと忘れちゃったな」という人は、Wikipediaページで「あらすじ」や「登場人物」をチェックするといい。

 

さて、冒頭で2つの格言が提示されたあとは、イーサン・ホーク演じる主人公ヴィンセント・アントン・フリーマンが「朝の儀式」を行うシーンが描かれる。

 

両親のセックスによって生まれた「不適正者」であるヴィンセントは、憧れの宇宙開発局GATTACA(ガタカ)で働くために、毎朝、遺伝子操作で生まれた「適正者」であるジェローム・ユージン・モロー(演ジュード・ロウ)に「偽装」しなければならない。

 

爪を切り、抜けそうな毛を落とし、髭を完璧に剃り、皮膚を徹底的にこすって垢を落し、全身から「自分」を消し去するんだ。

 

そしてジェローム・ユージーンのDNAで身をまとうんだね。

 

 

 

あのシーンは興味深かったわ。

 

最初は何が起こってるのかわからないんだけど、美しい映像のおかげで映画に釘付けになってしまうの…

 

 

まず画面には、切られた「爪」のアップが映し出される。

 

スローモーションでゆっくりと落下してくるんだよね。

 

 

 

あんなにアップだと、最初は爪だとは気付かなかったな。

 

落ちた時の音も物々しかったし。

 

 

確かに。

 

そして次は、巨大な「毛髪」が落ちて来る。

 

まるで細い木の枝やケーブルのようだったね…

 

 

最後は「垢」と「剃られたヒゲ」が落ちて来た。

 

こちらは、まるで降り積もる雪のように…

 

 

 

実際の映像を見たほうが早いわ。めっちゃカッコええシーンやで。

 

DNAを構成する4つの塩基であり、映画のタイトル『GATTACA』を構成するアルファベットでもある「GACT」の文字が、クレジットの名前と一緒に象徴的に浮かび上がってくるんや。

 

 

 

超クール!

 

ところで「GACT」って何だっけ?

 

 

Guanine(グアニン)、Adenine(アデニン)、Cytosine(シトシン)、Thymine(チミン)よ。

 

 

このシーンは本当に芸術的だよね。

 

そしてこの導入部だけでも、とんでもない情報量が内包されている。

 

 

とんでもない情報量?

 

どこに?

 

 

「爪・毛髪・垢」は、旧約聖書『伝道の書(コヘレトの言葉)』の最終章である第12章を想起させるためのもの。

 

そしてこの第12章が、映画『GATTACA』のクライマックスシーンの元ネタになっているんだ。

 

『伝道の書(コヘレトの言葉)』第12章

1 あなたの若い日に、あなたの造り主を覚えよ。悪しき日がきたり、年が寄って、「わたしにはなんの楽しみもない」と言うようにならない前に、

2 また日や光や、月や星の暗くならない前に、雨の後にまた雲が帰らないうちに、そのようにせよ。

3 その日になると、家を守る者は震え、力ある人はかがみ、ひきこなす女は少ないために休み、窓から覗く者の目はかすみ、

4 町の門は閉ざされる。その時ひきこなす音は低くなり、人は鳥の声によって起きあがり、歌の娘たちは皆、低くされる。

5 彼らはまた高いものを恐れる。恐ろしいものが道にあり、あめんどうは花咲き、いなごはその身をひきずり歩き、その欲望は衰え、人が永遠の家に行こうとするので、泣く人が、巷を歩きまわる。

6 その後、銀のひもは切れ、金の皿は砕け、水がめは泉のかたわらで破れ、車は井戸のかたわらで砕ける。

7 ちりは、もとのように土に帰り、霊はこれを授けた神に帰る。

8 伝道者は言う、「空の空、いっさいは空である」と。

9 さらに伝道者は知恵があるゆえに、知識を民に教えた。彼はよく考え、尋ねきわめ、あまたの箴言をまとめた。

10 伝道者は麗しい言葉を得ようとつとめた。また彼は真実の言葉を正しく書きしるした。

11 知者の言葉は突き棒のようであり、またよく打った釘のようなものであって、ひとりの牧者から出た言葉が集められたものである。

12 わが子よ、これら以外の事にも心を用いよ。多くの書を作れば際限がない。多く学べばからだが疲れる。

13 事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、その命令を守れ。これはすべての人の本分である。

14 神はすべてのわざ、ならびにすべての隠れた事を善悪ともにさばかれるからである。

 

 

確かに何だか『ガタカ』っぽい…

 

第1節の「私には何の楽しみもない」って、下半身不随になったジェローム・ユージーン・モローがよく言っていたことじゃんか…

 

 

第5節も、せやで。

 

「彼らはまた高いものを恐れる。恐ろしいものが道にあり、あめんどうは花咲き、いなごはその身をひきずり歩き、その欲望は衰え、人が永遠の家に行こうとするので、泣く人が、巷を歩きまわる。」

 

「高いもの・恐ろしいもの」は「螺旋階段」のことや…

 

そんでまさに「いなごはその身をひきずり歩き」を再現しとった…

 

 

 

「人が永遠の家に行こうとするので」は「ヴィンセントが死を覚悟して宇宙へ行こうとするので」ね。

 

 

うわあ…

 

ところで「あめんどう」って何?

 

 

アーモンドのことよ。

 

中東世界でアーモンドの花は「春の訪れ」を知らせる花なの。日本の梅や桜みたいなものね。

 

聖書にもよく登場する植物で、「新しい時代の到来・覚醒」という意味が込められているわ。

 

 

映画『ガタカ』は「春」の話だからね。

 

物語には「イエスの死と復活」が重ねられている。

 

 

第6節の「その後、銀のひもは切れ、金の皿は砕け、水がめは泉のかたわらで破れ、車は井戸のかたわらで砕ける」は、ジェローム・ユージーン・モローとヴィンセントの最期やな…

 

焼却炉の中で「銀メダル」は燃えて「金色」になっとった…

 

そんでヴィンセントの心臓は過酷なミッションに耐えられず破裂し、乗っとる宇宙船は無謀な着陸計画で砕け散る…

 

 

そして第7節「ちりは、もとのように土に帰り、霊はこれを授けた神に帰る」か…

 

二人の運命そのまんまじゃんか…

 

 

 

二人は「ちり」になって結ばれることを選んだのね…

 

たとえ地球と土星と離ればなれになっても…

 

原子レベルなら、いつかどこかで必ず会える…

 

まさに「瀬を早み 岩にせかるる滝川の われても末は 逢はむとぞ思ふ」だわ…

 

 

 

・・・・・

 

 

ガタガタ…ガタガタ…

 

 

えっ!?いきなり《深詠み》ですか!?

 

 

ガタガタガタガタガタガタ…

 

 

花笠君…

 

 

ピタッ

 

 

 

今日はどうしたんだい…

 

涙を流しながら《深詠み》するなんて…

 

 

何でもありません…教官…

 

放っておいてください…

 

 

花笠君…まさかきみは…

 

 

女の涙には気ィつけなアカン。

 

花笠はオヤジキラーやで…

 

 

それはそうと…

 

『伝道の書』第12章のどこにも「爪・頭髪・垢」は見当たらないよね…

 

 

あるよ。第11節にね。

 

知者の言葉は突き棒のようであり、またよく打った釘のようなものであって、ひとりの牧者から出た言葉が集められたものである。

 

 

ハァ?どこに?

 

 

日本語訳では意味が限定されてしまっているから、英語版を紹介しよう。

 

The words of the wise are like goads, their collected sayings like firmly embedded nails―given by one shepherd.

 

 

あれ?「nails」って書いてある!

 

 

「nail」は「釘」でもあり「爪」でもあるわ。

 

 

英語の駄洒落か…

 

 

そして「毛髪」も第11節の中に隠されている。

 

「しなやかで弾力のある木の枝」のように落ちて来た毛髪とは「goad」のことなんだ。

 

 

ゴウド?

 

 

よく牧童が持ってる「細くて、よくしなる棒」のことだよ。

 

それで家畜を突いたり、鞭のように叩いたりするんだ。

 

『アルプスの少女ハイジ』でペーターがいつも持ってたでしょ?

 

 

 

ああ、あれか!

 

確かにあの毛髪アップに似てる!

 

 

 

そして皮膚から削り取られる「垢」とは「ひとりの羊飼いから出た言葉」のことだ。

 

それらが「集められた」と書かれているからね。

 

あの垢の中の細胞ひとつひとつには「DNA」が含まれている。

 

つまり、垢を出した人物が何者なのかを雄弁に語る「言葉」だというわけだ。

 

 

なるほど!うまい!

 

 

ちなみにこの『伝道の書』第12章の「羊飼いの言葉・釘・長い棒」のモチーフは、新約聖書で「イエスの磔刑」に投影されたんだ。

 

イエスは掌に「釘」を打たれ、十字架の上で最後の「言葉」を発し、ロンギヌスの「槍」で刺された…

 

つまりこの『ガタカ』という映画は…

 

冒頭で旧約聖書の『伝道の書』を想起させ、結末は新約聖書の「イエスの死(すべての預言の成就)」へ持って行くという構成になっているわけだね。

 

 

そうゆう映画なのか…

 

 

さて、次に映し出されるのはカミソリのアップだ。

 

丹念に肌へ剃刀の刃をあてるシーンが映し出される。

 

 

肌に直接カミソリの刃を当ててはいけないとする旧約聖書的にはアウトだよね。

 

旧約聖書の一節を提示した直後にこんなシーンを入れるということは、この映画の主人公ヴィンセント・アントン・フリーマンが「イエス・キリストを投影した人物」であるということの暗示に他ならない。

 

そして自分の「爪・毛髪・垢」を焼却炉で燃やした後に、ジェローム・ユージーンの尿が入ったパックを内ももに装着する。

 

GATTACAでは、抜き打ち尿検査があるんだよね。

 


 

「爪・毛髪・垢」はあったけど、さすがに聖書に「小便」は出てこんやろ。

 

 

これは映画『GATTACA』の「もうひとつの下敷き」になっているギリシャ神話の引用なんだよね。

 

あの小水セットは、天空の神Uranus(ウラヌス)を想起させるためなんだ。

 

 

 

おしっこが神様を想起させるもの?

 

しかも十二宮の中でオチンチン丸出しでポーズとってるよ(笑)

 

 

ウラヌスが全裸なのには意味がある。ウラヌスは男性器がシンボルなんだ。

 

 

ええ!?

 

 

「Uranus」は古ギリシャ語で「Ouranos」と書くんだけど、これは「oureo(尿)」が語源なんだ。

 

当時は、天でウラヌスが放った尿が雨になって降ってくると考えられていた。

 

つまり古代ギリシャの人々は、ウラヌスの尿を「天の恵み」として感謝していたんだよ。

 

 

元祖「聖水」やな。

 

 

でもなんでウラヌスなの?この映画と何の関係があるのさ?

 

 

だってこの映画は「天空へ旅立つ物語」でしょ?

 

だったら天空の神様のモチーフを使わない手はないよね。

 

それにウラヌスには興味深い逸話があるんだ。

 

 

どんな?

 

 

ウラヌスは、母にして妻であるガイアとの間にTitans(ティーターン12神)をもうけた。

 

でも実を言うと二人の間には、その他にも子供たちがいたんだ。

 

ちょっと「イマイチ」の出来だったんで、12神には入れなかったんだよ。

 

 

日本神話のヒルコ(蛭子神)みたいやな。

 

 

ウラヌスはその子供たちを「こんな《出来損ない》は人目に晒すのも恥ずかしい」と思い、奈落の底に閉じ込めてしまった。

 

それに対しガイアは激怒する。

 

「私が腹を痛めて産んだ子を《出来損ない》呼ばわりするとはフザケンナ!《出来損ない》はテメエの種だろ!」

 

怒り狂ったガイアは、末っ子のクロノスに「ウラノスの男性器」を巨大鎌で切り取ることを命じた。

 

つまり去勢だね。

 

 

そういや日本にも、妻の逆鱗に触れてパイプカットさせられた俳優がおったな…

 

誰やったっけ?

 

 

クロノスは父の男性器を切り取り、男でなくすることで「父殺し」を行った。

 

そして父から「宇宙の神の座」を奪い取ったんだ。

 

 

昔の家族ゲンカは壮絶よね…

 

 

そのシーンを描いた有名な絵がある。

 

 

『クロノスに去勢されるウラヌス』

ジョルジョ・ヴァザーリ

 

 

右端の女の乳房を覆う手は、なんでわざわざ指を広げとんねん…

 

乳首を隠すのか見せるのかハッキリせえ!

 

 

そこは今回の論点ではない。

 

 

この絵って、なんだか既視感がある気がする…

 

映画の中で見たような…

 

 

その通り。

 

宇宙開発局「GATTACA」のメインロビーだね。

 

ウラヌスが去勢されている背景にある「大きな天体と衛星」のイメージが、メインロビーのオブジェに投影されているんだ。

 

 

 

だから何度もあのオブジェが映し出されたのか!

 

しかも、いくら宇宙開発局のメインロビーだからと言って、あのオブジェはベタ過ぎると思ってたんだ!

 

 

あれはウラヌスとクロノスの逸話を想起させるためだったんだよ。

 

ちなみギリシャ神話はイタリア半島に移植され、Titan族クロノスはローマ神話で農耕神サトゥルヌスとなった。

 

「サターン(土星)」の語源となった神様だね。

 

だから映画『GATTACA』では、主人公の目的地が「土星とその衛星タイタン」なんだ。

 

 

うわっ…全部つながった…

 

 

ちなみに、イエス・キリストの誕生を祝うクリスマス・イヴが12月24日になった由来も、サトゥルヌスだと言われている…

 

古代ローマでは、サトゥルヌスを祝うお祭り「サートゥルナーリア祭」が、毎年12月17日から23日の間に盛大に行われていたんだ。

 

この祭りでは御馳走を食べて、贈り物をし合う風習があった。それがのちにクリスマスになったと言われているんだよね。

 

 

クリスマスはキリスト教会が始めたんじゃないの?

 

 

初期の教会ではイエスの誕生日は重要視されていなくて、クリスマスは祝っていなかったんだ。

 

というか、そもそも当時のユダヤ人には誕生日を祝う習慣がなかったんだよ。

 

聖書にもイエスが「いつ生まれたか」は書かれてないし、イエスも自分の誕生日を大事にしろとは一言も言っていない。

 

 

そうだったのか…

 

 

まあ、そういうわけで、この映画は「イエス・キリストの物語」と「ギリシャ・ローマ神話」を融合させたものだと言えるわけだ。

 

知っての通り、この2つは西洋文化の根幹を為している。

 

 

日本で言うところの「神仏習合」みたいなものね…

 

 

ちなみに、父を去勢し天空の神となったクロノスだけど、最後は自分の息子のゼウスに倒される。

 

「父殺し」で得た神の座を、同様に「父殺し」で奪われるんだね。

 

いっぽうローマ神話のサトゥルヌスも「自分の子によって死をもたらされる」という予言をされて、強迫観念に憑りつかれてしまう。

 

そして悪夢的運命を克服したいがために、我が子を喰らう狂人となってしまうんだ。

 

自分の体内に取り込んで一体化してしまえば、殺されることはないと考えたんだね…

 

でも最後は予言通り死んじゃうんだけど。

 

『我が子を喰らうサトゥルヌス』

フランシスコ・デ・ゴヤ

 

 

強迫観念と一体化…

 

なんだか『ガタカ』に通じるものが…

 

 

そういえば土星へ向かう主人公の名前「Vincent」とは「乗り越える・克服する」という意味よね。

 

生まれ持ってのハンデキャップを「克服する」というプラスイメージだけでなく、サトゥルヌスの「他者と一体化することでの克服」というマイナスイメージも込められていたんだわ…

 

 

実に面白いよね。

 

この映画は、登場人物の名前を見れば、その役割がわかるようになっている。

 

まあ名前というのは神話や聖書の時代から、だいたいそういうもんなんだけど。

 

せっかくだから主要人物の名前について話しておこうか…

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

第1話(改定版)「プロローグ」 〜『GATTACA(ガタカ)』徹底考察〜

  • 2019.03.04 Monday
  • 20:48

 

 

 

 

 

 

 

 

レッド、グレイ…

 

今日きみたちに集まってもらったのは他でもない…

 

 

「例の件」だな、ゴールド…

 

 

いよいよ動き出したか…

 

 

フラワーからの情報によると、近々九州で「接触」があるようだ…

 

早速だが明日、君たちも私と一緒に日本へ発ってもらう…

 

 

しかし、日本には厄介な男がいると聞く…

 

あのMM7も返り討ちにされたらしいではないか…

 

 

なんだグレイ?お前ビビッてんのか?

 

どうせまた酒と女に目がない紳士気取りの似非英国人が、いつものヘマをやらかしただけのことよ…

 

 

あまり見くびらない方がいいぞ、レッド…

 

噂以上の…手ごわい男だからな…

 

 

フッ…

 

あんたが言うんなら間違いないだろうよ、ゴールド…

 

で、そいつはどうするんだ?

 

 

すでに手筈は整っている。

 

あとはフラワーに任せておけばよい…

 

彼女なら難無くやり遂げてくれるだろう…

 

 

確かにフラワーの猛毒にかかればイチコロかもしれん…

 

お花畑の蝶々みたいな顔して、スズメバチも真っ青のひと刺しが待っているのだから…

 

 

女はおっかねえな…

 

 

フッフッフ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜日本 4月某日〜

 

 

 

 

 

 

 

 

け〜つえきガッタガタ♪

 

け〜つえきガッタガタ♪

 

血がさ〜わ〜ぐ〜チッチッチッチ♪

 

 

いきなり御機嫌だね。どうしたの?

 

 

今日はお昼から、大学時代の恩師を囲む会があるんだ。

 

 

オッサンの恩師?何の恩師や?

 

 

何って「深読み学」の恩師に決まってるじゃないか。

 

恩師はもう70歳になるんだけど、今でも第一線に立ち、世界各地を転々としながら教鞭をとっているんだよ。

 

いわば、深読み学界の世界的権威だね。

 

今回久しぶりに帰国するということで、かつての教え子たちが集まって古稀を祝おうということになったんだ。

 

僕にとっても二十数年ぶりのことだから、懐かしい面々と会えるのが今から楽しみなんだよ。

 

そんな気持ちが抑えきれず、つい鼻唄に出てしまった…

 

 

だから血が騒いでいたんだね(笑)

 

でも変な歌だったなあ…

 

 

お前、あの歌、知らんのか?

 

まったく最近の若いもんは、これやさかい…

 

バラクーダの名曲『演歌・血液ガッタガタ』やで。

 

 

 

なにこれ超ウケる(笑)

 

でも「バラクーダ」って名前は聞いたことはあるぞ…

 

なんだっけ?

 

 

魚の「オニカマス」のことだね。

 

だから新年度にあたり「いっちょ今年もオニカマスぞ!」という決意を胸に歌ってみた。

 

 

あの歌のどこにそんな決意が込められるんだよ。

 

 

せやけど5月から新年度どころか新元号やで。

 

まだ平成が終わる実感ぜんぜん無いわ。

 

新しい元号もピンと来んし…

 

 

何だったっけ、新元号。

 

 

新元号っちゅうたら決まっとるやんけ…

 

ほら、アレや…アレ…

 

平成の次やさかい…

 

 

ジャンプや…

 

 

 

さっぶー

 

 

せっかく『血液ガッタガタ』と寒いオヤジギャグが出たことだし、今日は映画『GATTACA(ガタカ)』について語っちゃおうかな。

 

 

ねえねえところで花笠君は?

 

そろそろ10時だよ。

 

 

まさか、あの女、重役出勤か?

 

まだ三ヶ月しか経ってへんのにエエ度胸しとるやんけ。まったく最近の若い女は、なっとらんわ…

 

ワイが新入社員やった頃は、毎朝7時に出勤してトイレ磨きして、それぞれのお茶と好物の御茶菓子を用意して、入口で土下座して皆の出勤を迎えたもんやで…

 

 

嘘つけ。どんなブラック企業だよ(笑)

 

 

今日は花笠君は車で来るんだ。

 

あとで僕をパーティー会場まで送ってもらうためにね。

 

きっと渋滞にでも巻き込まれて、ちょっと遅れているんだろう。

 

 

はよ言えや。

 

 

では始めるよ。

 

まずは映画の予告編を見てもらおう。

 

 

 

 

この映画は「傑作」と呼ばれてる割には、興行でコケてるんだよね。

 

なんでだろう?

 

 

理由は2つある。

 

まず1つ目は、アンドリュー・ニコル監督の書いた脚本が難し過ぎたこと。

 

特に単純明快を好むアメリカ人にとってはね。

 

アンドリュー・ニコルはずっとイギリスで仕事をしていたんで、ついついレトリックや比喩を駆使した「高度なジョークを多用する」というクセが出てしまったんだろう…

 

『オズの魔法使い』を作るはずが『不思議な国のアリス』になっちゃったみたいな感じだ。

 

Andrew Niccol

 

だからこの失敗を教訓に、ニコルは翌年ジム・キャリー主演作『トゥルーマン・ショー』の脚本を書いた。

 

『GATTACA』と同じ題材を、今度はわかりやすくユーモアたっぷりに描いてね…

 

知っての通り、こちらは大成功を収めた。

 

 

 

『トゥルーマン・ショー』が『ガタカ』と同じ題材?

 

 

この二つの映画の主人公は、共にイエス・キリストが投影されている。

 

 

ええ!?そうなん!?

 

って驚いてみたけど、いつものパターン…

 

 

まあ説明するまでもなく、西洋の映画にはよくある話なんだけど。

 

特に『GATTACA』のほうは描き方から筋の展開まで、レディ・ガガ主演のリメイクで話題になった『A STAR IS BORN(スタア誕生)』にそっくりだ。

 

 

人生パッとしなかった主人公が…

 

かつての栄光を失って落ちぶれていた男と出会い…

 

男が主人公に夢を託し「一心同体」で支えて「スター」に仕立て上げ…

 

それを見届けて最後に男が自殺するところまでね…

 

 

 

そういえばクリソツなストーリーだな(笑)

 

しかしこの映画好きだよね、おかえもんは。

 

 

後世にとても大きな影響を与えた作品だからね。

 

コーエン兄弟やカズオ・イシグロを語るには、この『スタア誕生』と、プレストン・スタージェスの『サリヴァンの旅』は欠かせない。

 

 

 

この映画も相当好きやな。よう名前が出て来る。

 

 

だって本当に重要な作品だからね。

 

 

さて、『GATTACA』は2つのアフォリズム(格言)が提示されて幕を開ける。

 

1つはヘブライ聖書(旧約聖書)『伝道の書(コヘレトの言葉)』からの一節。

 

そしてもう1つは、アメリカの精神医学や医療倫理の権威ウィラード・ゲイリンの言葉だ。

 

 

 

まず『伝道の書』の引用の方から見てみよう。

 

Consider God's handiwork, who can straighten what He hath made crooked?! 

 

ECCLESIASTES 7:13

 

日本語訳では、こうなっている。

 

神の御業を見よ。神が曲げて作られたものを、誰が真っ直ぐにすることが出来ようか?

 

 

 

これまで旧約聖書の話は仰山出て来たけど、『伝道の書』っちゅうのは初耳やな。

 

どうゆう書なんや?

 

 

この『伝道の書』は旧約聖書の中でも非常に興味深い書なんだ。

 

まるで仏教のように「諸行無常」を説き、儒教のように「中庸」を説いているんだよね。

 

 

なぬ?旧約聖書が「諸行無常」と「中庸」を?

 

そんなわけあらへんやろ…

 

 

本当だよ。第1章からして、こんな感じなんだ。

 

第1節から7節を読んでみて…

 

1 ダビデの子、エルサレムの王である伝道者の言葉。

2 伝道者は言う、空の空、空の空、いっさいは空である。

3 日の下で人が労するすべての労苦は、その身になんの益があるか。

4 世は去り、世はきたる。しかし地は永遠に変らない。

5 日はいで、日は没し、その出た所に急ぎ行く。

6 風は南に吹き、また転じて、北に向かい、めぐりにめぐって、またそのめぐる所に帰る。

7 川はみな、海に流れ入る、しかし海は満ちることがない。川はその出てきた所にまた帰って行く。

 

 

いきなり色即是空じゃん…

 

 

ほとんど鴨長明『方丈記』の世界や…

 

「ゆく川の流れは絶えずして…」そのまんまやんけ。

 

 

でしょ?

 

『伝送の書』は、世界一の智者として名高かったソロモン王が回想する体で書かれている。

 

自身の生涯を振り返りながら「頭が良すぎても人間は幸せになれない」ということを延々と語るんだ…

 

8 すべての事は人をうみ疲れさせる、人はこれを言いつくすことができない。目は見ることに飽きることがなく、耳は聞くことに満足することがない。

9 先にあったことは、また後にもある、先になされた事は、また後にもなされる。日の下には新しいものはない。

10 「見よ、これは新しいものだ」と言われるものがあるか、それはわれわれの前にあった世々に、すでにあったものである。

11 前の者のことは覚えられることがない、また、きたるべき後の者のことも、後に起る者はこれを覚えることがない。

12 伝道者であるわたしはエルサレムで、イスラエルの王であった。

13 わたしは心をつくし、知恵を用いて、天が下に行われるすべてのことを尋ね、また調べた。これは神が、人の子らに与えて、骨折らせられる苦しい仕事である。

14 わたしは日の下で人が行うすべてのわざを見たが、みな空であって風を捕えるようである。

15 曲ったものは、まっすぐにすることができない、欠けたものは数えることができない。

16 わたしは心の中に語って言った、「わたしは、わたしより先にエルサレムを治めたすべての者にまさって、多くの知恵を得た。わたしの心は知恵と知識を多く得た」。

17 わたしは心をつくして知恵を知り、また狂気と愚痴とを知ろうとしたが、これもまた風を捕えるようなものであると悟った。

18 それは知恵が多ければ悩みが多く、知識を増す者は憂いを増すからである。

 

 

なんだか意外…

 

 

『伝道の書』では、頭でっかちな「知者」とパッパラパーの「愚者」は同じであると説いている。

 

どちらも身を亡ぼすとね。

 

世の中の真実は神のみが知ることで、人間ごときにはわからないと言うんだ。

 

真実とは人間にとって風をつかむようなものだとね…

 

 

真実は風に?

 

『ガタカ』にもそんなシーンがあった気が…

 

 

だから権力に対してむやみに逆らわず、各人が与えられた能力に見合った仕事を全うし、分相応の範囲で快楽を享受しなさいと説くんだね。

 

それが「人としての正しい生き方」だというんだよ。

 

 

なんだか修身の…じゃなくて道徳の教科書に出て来そうな話だね…

 

 

これが新約聖書では、イエスの「カエサルの物はカエサルに」という言葉になり、使徒パウロの「政治的権力と宗教的権力への服従」という思想に発展したわけだ。

 

この『伝道の書』は思想面でも芸術面でも後世に大きな影響を与えた。

 

『伝道の書』を巧みに歌にして大ヒットさせたユダヤ人の青年もいたね。

 

誰だかわかる?

 

 

『伝道の書』を歌にしたユダヤ人青年?

 

 

シャブタイ・ツィメルマンことボブ・ディランだよ。

 

 

この歌は非常によく出来てるよね。

 

次々と「あとどれだけすれば○○は…」と問題提起するんだけど、答えは決して出さない。

 

否定も肯定もせずに、答えは全部「風に吹かれている」と言うんだよ。

 

つまり『伝道の書』同様に「人間には答えが永遠にわからない」ということなんだ。

 

 

確かにまったく同じやな…

 

 

じゃあ『ガタカ』のテーマもそうゆうことなの?

 

 

そうだね。

 

この物語を書いたアンドリュー・ニコルもボブ・ディラン同様に「答え」の明言は避けた。

 

だから遺伝子操作をしたほうも、遺伝子操作をしなかったほうも、どちらも最後は死ぬという結末にしたんだよ。

 

わざわざ映画ラストのメッセージをカットしてまでも。

 

 

ラストのメッセージをカット?

 

 

元々映画の最後には「遺伝子に《欠陥》をもって生まれたにもかかわらず偉業を成し遂げた人たち」を紹介するシーンがあった。

 

エミリー・ディッキンソン(躁鬱症)やアインシュタイン(失読症)、そしてホーキング博士(筋萎縮性側索硬化症)などをね。

 

だけど公開直前でその部分をカットしたんだ。

 

やっぱりフェアじゃないと。

 

 

なんで!?

 

あったほうが感動するし映画的に効果的じゃんか。

 

 

「遺伝子操作」と聞くと何だか恐ろしいような印象を受けるけど、人類はこれまで様々な「遺伝子操作」を行い、ここまで文明を発展させてきたんだ。

 

人類の歴史に欠かせない栽培植物や家畜というのは、際だった長所をもつ個体を何世代も掛け合わせて遺伝子を強化した人工物と言える。

 

ペットの犬や猫もそうだよね。個性豊かな品種というのは、特定の遺伝子を「交配合」によってピンポイントで強化し、差別化を図ったものだから。

 

かつては手間暇かけて試行錯誤しながら交配合を行っていたんだけど、今ではそれが科学技術で一足飛びに出来るようになった。

 

だから遺伝子操作の「手法」を問うことは出来ても、遺伝子操作「自体」を完全否定することは出来ない。

 

 

なるほど。確かにそうだよな…

 

 

それに遺伝子検査で「リスク」を回避することは、すでに一般的に行われている。

 

それを「間違ってる」というのは、選択した親たちや既に生まれた子に対して失礼だ。

 

僕の息子も体外受精で生まれた試験管ベビーなんだけど、精子も母胎に戻す受精卵も「最適」なものを選んだよ。

 

卵子や精子にも当然「優劣」がある。一番「出来のいいもの」を選ぶのが普通でしょ?

 

その局面で「イマイチ」な遺伝子を選ぶ親っているかな?

 

「こっちのダメなほうでいいです」なんて誰が言うと思う?

 

 

確かに…

 

 

「命に優劣はない」とか「人間には無限の可能性がある」とか、一見「正論」や「美談」のように聞こえる話ほど、そこには別の暴力性が隠れている。

 

この『GATTACA』という作品は、そのラインを越えないまでも「少しだけ」踏んでしまったんだ。

 

そして「肝心なテーマ」を「隠し過ぎて」しまった。

 

だからアメリカでは興行的には失敗したんだろう。

 

 

肝心なテーマ…?

 

 

この映画では、遺伝子操作によって欠陥の無い人間が生みだされるという世界が描かれる。

 

もはや「人種」や「性別」による差別がなくなり、生まれ持った遺伝子の優劣で全てが決まる世界だ。

 

遺伝子操作で生まれた人間は、知能や身体能力に優れ、常にリスクを避け、無謀なことは決してせず、感情や性欲もコントロールされている。

 

だけど「ある要素」だけが「不自然なまでに」触れられない。

 

「優生学」を語る上で絶対に避けては通れない「ある要素」が、なぜか物語の中でノータッチなんだ…

 

 

もしや…

 

同性愛?

 

 

その通り。

 

かつて「劣等」として差別され、刑罰や治療の対象でもあった「同性愛」が、なぜか『ガタカ』では一切触れられないんだ。

 

 

気のせいちゃうか?

 

ただの「深読みし過ぎ」とちゃうん?

 

 

そんなことないと思うけどね。

 

だって、そのために『伝道の書』の一節が冒頭で提示されるわけだから…

 

 

あれと同性愛に何の関係があるのさ…

 

 

よく考えてごらん。

 

この一節って、ちょっと面白くない?

 

 

Consider God's handiwork, who can straighten what He hath made crooked?! 

 

「神が曲げて作ったものを誰が真っ直ぐに出来よう」だよ?

 

 

普通なら、こうだと思わない?

 

 

「神が真っ直ぐ作ったものを誰が曲げることが出来よう」

 

 

 

あ…確かに…

 

 

これが新約聖書になると「神の作ったもの=真っ直ぐ」なんだよね。

 

なぜか『伝道の書』では、逆になってるんだ。

 

 

しかも「crook(曲げる)」という言葉には「屈折・背徳者・犯罪者」という意味がある。

 

そして「straight」とは「性的指向がストレート」つまり「正常な異性愛者」という意味で使われるよね。

 

つまりあの一節は、こういう風にも読めるんだ…

 

 

「神が同性愛者として作った人間を、誰が異性愛者にすることが出来よう」

 

 

これこそが、決して直接的に語られることのない「隠されたテーマ」というわけ。

 

 

うひゃあ…

 

じゃあ2つ目の格言は?

 

 

ウィラード・ゲイリンの言葉だね。こちらも面白い。

 

”I not only think that we will tamper with Mother Nature, I think Mother wants us to.” 

 

WILLARD GAYLIN

 

我々は母なる自然に手を付けるだろうが、それは母なる自然が望むことでもあるのだ

 

 

 

なんか意味深やな。

 

 

こちらのキーワードは「tamper」だ。

 

「勝手にいじくる・改ざんする」の他にも「不正な交渉をもつ」とか「棒を突っ込んで、こねくり回す」といった意味でも使われる…

 

 

うひゃあ!

 

 

しかもこれを言った人の苗字が「GAYLIN」だからね…

 

こんな格言をよく見つけて来たと思う。


 

プロローグからアクセル全開だな…

 

 

だから言ったろう。この映画は興行的にはコケたけど傑作だって。

 

冒頭からラストまで一寸の隙も無い完璧な作品なんだ。

 

まさに芸術作品と呼ぶにふさわしい。

 

許されることなら僕は『GATTACA』の全シーン全セリフを解説したい…

 

 

それだけはやめてくれ…

 

また全60話とか3ヶ月以上続くとかシャレにならない…

 

いい加減みんなに愛想つかされるぞ…

 

 

大丈夫マイフレンド。ちょっと言ってみただけ。

 

 

せやけど遅いな花笠君…

 

 

あっ!外に車が止まった音がした!

 

きっと花笠君だよ!

 

 

よっしゃ!見に行こか!

 

あいつどんな車に乗っとるんやろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

オープンカー!?

 

花形か!

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

全米映画週末興行収入ランキング(3/1〜3編)2019

  • 2019.03.04 Monday
  • 11:23

 

 

 

 

 

 

 

お待っとさんでした。

 

毎週月曜恒例のBOX OFFICE全米週末映画興行収入ランキングの時間です。

 

3/1〜3のトップ10は、こちら!

 

 

 

1)HOW TO TRAIN YOUR DRAGON: The Hidden World

 

$30.0M ($97.7M) 2週目(ー)

 

 

2)A MADEA FAMILY FUNERAL

 

$27.1M ($27.1M) 1週目(初)

 

 

3)ALITA:BATTLE ANGEL

 

$7.0M ($72.2M) 3週目(⇩)

 

 

4)THE LEGO MOVIE 2:The Second Part

 

$6.6M ($91.7M) 4週目(⇩)

 

 

5)GREEN BOOK

 

$4.7M ($75.9M) 16週目(⇧)

 

 

6)FIGHTING WITH MY FAMILY

 

$4.7M ($14.9M) 3週目(⇩)

 

 

7)ISN'T IT ROMANTIC

 

$4.6M ($40.3M) 3週目(⇩)

 

 

8)GRETA

 

$4.6M ($4.6M) 1週目(初)

 

 

9)WHAT MEN WANT

 

$2.7M ($49.6M) 4週目(⇩)

 

 

10)HAPPY DEATH DAY 2U

 

$2.5M ($25.3M) 3週目(⇩)

 

 

 

 

1位は前回に続いて『ヒックとドラゴン3』だい!

 

 

 

 

さすがやな。

 

これだけ世界的に人気が高いシリーズにもかかわらず劇場公開せえへん日本は、ある意味すごいわ。

 

 

また署名運動しなくちゃ。

 

 

2位はイースター(復活祭)シーズンの到来を告げる、タイラー・ペリーの『マデア家のお葬式』がランクインだ。

 

 

 

また日本で劇場公開されんやつや。

 

 

タイラー・ペリーの映画はいつもそう。

 

マデアおばさんのハロウィン映画『Boo!』の1と2もそうだった。

 

 

 

人種&宗教ネタのコメディは日本では難しいからね。

 

聖書をパロディにしても、元ネタを知らないから面白さが伝わらない。

 

実に翻訳者泣かせだと思うよ。

 

 

そもそも、際どいジョークと爆笑トークのコメディ映画は、100%翻訳するのは不可能や。

 

いっそのこと人気芸人を吹き替えに起用して、ギャグも全然関係ない日本人向けのネタに置き換えるしかないやろ。潔く。

 

 

言葉や文化の壁って難しいな…

 

さて、3位は『アリータ:バトル・エンジェル』だい!

 

 

 

浮上せんかったか…

 

やっぱ北米ではアカンな。大アターリとは行かへん…

 

 

注目の日本と中国ではどうだったの?

 

日本の人気漫画が原作の映画だから、日本では大ヒットだよね!?

 

 

それが…

 

日本では、最初の週末が…

 

わずか310万ドル(3億4千万円)のスタートとなってしまった…

 

 

ええ!?30億円じゃなくて!?

 

 

しかも…

 

初登場1位ではなく、2位という屈辱…

 

『翔んで埼玉』に敗れて、まさかの2位スタートとなってしまったんだ…

 

 

 

そ、そんな…

 

バトル・エンジェルが敗れてしまうなんて…

 

 

GACKT様降臨だから、仕方ないかもしれない…

 

 

これじゃあ『アリータ』の赤字、確定じゃんか…

 

 

でも、心配は要らない…

 

中国では記録的なヒットとなっているんだ…

 

公開初日の興行収入新記録を打ち立てたそうだよ…

 

 

新記録!?

 

 

しかも公開三日間で、北米の三週間分の売上6千万ドルを超えてしまった…

 

中国だけで2億ドルくらい行くんじゃないかな?

 

 

ああ、よかった…

 

って何の心配してんだよ、うちら。

 

 

映画愛だね。

 

さて、4位は『レゴ・ムービー2』で、5位は『グリーン・ブック』だ。

 

 

 

またトップ10に返り咲いたのか!

 

 

さすがアカデミー作品賞。16週目での再々ランクインや。

 

 

そして6位に初登場したのがニール・ジョーダン監督の最新作『グレタ』だね。

 

 

 

ニール・ジョーダンって誰?

 

 

90年代にブイブイ言わせとった脚本家&監督や。

 

Neil Jordan(1950〜)

 

『プランケット城への招待状』『俺たちは天使じゃない』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア『ことの終わり』などヒットを飛ばした。

 

 

ああ!聞いたことあるタイトルばかりじゃんか!

 

 

ニール・ジョーダンは映画祭の常連でもあったんやで。

 

『マイケル・コリンズ』でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を…

 

 

『ブッチャー・ボーイ』でベルリン国際映画祭の銀熊賞を…

 

 

そんで『クライング・ゲーム』でアカデミー賞の脚本賞をもらっとる。

 

 

 

大物なんだね。

 

 

ただ00年代以降はパッとしてなくて、今回の最新作もイマイチの評判だ。

 

注目の女優の共演ということで話題になっていたんだけどね…

 

『ピアニスト』『エル ELLE』などで有名なフランスの大女優イザベル・ユペールと…

 

 

『キック・アス』『サスペリア』などで注目されているアメリカの若手女優クロエ・グレース・モレッツの共演だから…

 

 

 

確かに、この組み合わせなら期待するわな。

 

日本での劇場公開も微妙なとこって感じか?

 

 

たぶん、されると思うよ。日本でも人気の高い女優の共演作だから。

 

ただ公開規模は限定的になるだろうね。

 

 

ということで、そろそろお別れの時間になったようだ。

 

僕は『ガタカ』へ行かねばならぬ。

 

それでは皆さん、ごきげんよう。さようなら。

 

 

 

 

 

 

『A MADEA FAMILY FUNERAL』

 

脚本・監督・主演:タイラー・ペリー

 

出演:カッシー・デイヴィス、パトリス・ラブリー、デヴィッド・オタンガ、ローム・フリン、アリエル・ミランダほか

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

エピローグ第27話:最終回『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解剖

  • 2019.03.01 Friday
  • 21:12

 

 

 

 

 

 

クソッ…ハア…ハア…

 

 

それでは…

 

「Cメロの歌詞」と「ウィロビーの置き手紙」の関係について話そう…

 

 

第3のサビ「あなたのキスを忘れましょう」について語った前回を未読の人は、まずコチラからどうぞ…

 

 

 

 

 

ウィロビーは自殺する前に、妻アンへ宛てて手紙を「二通」書いた。

 

「一通目の手紙」は鏡台の引き出しに隠されていて、これは以前に書かれたもの。

 

書かれていた内容は「私たちに関する自分の記憶をつづったもの」で「果てしない愛情・無償の愛」について記されていたと、目の付きやすいテーブルの上に置かれていた「二通目の手紙」の冒頭で語られる。

 

そして「二通目」の内容は「こんにち語るべき重要なこと」が書かれているというんだ。

 

こんな風にね…

 

My daring Anne,

 

There's a longer letter in the dresser drawer I've been writing for the last week or so.

That one covers us, and my memories of us and how much I've always loved you.

This one just covers tonight, and, more importantly today.

 

 

これって…

 

以前に書かれた「一通目」が『ルカによる福音書』で…

 

映画で朗読される「二通目」が『使徒行伝(使徒言行録)』のことじゃないの…?


 

その通り。

 

ウィロビーから妻アンへの手紙は「この映画が『使徒行伝』のパロディになっていること」の種明かしにもなっている。

 

さっき引用した手紙の冒頭部分は『使徒行伝』の冒頭部分のパロディになっているんだね。

 

1:1 テオピロよ、わたしは先に第一巻(『ルカによる福音書』)を著わして、イエスが行い、また教えはじめてから、

1:2 お選びになった使徒たちに、聖霊によって命じたのち、天に上げられた日までのことを、ことごとくしるした。

 

 

ホンマかいな…

 

 

本当だよ。

 

そして脚本を書いたマーティン・マクドナーは、それを「不謹慎だ」と捉える人がいることも十分理解していた。

 

だからジョークを言った後で、わざわざ「the act」という言葉を持ち出し、ちゃんとエクスキューズを入れているんだ。

 

『使徒行伝』は英語で『The Acts』だからね…

 

Tonight I have gone out to the horses to end it.

I cannot say sorry for the act itself, although I know that for a short time you will be angry to me or even hate for me for it.

Please don't.

 

 

「今夜、俺は馬小屋で命を絶つ。『使徒行伝』それ自体をネタにしたことについては謝りようがない。おそらく君は腹を立てるだろうし、そのことで俺を嫌うかもしれないが、それはやめてくれ。」

 

 

チェーホフも『The Shooting Party(狩場の悲劇)』の冒頭で同じようなエクスキューズを入れとったな…

 

作品内に頻出する聖書のパロディや不謹慎ジョークに対して…

 

わたしは自分自身の快適な生活に注意を払うには、あまりにも無精だったので、故人のみならず、生者でさえ、かりにそれが当人の希望なら、わたしの部屋の壁にかかってくれていて一向苦にならなかった*。

 

*註 こういう表現に対して、読者に謝らなければならない。不幸なカムイシェフ(手記を書いた予審判事のこと)の小説には、この種の表現がふんだんにある。わたしがそれらを削除しなかったのは、彼の小説の全文を印刷することが、作者の性格をはっきりとさせる上に必要であると考えたからに、ほかならない。――A・Ч(アントン・チェーホフ)

中央公論社版(訳:原卓也)より

 

 

マーティン・マクドナーは、そこもきちんと踏襲したんだね。

 

 

ハア…ハア…ハア…

 

 

そしてこんなふうに手紙は続く。

 

ここはどんなジョークになっているのか、わかるかな?

 

This is not a case of I came in this world alone, and I'm going out of it alone or anything dumb like that.

I did not come in this world alone, my mom was there.

And I'm not going out of it alone, cos you are there, drunk on the couch, making Oscar Wilde cock jokes.

 

 

「この世界に孤独な存在として来たのではない。そこにはママがいた。そしてこの世界から孤独な存在として去るのではない。そこには君がいた」

 

ママは「聖母マリア」ってすぐにわかるけど、この世を去る時にいた「you(君)」は誰のことだろう?

 

 

ポイントは「or anything dumb like that(馬鹿げた話みたいだが)」だ。

 

特に意味の無い「要らないフレーズ」をわざわざ入れたことには意味がある。

 

この「dumb(ダム:馬鹿・間抜け)」という言葉は、手紙の中でもう一度登場するんだけど…

 

「dove(ダブ:鳩)」「lamb(ラム:子羊)」 の意味がかけられているんだよね…

 

 

へ?

 

 

わかったわ…

 

「you」とは「肉体としてのイエス」のことね…

 

つまり、こうゆうこと…

 

This is not a case of I came in this world alone, and I'm going out of it alone or anything dumb like that.

I did not come in this world alone, my mom was there.

And I'm not going out of it alone, cos you are there, drunk on the couch, making Oscar Wilde cock jokes.

 

この世界に孤独な存在として現れ、孤独な存在として去るのではない。ハト(聖霊)としてやって来て、屠られた小羊(贖い)として去って行くのだ。

私はこの世界に孤独な存在として来たのではない。そこには母マリアがいた。

そして孤独な存在として去って行くのではない。そこ(十字架)には君イエスがいた…

 

 

『受胎告知』のハトと、贖い(あがない)の小羊か…

 

『受胎告知』フラ・アンジェリコ

 

『イサクの燔祭』ローラン・ド・ラ・イール

 

 

せやけど「you」はカウチソファに座って酒を飲んで、オスカー・ワイルドの下ネタを言うんやで…

 

cos you are there, drunk on the couch, making Oscar Wilde cock jokes.

 

イエスはそんなことしとらんやろ…

 

つうか、イエスの時代にオスカー・ワイルドはおらへん。

 

 

そんなことはないんだな。

 

イエスは「カウチ(肘掛けのない長椅子)」に座って葡萄酒を飲み、「OSCAR WILDE COCK」のジョークを言った…

 

 

ハァ!?

 

 

マ、マサカ…ソコマデ…

 

 

これは「最後の晩餐」での出来事を言ってるんだ。

 

「OSCAR WILDE COCK(オスカー・ワイルドの男性器)」は、アナグラムになっている。

 

「OSCAR WILDE」の文字を並べ替えると…

 

「COWARD LIES COCK(臆病者・複数の嘘・雄鶏)」という言葉になるんだよ…

 

 

ええーーーー!?

 

 

『ルカによる福音書』第22章34節…

 

最後の晩餐でイエスが、筆頭弟子であるペトロに言ったセリフね…

 

22:34 するとイエスが言われた、「ペテロよ、あなたに言っておく。きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」

 

そしてペトロはそれを「悪い冗談」だと受け取った…

 

 

そういうことだ。

 

 

 

バ、バカな…

 

ゼェ…ゼェ…ゼェ…

 

 

そして手紙は「このままボロボロになって君に苦痛を与えるより、よい思い出のうちに死を迎えたい」ということが語られ、再び「dumb」を使ったジョークが登場する…

 

Your final memories of me will be us at the riverside, and that dumb fishing game which I think they cheated at,

 

 

dumb fishing game(バカげた釣遊び)?

 

 

これも『ルカによる福音書』ね…

 

ガリラヤ湖での漁のシーンよ…

 

イエスは「獲れないはずの魚が大量に獲れる」という奇跡を起こし、疑い深く臆病者だったペトロに「あなたは人間をとる漁師になる」と告げた…

 

つまり「あなたのような弱い人間こそが、迷える子羊に手を差し伸べられる存在になり得る」と…

 

5:4 話がすむと、シモンに「沖へこぎ出し、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。

5:5 シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」

5:6 そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れがはいって、網が破れそうになった。

5:7 そこで、もう一そうの舟にいた仲間に、加勢に来るよう合図をしたので、彼らがきて魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みそうになった。

5:8 これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」

5:9 彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。

5:10 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」

5:11 そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。

 

 

最後の「which I think they cheated at,(あれはどう考えてもズルやろ)」が、さっき「怒らんといてや」とエクスキューズした不謹慎ジョークにあたる部分やな…

 

 

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

 

不謹慎ジョークの後は「死の間際にイエスが考えていたこと」について語られる…

 

and me inside of you, and you top on me, and a barely fleeting thought of the darkness yet to come.

 

 

「三位一体(父と子と聖霊)」のことだね…

 

 

そしてウィロビーの置き手紙は、こんなふうに締めくくられるんだ…

 

and maybe I'll see you again if there's another place.

And if there ain't, well, it's been Heaven knowing you.

 

 

「I(聖霊)」が、石の墓穴に葬られた「you(肉体)」と再会するっちゅうことやな…

 

いわゆる「イエスの復活」のことや…

 

 

つまりウィロビーは…

 

「死んだ後も霊体となって存在すること」を踏まえた上で、この手紙を書いているということになるわね…

 

まさか、この手紙は「妻アン」へ向けられたものではなく…

 

アンの中に入っている「霊体アンジェラ」に向けて書かれたんじゃ…

 

 

僕はそう思ってる。

 

そしてここでウィロビーの妻が「Anne」という名前であることが大きな意味を持ってくるんだ。

 

 

アンジェラだからアンとか?

 

 

そんな単純な話ではない。

 

「アン(Anne)」とは『ルカによる福音書』第2章に登場する「未亡人になった女預言者アンナ(Anna)」から取られた名前なんだよ。

 

アンもアンナも、元の形はヘブライ語の「カンナハ(Channah)」だからね…


 

未亡人になった女預言者アンナ!?

 

 

アンナは若い頃に結婚していたんだけど、それは「7年間」という短いものだった。

 

なぜなら、年の離れた夫が急死してしまったから…

 

 

ウィロビー夫妻そっくりじゃんか…

 

推定30歳くらいのアンの年齢と、推定4〜6歳前後の娘二人の年頃を考えると、たぶん結婚期間も同じくらい…

 

 

 

そういえば、この時のアン…頬杖してテーブルに片肘をつきながら食事してるわ…

 

幼い娘たちもウィロビーも、きちんとした姿勢で食べてるのに

 

この違和感ありまくりの行儀の悪さは…

 

 

アンジェラだ!

 

 

 

ウグググググ…

 

 

『ルカによる福音書』によると、アンナは預言者として評判だった…

 

生まれたばかりの赤子イエスのことを、一番最初に民衆に向かって「この方は救世主だ」と宣伝したのは、この女預言者アンナなんだ…

 

ちなみに「預言者」というのは、体内に聖霊が入ってきて、様々な言葉を述べ伝える存在…

 

つまり「憑依される者・媒体となる者」だ…

 

 

うひゃあ…

 

 

もしかして…

 

あの最後の夜、ウィロビーが娘たちに「ママはシャルドネで片頭痛になった」と言ったのは…

 

Chardonnay(シャルドネ)」と「Channah(カンナハ)」の語呂合わせじゃ…


 

間違いないね。

 

だって幼い娘たちには「シャルドネ」なんて言ってもわからないだろうから…

 

わざわざそんな単語を持ち出す理由は、語呂合わせ以外に考えられない…

 

マーティン・マクドナーという人は、駄洒落やアナグラム、語呂合わせなど、本当に言葉遊びが大好きなようだ…

 

 

ゲホッ…ゲホッ…ゲホッ…

 

 

だいじょぶ?

 

まだシャルドネが残ってるんじゃない?

 

 

う、うるさい!余計なお世話だ!

 

ハア…ハア…ハア…

 

 

どう見ても大丈夫そうには見えへんけどな…

 

 

せやけど『あなたのキスを数えましょう』は、どうなったんや?

 

聖書ネタにすっかり隠れてもうたやんけ…

 

 

『あなたのキスを数えましょう』は、ウィロビーの置手紙の「構成」として再現されたんだよ…

 

「手紙の前半部分」が「第3のサビ」で…

 

「手紙の後半部分」が「Cメロ」の歌詞をもとにして構成されているんだよね…

 

ということで、もう一度「第3のサビ」から再生してくれたまえ…

 

 

ブ〜ラジャー!

 

 

 

ウグァァァァ…

 

ゼェ…ゼェ…ゼェ…

 

 

歌詞は、こうね…

 

あなたのキスを忘れましょう

嫌いになって、楽になって

夜を静かに眠りたい

I'm alone and you were mine...

 

Do the night and days

cure my feel of pain?

Please spmebody, say

All of my heart is almost cryin'

In your eyes, in your sight,

was it certainly my place?

Tell me please

the reason of your love for me...

Can I cry now? 

 

 

置手紙では、まず最初に「どれだけ愛していたか」が語られる。

 

これは「あなたのキスを忘れましょう」の部分にあたるよね。

 

この歌詞は「忘れたくても忘れられないほど愛している」という意味だから…

 

 

 

「今夜、馬小屋で自殺する」が「夜を静かに眠りたい」か…

 

そして、わざわざ「嫌いになるだろう」なんて書いたのも「嫌いになって楽になって」を再現したかったからなんだ…

 

 

置手紙でも歌詞でも、結局「嫌い」にはなれへんとこは一緒や…

 

 

その後やたらと「alone」が意味深に繰り返され「だけど君がいた」とまとめられたのは、「第3のサビ」の最終フレーズ「I'm alone and you were mine」を再現したかったからだよね…

 

そして次に「Cメロ」の冒頭フレーズ「Do the night and days, cure my feel of pain?」が再現される。

 

まず「カウチで酒を飲みオスカー・ワイルドのジョークを言う(最後の晩餐)」で「夜」が…

 

そして「facing a bullet down(自ら死という道を選ぶ)」ことで「昼」が…

 

 

 

歌詞の「この痛みや苦しみは癒えるの?(決して癒えない)」が、置手紙でもちゃんと再現されてるわ…

 

癒えるどころか、もっと苦しくなるだろうって…

 

 

そしてウィロビーは、胸の内にある切実な想い(all of my heart)を訴え続ける(crying)…

 

わざわざ「in you eyes」というフレーズを使って…

 

 

 

「君にとって最後の思い出となる景色は、あの湖畔がいい」って「In your sight」の再現だったのか。

 

 

その直後に突然「君の中に俺がいて、俺の上に君がいる」と「場所」の話になるのは…

 

「Was it certainly my place ?」を再現するためだ…

 

 

そしてウィロビーは、こう綴る…

 

「俺はいつも君のことを愛していた。だからまた、どこか別のところで君に会えるだろう。たとえそうでないとしても、神様は君のことを見捨てていないはずだ」と…

 

つまりウィロビーは…

 

どんな理由や仕組みかわからないけど、《神の思し召し》によってアンジェラが「愛する人のそばにいる」という望みを叶えられている、ということを言いたかったわけだ…

 

これは「Tell me please the reason of your love for me」の再現だね…

 

 

最後の「Can I cry now?(いま泣いてもええ?)」が無いやんけ。

 

 

あの心の叫びは、自殺シーンで再現された。

 

ウィロビーは頭に「袋」を被って拳銃自殺をしたよね?

 

 

 

グロい光景を家族に見せたくなかったからやろ?

 

 

それもあるんだろうけど、僕は別の理由があったと思うんだ…

 

 

別の理由?

 

 

本当の理由は「涙の跡」を見られたくなかったからだと思う…

 

ウィロビーは袋を被った後に、涙を流していたんだよ…

 

これまで絶対に人前では見せないよう隠し続けていた「アンジェラへの想い」が溢れてきて…

 

 

たしかに「Can I cry now?」だ…

 

だから駆けつけた警官が袋を取って無言になる意味深なシーンがあったんだな…

 

 

あァ!…

 

(嗚咽しながら床に崩れ落ちる)

 

 

だいじょぶ?花笠君…

 

 

ウアァァァァァ…

 

(雄叫びをあげながら床に崩れ落ちる)

 

 

こっちもダメそうや…

 

 

マーティン…

 

 

見事だったよ…

 

私の完敗だ…ミスターおかえもん…

 

噂通りの…いや、噂以上の深読みだった…

 

 

ど、どうも…マーティン…

 

 

だけど泣く子も黙る「MM7(ダブル・エム・セブン)」がマーティンだったとはね…

 

コードネームが「マーティン・Mさん」の略だってことはわかったけど、最後の7は何なんだろう?

 

 

マクドが好きやったさかい「マーティン・マクドセブン」やろ。

 

 

まさか…

 

「7」は「なな」と読むんじゃ…

 

 

へ?

 

 

さすがだミス・ハナガサ…

 

まさかあの時の歌声が君だったとは、夢にも思わなかったな…

 

私は、君に救われ、そして君に打ちのめされたというわけか…

 

皮肉なものだ…

 

 

・・・・・

 

 

おかえもん君…君は実に優秀な教え子を持ったな…

 

いや、持ったのではない…君が育てたのか…

 

君とはいずれ…もっと大きな舞台で戦ってみたい…

 

たっぷりと予算のかかったド派手な大舞台で…

 

 

僕もそんな日が来ることを願ってます、マーティン…

 

 

007映画とちゃうんやで…そんな日は永遠に訪れへんやろ…

 

 

では…私はこのへんでお暇させてもらう…

 

スキヤキの後片付けは、君たちに任せるとしよう…

 

料理に限らず、後始末が苦手なもので…

 

すまんな…

 

 

いいんです…気にしないで…

 

あなたはゲストで、僕らはホストなんですから…

 

 

しかし、惜しい…

 

君ほどの男が、なぜこんなところでくすぶっているのだ…

 

君なら世界中のどんな機密情報でも深読みして盗めるというのに…

 

いくらでも稼げるぞ…

 

 

僕は国家とか民族とか、くだらないスポンサーのために、深読みしたくはないんです。

 

 

な、なんだと…?

 

 

カッコいいとは、こういうことさ!

 

 

47歳という年でまだそんなキレイゴトを言えるとは…

 

だがそれが君の本心のようだな…

 

 

そうよ!教官はそういう人なの!

 

不器用だけど…真っすぐで…

 

私たちみたいに深読みで何かを盗むような人じゃないのよ!

 

 

それはどうかな…?

 

おかえもん君は、とんでもないものを盗んだじゃないか…

 

 

え?

 

 

ミス・ハナガサ…

 

君の心を…

 

 

はい?

 

 

では、さらばだ諸君!

 

へいカール!カーーーーール!

 

 

長嶋茂雄か。

 

 

 

 

ワン!

 

 

 

うわ!?なんだこの黒犬!?

 

どっから入って来たんだよ!?

 

 

 

坊やたち、俺のように薄汚れちゃいけないぞ…

 

困ったことがあったらいつでも言うんだ…

 

オジサンは地球の裏側からだってすぐ飛んで来てやるからな…

 

それでは達者でな!

 

サイナラー…サイナラー…

 

 

 

 

 

 

 

行ってしまった…

 

 

なんて気色悪いオッサンだろう…

 

 

あいつ…ホンマにまた来そうやな…

 

せやけど花笠君…

 

お前あいつをずっと昔から知っとったんやろ?

 

気になる発言がいくつかあったような気がするんやけど、あいつとなんかあったんか?

 

 

あるわけ…ないでしょ…

 

 

そういえば、マーティンは「おかえもんが心を盗んだ」とか言ってたけど…

 

何のことだったんだろう?

 

 

 

ガタガタ…ガタガタ…

 

 

え!?なんでここで《深詠み》!?

 

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタ…

 

 

 

 

ピタッ

 

 

 

また意味深な歌を!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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