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    「Ol'55の時間は駆け足です」〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説3

    • 2018.10.05 Friday
    • 22:21

     

     

     

     

     

    前回はトム・ウェイツのデビュー作『クロージング・タイム』のコンセプトを理解してもらった。

     

    ということで、いよいよ1曲目『Ol'55』の歌詞の「本当の意味」を解説するよ。

     

    TOM WAITS『CLOSING TIME』

     

     

    前回を未読の方はコチラをどうぞ!

     

     

     

    まさか前置きだけで3話もかかるとはな。

     

    まあ平常運転といえば、それまでやけど。

     

     

    何事も下準備が大切なんだ。ここからはスイスイ行くよ。

     

    まずは曲を聴いてもらおう…

     

     

    よっしゃ!

     

    紅組のトップバッターは、スコットランドのソウルクイーン、メイヴ・オボイル姐さんや!

     

     

     

    パンチが効いた『Ol'55』だね。だけど白組も負けちゃいないよ。

     

    白組のトップバッターは、オーストリアのトム・ウェイツことフランク・フォルグマンだ。

     

     

     

    このオッサン、トム・ウェイツになりきっとるな。

     

    さあ、勝者は紅組か白組か?

     

    どっちや!?

     

     

    「どっちや」じゃないでしょ!

     

    何で紅白歌合戦なんだよ!

     

     

    ごめんごめん。

     

    トム・ウェイツの歌をカバーしてる人ってたくさんいるんだよ。だからひとつに絞るのが難しくてね…

     

     

    まったくいい加減にして頂戴、いいオトナなんだから…

     

    さあ解説を始めるよ!

     

    「Ol'55」とは、ライブの前フリでのトム・ウェイツ曰く「1955年型ビュイックROAD MASTER」つまり「LORD(主)MASTER(師)」のことだった。

     

    でも実はイエス・キリストを予言した「Old Testament Isaiah 55(旧約聖書イザヤ書第55章)」のことだったんだよね。

     

     

    1955年生まれで17歳のねーちゃんっちゅう意味もあったけどな。

     

     

    この『CLOSING TIME』というアルバムは、フランク・シナトラが名曲『ONE FOR MY BABY』でやったことを、トム・ウェイツがさらにスケールアップさせたもの。

     

    シナトラが描いた「イエスの磔」だけでなく、全12曲で「聖母マリアの処女懐胎」から「イエスに最も愛された弟子ヨハネが夢を見て黙示録を書く」ところまでを描いているわけだ。

     

    そして1曲目『Ol'55』は、アルバム全体を象徴するような内容になっている。

     

     

    全体を象徴?

     

     

    『Ol'55』はイエスの生涯を描いたものなんだ。

     

    神の分身が聖霊となってマリアの胎内に入り、人の子イエスとして誕生し、羊飼いや東方の三博士たちに祝福され、成長してイザヤ書で予言された救世主となり、権力者や民衆によって死刑が宣告され、ゴルゴダの丘で十字架に架けられ、天の父のもとへ帰って行く…という内容になっているんだよ。

     

     

    そんなに盛り沢山の内容なの!?

     

     

    だから最初のフレーズで、こんなエクスキューズが入るんだ。

     

    Well, my time went so quickly 

     

    「よし、僕の時間は駆け足で進むよ」

     

    つまり「自分のストーリーを駆け足で振り返る」という意味になっているんだね。

     

     

    なるほど。そうゆう意味だったのか(笑)

     

     

    そして「イエスの自分史」はこう始まる。

     

    I went lickety-splitly out to my Ol'55 

    As I pulled away slowly, feelin' so holy

    God knows I was feelin' alive

     

    僕は天の父から分離して、イエスとして肉体化されることになったんだ

    聖母マリアの胎内にゆっくりと向かった時、マジで聖なる感じがしたよ

    これぞまさしく神のみが知る「生きた心地」。なんちゃって(笑)

     

     

    この場面か!

     

    フラ・アンジェリコ『受胎告知』

     

     

    その通り。

     

    天の父から分かれた聖霊は、通常「白鳩」の姿で描かれる。

     

    この「処女とハト」というモチーフは、3曲目の『Virginia Avenue』で詳しく描かれるから、その時にじっくり解説しよう。

     

     

    あの歌に鳩なんか出て来たか?

     

     

    それが出て来るだよね、バッチリと。

     

    ところで「鳩」をラテン語やイタリア語で何て言うか知ってる?

     

     

    鳩をラテン語で?何だろう?

     

     

    サブレか?

     

     

    「columbus(コロンブス)」って言うんだ。

     

     

    ええ!?

     

    それって『ヴァージニア・アヴェニュー』に…

     

     

    おっと、ここまで。

     

    詳しくは『Virginia Avenue』の回でね(笑)

     

    さて歌詞の続きを見よう。サビの部分だ。

     

    Now the sun's comin' up, I'm ridin' with Lady Luck

     

     

    これはわかったぞ!

     

    「人の子イエスがやって来るぜ。神に選ばれし運命の乙女に乗って」だね!

     

     

    簡単だったね。

     

    じゃあ次の部分はわかるかな?

     

    Freeway cars and trucks

    Stars beginnin' to fade, And I lead the parade

     

     

    フリーウェイ…車やトラック…

     

    なんだろう?

     

     

    この「Freeway cars and trucks」は歌の中に何度も登場するんだけど、その都度「違った意味」になるんだよね。

     

    ここでは「街道を行く人々」というイメージだ。

     

    これはイエスが生まれた時に出現した星を見た「東方の三博士」のことだね。彼らは旅の途中で野営していた時、西の空に光り輝く星を見たんだ。

     

     

    彼らは星の方角へ旅を続け、ユダヤの地へ辿り着いた。

     

    そしてユダヤの王ヘロデの宮殿に招かれた際、あの星の話をした。その星は「新しいユダヤの王」の誕生を告げるものだとね。

     

    その預言を恐れたヘロデは、怪しまれないように平静を装って、三博士に赤子を探しに行くように言い伝える。無事に会えた帰りには報告に来るようにとね。

     

    ヘロデはその赤子をすぐに殺すつもりだったんだ。

     

    この部分が11曲目の『グレープフルーツ・ムーン』で詳しく描かれる。

     

    そして三博士は「星のお告げ」を見つけ出し、まるで臣下のように赤子イエスにひざまずいて拝した。

     

    ハインリッヒ・ホフマン『東方の三博士の来訪』

     

     

    その前には羊飼いたちもゾロゾロやって来たよね。

     

    神の子の誕生を祝うために行列をなして。

     

    レンブラント『羊飼いの礼拝』

     

     

    まさに

     

    And I lead the parade

    「僕はパレードを率いた」

     

    やんけ!

     

     

    だね(笑)

     

     

    だけどお祝いムードも長くは続かなかった。

     

    「新しいユダヤ人の王誕生」という預言を恐れたヘロデが、なんと、国内の2歳以下の男児を皆殺しにするという暴挙に出たんだ。

     

    東方の三博士が帰りにヘロデのところに寄らなかったんで、もうヤケクソになったんだね。

     

    生まれて早々イエスは逃亡生活に入る。父ヨセフ、母マリアと共にエジプトへ逃げるんだ。

     

    ちなみに、後にイエスを洗礼することになるヨハネも半年前に生まれていたんだけど、父である祭司ザカリアによって隠された。

     

    ザカリアは神から「ヨハネがメシアの前駆になること」を伝えられていたんで、命を懸けて守ろうとしたんだね。そしてザカリアは口を割らずに憲兵に殺されてしまう…

     

     

    さて、こんな事情があったから、サビの最後はこういう内容になったというわけだ。

     

    Just a-wish I'd stayed a little longer

    Oh Lord, let me tell you that feeling gettin' stronger

     

    もう少しこのままでいたいなあ

    そんな気分になって来ちゃったんです、天のお父さん

     

     

     

    気持ちはわかる。

     

    地上に降りて来た瞬間、いきなりファンが行列を作って「神の子!神の子!」と大スター扱いや。

     

    いくらトップアイドルでも、生まれた瞬間に握手会の行列ができる奴はおらへん。

     

    そこに浸っていたいと思うのも仕方ないやろ。

     

    せやけど「何のために地上に来たのか」を忘れたらアカンのや…

     

    人類の原罪を背負って死ぬという「使命」があるんやさかい…

     

     

    その通り。

     

    だから2番は「使命」が描かれる。まさに超「駆け足」でね。

     

    And at six in the morning, gave no warning

    I had to be on my way

     

    そして第6の時刻に、何の警告もなく

    僕は死刑になってしまった。予定通りなんだけど

     

     

    第6の時刻?

     

    朝の6時じゃないの?

     

     

    そんな朝っぱらから裁判が行われるわけないやろ。

     

    トム・ウェイツが間違ったんとちゃうか?

     

     

    なんでトム・ウェイツが間違うんだよ(笑)

     

     

    じゃあオッサンの読みがついに破綻したんや。

     

     

    やれやれ。トム・ウェイツや僕を甘く見ないでくれないかな。

     

    イエスに最も愛された弟子ヨハネが書いた『ヨハネによる福音書』によると、「第6の時刻」にイエスの死刑が確定されるんだ。

     

    当時は時間の数え方が「ローマ式」と「ユダヤ式」で違っていた。

     

    ローマ式は夜中の0時から時間を数えるんだけど、ユダヤ式は日の出から日没までを12等分するんだよ。

     

    つまり「第6の時刻」とは、朝から数えて6番目の時刻である「お昼の12時」のことなんだね。

     

     

     

    疑ってゴメンナサイ!

     

     

    そして2番はこう続く。

     

    Where there's trucks all a-passin' me,

    and the lights all a-flashin'

    I'm on my way home from your place

     

     

    また「trucks」が出て来たぞ。

     

    しかも今度は「cars」とセットじゃなくて単独だ。なんでだろう?

     

     

    違う意味だからだよ。

     

    ここの「truck」は同じ「トラック」でも「track」のことだ。

     

    駄洒落になっているんだね。

     

     

    tracks?

     

    何かが通った跡「わだち」がたくさんあるってこと?

     

     

    イエスに判決が出された後に行われたことといえば?

     

     

    ああ!十字架を背負って歩いた苦難の道!

     

     

    その通り。

     

    「there's the trucks(tracks) all a-passin' me」というのが

     

    「僕が背負い、通り過ぎていった苦難の道がある」

     

    という意味になっているんだね。

     

     

     

    「tracks」と複数形になっとるのは、まさに14の区間がある道筋「Via Dolorosa(ヴィア・ドロローサ)」のことやったんか…

     

    [Via Dolorosa] via Tango7174

     

     

    そうなんだよね。

     

    さすが「酔いどれ詩人」だけあって、トム・ウェイツの言葉遊びは天才的だ。

     

    聖なる光景が眩く光る

    僕はあなたに送り込まれた世界から

    元いた世界に帰るんだ

     

    まさにイエスの苦難の道行のことだったんだね。

     

     

     

    おそるべしトム・ウェイツ。

     

     

    そして再びサビに入る。

     

    1番の後に歌われたサビと歌詞は全く同じだけど、全く違う意味になっているんだよ。

     

    Now the sun's comin' up, I'm ridin' with Lady Luck

     

    あなたの息子が参ります。十字架と共に

     

     

    「息子が参ります」はわかる。

     

    せやけど「十字架」はどっから出て来た?

     

     

    ここは僕も悩んだんだけどね。

     

    たぶん「Lady Luck」の頭文字「LL」だろうね。

     

     

    ブラザーズ?

     

     

    なんで「LL」が十字架なの?

     

     

    片方を逆さにするとね…

     

     

    じゅ、十字架が!

     

    こんなんアリですか!?

     

     

    ありでしょ。困難だけに。

     

    さて、サビは続く…

     

    Freeway cars and trucks

    Stars beginnin' to fade, And I lead the parade

     

    汚れた言葉を吐く者も、道を受け入れる者もいる

    イエスとしての命は消えかかってきた

    そして僕はパラダイスへと導く

     

     

    こ、これは…

     

     

    イエスと一緒に磔になったゲスタスとディスマスだ!

     

    アンドレア・マンテーニャ『磔刑図』

     

     

    ここは「cars(車)」が「curse(汚れた言葉)」の駄洒落になっていると僕は読んだ。

     

    イエスに対して「お前が本物の救世主なら、自分の命を救ってみせろ」と言い放ったゲスタスのことだね。

     

    そして「trucks」は「tracks」だ。「イエスの道に従う者」だからディスマスのことだね。

     

    そしてイエスはディスマスに対し「あなたはパラダイスにいる」と告げた。

     

     

    「parade(パレード)」が「paradise(パラダイス)」やな…

     

     

    そしてサビのラスト。ここは前と同じで大丈夫。

     

    Just a-wish I'd stayed a little longer

    Oh Lord, let me tell you that feeling gettin' stronger

     

    もう少し地上世界にいたかったなあ

    そんな気分になって来たんです、天の父よ

     

     

    居られたら居られたらで色々困る事態になるんですけど…

     

     

    そして再び1番が歌われる。これが非常に効果的なんだ。

     

    Well, my time went so quickly 

    I went lickety-splitly out to my Ol'55 

     

    僕の時間は足早に過ぎてゆく

    そろそろイエスの肉体から離れて

    父なる主のもとへ行かねばならぬ

     

    As I pulled away slowly, feelin' so holy

    God knows I was feelin' alive

     

    ゆっくりと引き離され、僕は聖霊になった

    皆は僕が死んだと思ったんだけど

    実は死んではいなかったんだよね

     

     

    うまい!

     

    「God knows」が超いい仕事してる!

     

     

    そしてまたサビが歌われる。これはもう訳さなくていいね。

     

    ということで、これが本当の『Ol'55』の物語だ。

     

    デビューアルバムの1曲目を飾る歌だけあって、そうとう手の込んだ構成になっているね。トム・ウェイツの意気込みが感じられるってもんだ。

     

    さあ、次回は2曲目『I hope that I don't fall in love with you』だよ。

     

     

    たしか裏切り者「イスカリオテのユダ」の歌やったな…

     

     

    その通り。この歌も非常に面白い仕掛けが施されているよ。乞うご期待!

     

     

     

     

     

     

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