「One for My Baby(and One More for the Road)」中篇〜ジョニー・マーサー徹底解剖11

  • 2018.11.11 Sunday
  • 13:42

 

 

 

 

 

 

さて前回に引き続き、ジョニー・マーサーの名曲『One for My Baby』が最初に歌われた映画『The Sky's the Limit』(邦題:青空に踊る)を見ていきながら、この歌が「何を意図して作られたのか?」を探っていこう。

 

フレッド・アステア演じるFred Atwillは、極東アジアの伝説的飛行部隊フライング・タイガーの「スーパー・エース」として名を挙げた国民的英雄だ。

 

久しぶりに一時帰国したにもかかわらず、同僚二人と共に軍当局による戦意高揚キャンペーンツアーに駆り出されてしまうが、「客寄せパンダ」にされることを嫌って列車から逃走。

 

ヒッチハイクでニューヨーク入りし、偶然見かけた雑誌カメラマンのJoan Manionに一目惚れしてしまう。

 

彼女の「夜のバイト先」であるナイトクラブにも付いて行き、帰り道に晩御飯を一緒に食べ、Fred Burtonという偽名を名乗り、そのまま彼女を家まで送り、翌朝なぜか彼女のアパートメントのキッチンでFredが朝食を作ってたところまで話したね。

 

『One for My Baby』前篇

 

 

映画の元ネタになっとる「イエスの最後の1週間」やと、日曜にエルサレム入城したイエスはエルサレム神殿を訪れ、その夜は郊外にあるベタニア村のマルタとマリアの家に泊まった。

 

 

FredがJoanの朝食を作っていたのは、ベタニア村のマリアが元ネタだね。

 

Joanの苗字はManionで、彼女には「Marion(マリア)」が投影されている。

 

ベタニアのマリアは、料理の手伝いをしないことで姉のマルタに怒られていた(笑)

 

そして二日目の「月曜日」は「宮清め」だったよね、トラちゃん…

 

ん?

 

トラちゃんことシナ虎之助さんの姿が見えないな。

 

どこ行っちゃったんだろう?

 

 

すまんすまん。

 

やっぱりジョニー正男を呼ぼうと思って電話してたんだが、あいつ、出やしねえんだ…

 

どうせまたディズニーランドにでも行ってるんだろうけどよ…

 

 

だから呼ばなくていいって!

 

 

前回この映画が「イエスの最後の1週間をベースにして作られている」と解説したんだけど、よくよくストーリーをチェックしてみたら「最後の五日間」だった。

 

つまり「エルサレムに入城した日曜から十字架で死ぬ金曜」までってことだ。

 

映画の中で晩餐会が「二度」登場するので、ちょっと混乱してしまったんだよね…

 

わかりやすくするために両者の対応表を作っておいたよ。

 

 

 

ご苦労様。確かに筋がそっくりだな。

 

バーで『One for My Baby』が歌われるのは、木曜の深夜ってことか。

 

 

つまり「ゲッセマネの祈り」にあたるわけだ。

 

 

ですね。

 

この『One for My Baby』という歌は、歌詞の中で時間が「三時頃」としか言及されないので、「ゲッセマネの祈り(午前3時)」にも「十字架での死(午後3時)」にもとれる。

 

本当にうまく出来た歌だ…

 

さて、月曜の朝にFredがJoanのアパートメントのキッチンに居たのには、彼が夜のうちにアパートの別の部屋を借りていたからだった。

 

仕事もしてないプータローなのに部屋を借りるお金があることに疑問を感じつつも、JoanはFredに説教をする。

 

もっと愛国心をもち、真面目に仕事をして社会に貢献しなさい、とね。

 

まさか相手がアメリカ軍きっての英雄だとは知らずに(笑)

 

 

「イエスがモデルの男に対し、仕事もしないで毎日フラフラしてると女が説教する」って構図は、ジョニー・マーサーの最初のヒット曲『LAZYBONES』と一緒だね。

 

Johnny Mercer『LAZYBONES』徹底解説

 

 

だね。きっと欧米では定番の喩えなんだろう。

 

さて、Joanが出勤した後に何もすることのないFredは、彼女の仕事先にやってきてディナーデートを申し込む始末。

 

Joanは「明日うちのボスと面接するならOKよ」と答え、その夜は慰問活動のために軍人クラブへ向かった。

 

JoanとFredが軍人クラブで歌い踊っていると、運悪くFredが一緒にツアーを回っていたフライング・タイガーの同僚二人が現れ、その美人(Joan)を譲れと言ってくる。

 

Fredが拒むと二人は「彼女にお前の正体をバラすぞ」と脅し、恥をかかせるためにFredをテーブルの上で躍らせ、会場が騒然と…

 

 

 

テーブルをひっくり返すんじゃなくて、上で踊ってしまったのか!

 

とんだ「宮清め」だな(笑)

 

 

そして火曜日。JoanのボスPhil Harriman氏との面接の日だ。

 

Phil Harriman(ロバート・ベンチリー)

 

ちなみに「Harriman」という名前は「Harry man」のことで、「harry」は「悩ませる・苦しめる」という意味なんだ。

 

そして「Phil」とはギリシャ語で「愛する」という意味。

 

「Phil Harriman」で「愛する人を苦しませる人」という意味になっていて、これは部下のJoanにしつこく求愛していることを指している。

 

 

今風に言えばパワハラ&セクハラだね(笑)

 

 

さて、面接でHarriman氏は、仕事の話ではなくJoanのことばかり聞いてくる。

 

さらには「二年もプロポーズし続けているけどOKしてくれない」と悩みを打ち明け、どうしたらいいかとFredに相談までしてきた。

 

Fredは戦闘機乗り。金曜日には戦地へと旅立ち、再び生きて帰れるかは知れぬ身。Joanとのことは最初から「束の間の遊び」のつもりだった。

 

だから「そんな自分よりも出版社オーナーのHarriman氏のほうがJoanを幸せに出来る」とFredは考えた。

 

そこでFredはHarriman氏の求婚が成功するように作戦を練る。

 

そして今夜約束していたディナーデートを、Joanに内緒でHarriman氏に譲ることを思いつく。

 

Harriman氏の住むテラス付き高級ペントハウスで、ロマンチックなディナーをセッティングしてあげれば、さすがのJoanもイチコロだと考えたんだね…

 

 

しかしFredがHarriman家の執事とスペシャルディナーの準備をしてる頃、Harriman氏はJoanがFredを愛していることを知ってしまい、今夜の作戦のことをJoanにバラしてしまった…

 

そしてディナーの準備を終えたFredが、さあ自分は御役御免で消えるとしよう…と玄関へ向かうと、なぜかJoanが予定時間よりも早く1人で現れて、Fredに積極的にアピールし始める…

 

「ここはHarriman氏の家だよ…」とFredはビビるが、Joanは全くお構いなし。Harriman氏は来ないことを知っているからだ。

 

結局FredはJoanの押しに負けて、ついに二人はテラスで「愛のダンス」を踊った…

 

 

 

主人の留守中にゲストがディナーの準備をしてて、そこに女が急に現れて、驚くゲストに迫って、テラスで愛のダンスを踊る…?

 

どっかで聞いたようなシチュエーションだな。

 

 

カズオ・イシグロの『Nocturnes(夜想曲集)』第2話「Come Rain or Come Shine(降っても晴れても)」だね。

 

 

あの話のラストシーンが、まさにそのシチュエーションだった。

 

しかもどちらの作品でも「6月の出来事」なんだよね。イエスの十字架刑というテーマを扱っているのに。

 

だからイシグロは踊る時の曲を『パリの四月』にしたわけだ。

 

イエスが死んだ「パレスチナの4月」を想起させるためにね。

 

 

なるほど。

 

 

ジョニー・マーサーの大ファンであるカズオ・イシグロは、ジョニー・マーサー関連のネタを小説の中に散りばめていたんだ。

 

この決して有名とは言えない映画『The Sky's the Limit』のネタもね。

 

そもそも表題の『Come Rain or Come Shine』がジョニー・マーサーの代表曲なんだから、もっとこれに早く気付くべきだった…

 

 

あの解説シリーズは短編5話のうち第3話目で中断したままだぞ。早く再開させろ!

 

「Astaire(アステア)? A satire(風刺)?」

カズオ・イシグロ『夜想曲集』徹底解剖

 

 

2019年の抱負は、これを終わらせることだね。

 

 

あとクリストファー・ノーランとイサク・ディネーセンもな!

 

まだ他にもあったような気がするけど、とにかく中断してるやつを完成させろ!

 

 

何の話をしてるんだ?

 

 

すみません、こっちの話でして…お恥ずかしい…

 

では解説を進めましょう。

 

テラスでのダンスで愛は燃え上がったけど、プロポーズには煮え切らない態度を示すFredに対し、Joanは「無職であることを気にしているに違いない」と勘違いしてしまう。

 

そしてFredにどんな仕事に興味があるか尋ね、Fredは「飛行機…」と答える。

 

幸運にも、ちょうど木曜の夜に航空王Sloan氏の晩餐会が開催されるので、JoanはそこにFredを連れて行って、Sloan氏に雇ってもらおうと考えた。

 

だけど金曜には再び戦場へ飛び立たなくてならないFredは複雑な心境だ。

 

せっかくJoanとHarriman氏をくっつけて自分は去ろうと思っていたのに、事態はどんどん悪化する一方…

 

 

いよいよ最後の晩餐だ!

 

 

ちゃんと座る位置も合っとるし、明日旅立つ主人公が憂鬱な顔をしとるのも一緒や…

 

 

 

最も愛された弟子ヨハネを困らせているペテロがHarriman氏だったんだな(笑)

 

 

Fredが浮かない顔をしているのも無理はなかった…

 

この晩餐会は、Sloan社が開発した最新鋭高速爆撃機のお披露目会の場でもあったんだ…

 

大量の爆弾を搭載し、地上を広範囲に無差別爆撃できるタイプのね…

 

 

 

Fredは『紅の豚』のポルコ・ロッソのような昔気質の戦闘機乗りで、飛行機は人殺しの道具ではないと考えておったんや…

 

 

 

だから飛行艇乗りは誇り高い人たちなんだって、おじいちゃんが言ってた…

 

 

俺たちのフィオを汚すな!

 

 

失礼。

 

Fredは次第に苛立ちを隠せなくなってしまい、ついにSloan氏に面と向かってSloan社の飛行機をディスり、氏を激怒させてしまう…

 

FredはHarriman氏とJoanと共に晩餐会会場をあとにし、三人は「反省会」を兼ねてHarriman氏行きつけのバーへと向かった…

 

 

やっと「ゲッセマネの祈り」に辿り着いたぞ!

 

 

しかも「Fred(イエス)・Joan(ヨハネ)・Harriman(ペトロ)」という組み合わせもバッチリや。

 

欲を言えば、もうひとり(ヤコブ)おったら完璧やったけどな。

 

『ゲッセマネの祈り』ジョルジョ・ヴァザーリ

 

 

「なぜ晩餐会であんなことをしたのか?」とJoanが問い詰めても、Fredは答えようとしない。

 

せっかく結婚のために就職させようと努力したのに踏みにじられてしまったJoanは「もう寝る!」と帰ってしまった。

 

 

それでOK。寝るのが正解(笑)

 

 

そしてHarriman氏は、Fredが名乗っている「Fred Burton」が偽名で、本当は国民的英雄Fred Atwill本人であることを見抜く。

 

そしてHarriman氏も明日の仕事があるから帰って寝ると言い、Fredをひとり残してバーを去る…

 

 

よっしゃ!ペトロも寝た!

 

いよいよ《運命の杯》受け入れ問題をめぐって『One for My Baby』が始まる!

 

 

ひとり残ったFredは、悶々として杯を重ねる…

 

明日は戦場へ旅立つ日…

 

生きて再び帰って来れる保証はない…

 

だからFredは、女性を傷付けないために、愛さないと決めてた…

 

それなのに、Joanを深く愛してしまっている自分…

 

 

ジーナさんだったら、こう言うね!

 

 

 

 

マダム・ジーナと共演したかったぜ。メシと女はイタリアに限る。

 

 

「死と愛」の狭間で苦悩するFred…

 

そして気が付けば午前2時45分、閉店時間の3時間近になっていた…

 

泥酔したFredは、おもむろに歌い出す…

 

『One for My Baby(and One More for the Road)』を…

 

 

 

やっと本題だ!

 

 

ということで、続きは後篇にて。

 

 

ズコっ!

 

どんだけもったいぶるんだよ!

 

 

カッコいいとは、こういうことさ。

 

 

オチまで意味不明!

 

 

 

 

 

 

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