カメラを止めるな!(THREE BILLBOARDS OF THE DEAD)描かれなかった『スリー・ビルボード』の物語…最終回

  • 2019.01.27 Sunday
  • 23:19

 

 

 

 

本ブログはすべて妄想です。登場する個人・団体・作品とは一切なんの関係もありません。ちなみに『カメラを止めるな』の御鑑賞と、『スリー・ビルボード』徹底考察シリーズの読了を踏まえると、よりいっそう楽しめる内容となっております。

 

前回はコチラ

 

 

 

 

 

 

(二人組、中堅ADが座っていたメインモニターの前に座り)

 

 

っしゃ!

 

後半戦、みんな集中していこっ!

 

 

何者…?

 

 

 

(ギフトショップ)

 

(ドアの外でスタンバってる数人のスタッフ)

 

(ゾンビメイクをした目がイってる男優、監督によって店内へ押し込まれる)

 

 

ウウウ……

 

 

(監督、カメラを片手に)

 

 

アクショーーーン!

 

 

キャーーーー!

 

 

(目がイってる男優、マクドーマンドへ向かってウサギの置物を投げつける)

 

(ウサギの置物、マクドーマンドをかすめて背後で砕け散る)

 

 

あんたァ!7ドルの貸しよォォォ!

 

 

これだよこれ!これこれェェェェ!

 

 

(ハレルソン、小声で)

 

 

ゾンビが…

 

ゾンビが物を投げるなんて…

 

 

(目がイってる男優、ハレルソンに襲いかかる)

 

 

グルルル……

 

 

バケモンだけこっち!

 

 

(ハレルソン、マクドーマンドへゾンビを突き飛ばす)

 

 

おいおい!最高かよ、おい!

 

 

(目がイってる男優、カメラに入らないようにギフトショップから出る)

 

(マクドーマンド、斧を大きく振り回す)

 

(メイクが血のりをマクドーマンドへ吹きかける)

 

(新人ADが首なし人形をマクドーマンドの前に倒し、メイクが素早く血のりを撒く)

 

(マクドーマンド、人形を何度も踏みつけながら)

 

 

おらァ!バケモンがァ!

 

ファック!ファック!ファック!

 

 

そうそう、その顔ォ!

 

ビンビンだぜェェェェ!

 

こいつはヤバい映画になるぞ…

 

(ハレルソン、監督の背後から角材で殴る真似)

 

 

うあーーーー!

 

(倒れる監督)

 

 

外の車まで走るわよ!

 

この町エビングにうろついてるバケモンは全部私がぶっ殺す!

 

(マクドーマンド、ハレルソン、アンジェラの三人、外へ向かって走り出す)

 

(三人を追うカメラマン。後ろの撮影助手、すべって転ぶ)

 

 

イテ…

 

 

(駐車場、車のキーがない)

 

(アンジェラ、車のキーを持つ若者ゾンビと戦う)

 

(若者ゾンビからキーの入ったポーチを奪うが、そのまま追いかけられる)

 

(ハレルソン、監督に詰め寄る)

 

 

どうなってるんすか色々!

 

 

出番すぐです…

 

 

ゾンビは意思が無いからゾンビなんです!

 

物を掴んで投げたら、それは意思があるということに…

 

 

(横から入って来たマクドーマンド、ハレルソンの頬を思いっきりビンタ)

 

 

出番だっつってんだろが、このクソガキがァ!

 

 

ヒィ…

 

殺し屋だった親父にもぶたれたことないのに…

 

(マクドーマンド、もう一発ビンタ)

 

(倒れこむハレルソン)

 

 

聞こえねーのか!?

 

さっさと行け!ノロノロすんな!

 

(半泣きで走っていくハレルソン)

 

(監督、マクドーマンドの腕をつかむ)

 

 

あああああの…

 

大丈夫ですか?

 

 

何?

 

 

落ち着いてくださいよ…

 

 

落ち着いてるわよ私は。落ち着いてる…

 

 

て、手に持ってる、それは…?

 

 

見ればわかるでしょ…

 

一升瓶よ。

 

メイク室に転がってたから、ちょうどいいと思って…

 

 

ちょ、ちょうどいいって?

 

 

特大の火炎瓶よ。

 

これなら建物ごとバケモンを吹き飛ばせる…

 

 

か、火炎瓶ですか!?

 

あ、あの…我々は戦争ごっことかやってるわけじゃなくて…

 

 

わかってるわよ!私だって遊びじゃないんだから!

 

これでマザーファッカーどもを、ぶちのめしてやる!

 

 

・・・・・

 

 

(モニター室)

 

(マクドーマンドの芝居を見て、興奮しているスタッフ一同)

 

 

すごいね、さすがオスカー女優。

 

 

うちらも生で見るのは久しぶりw

 

 

どうやったら、こんな鬼気迫る芝居ができるんだろう…

 

最初の挨拶の時とは別人のようだ…

 

 

役に入りこむと我を忘れちゃうみたいで…

 

 

え?

 

 

台本無視とか、しょっちゅうで…

 

昔、サスペンス映画で夫役の俳優ダン・ヘダヤの股間を思いっきり蹴飛ばしてしまって病院送りにしてしまい、一週間撮影が延期されたことも…

 

 

 

・・・・・

 

 

でもその迫真の演技のおかげで、映画はインディーズながら大ヒットしたという(笑)

 

役者っすよねェ!

 

 

それ演技って呼ばないでしょ…

 

大丈夫?

 

 

 

(外の道路脇)

 

(ゾンビから逃げて来たマクドーマンド、禿男優、女優の三人)

 

(女優、足首の傷を見つけて慌てて隠す)

 

 

ハッ…

 

(それを見ていたマクドーマンド、目が完全に据わっている)

 

 

大丈夫。わかってる。念のためよ…

 

 

フランシス!落ち着いて!

 

 

落ち着いてるわよ私は。落ち着いてる…

 

(ライターをカチカチ鳴らし、一升瓶の火炎瓶に火をつける素振りで女優に近付いてゆく)

 

(女優、横でスタンバってる監督に目線で指示を求める)

 

 

??????

 

(監督、叫び声をあげて逃げろと指示)

 

 

ニゲロ、ニゲロ…!

 

 

キャーーーー!

 

(マクドーマンド、止めに入った禿男優と監督を軽く一蹴し、女優を追いかける)

 

 

待てェ!バケモン!

 

 

(モニター室)

 

 

台本、無視してます!監督!

 

 

(二人組、モニター室を飛び出す)

 

(監督、トランシーバーで答える)

 

 

ゾンビに止めさせろ!

 

 

(マクドーマンド、ゾンビ2体を軽く一蹴)

 

(止めに入った監督、マクドーマンドに股間を強打される)

 

(女優、道路沿いに立つ三枚の広告看板へ辿り着き、看板の梯子を登る)

 

(マクドーマンド、女優を追って看板に登ろうとする)

 

(それを止めようとする禿男優、監督、二人組)

 

(監督、カメラマンに「女優の叫ぶところを撮り続けろ」と指示)

 

 

キャーーーー!キャーーーー!キャーーーー!

 

 

(マクドーマンド、禿男優を突き飛ばす)

 

(禿男優、スタッフに衝突し、ポリタンクが倒れてガソリンが地面に流れる)

 

(監督と二人組、マクドーマンドを絞め落とす)

 

(メイク、猛ダッシュでマクドーマンドに特殊メイク)

 

 

どうだ!この野郎!どうだ!

 

 

(モニター室)

 

 

戻った。

 

 

(監督、息を切らしながら入ってくる)

 

 

ガソリンが使えない…

 

 

え!?

 

 

ラストシーン、変えましょう!

 

 

スリー・ビルボードを燃やさなきゃダメなんですよ…

 

 

なんで?

 

 

血で赤く染まった看板を燃やさないと…

 

オチですよ…

 

 

オチ?

 

 

「血に塗られし3枚の墓標が炎に包まれる時、死者の呪いは解かれる…」

 

古来から伝わる伝承です!ちゃんと読んどいてくださいよ!

 

 

んー。捨てましょう、それ。

 

 

待ってください!

 

 

待てません。

 

 

この作品にはその絵が必要なんですよ…

 

 

そこまで見てないですって(笑)

 

 

(監督、床に台本を叩きつけ)

 

 

見てるでしょうが!

 

 

・・・誰が?

 

 

・・・・・

 

すいません…取り乱しました。

 

 

マーティン、作品の前のパイロット版なんです。

 

無事終わらせてください。そこそこでいいですから。

 

 

わっ……かりました!

 

おっしゃ、燃える看板なし!

 

生き延びた女優が車に乗って去って行くところにエンドロール!

 

よし、これで行こう!カメラさんにカンペで伝えてきて!

 

 

はい。

 

 

待った!

 

今動けるのって何人いる!?

 

 

 

 

 

 

 

(無事に撮影が終了…)

 

 

 

 

 

 

(20世紀FOX中継室)

 

 

始まる前はどうなるか思いましたけど、本番はトラブルもなく、ホンマに良かったです。

 

ありがとうございました!

 

(社員たち、一杯行きましょうのジェスチャー)

 

来年のアカデミー賞レースは、うちのゾンビと半魚人の一騎打ちや。

 

これから忙しなるよ。頼むよ。

 

 

 

(スリー・ビルボード前)

 

(出演者・スタッフ一同、倒れこんだまま清々しい笑顔)

 

(二人組、監督に何かを差し出す)

 

 

 

 

チェーホフ…?

 

 

噂によると、ギレルモ・デル・トロは半魚人でオスカーを取りに行くという…

 

そうなると、ありきたりのゾンビでは分が悪い。

 

同じ「死者の蘇り」を扱うにしても、ひねりの効いた手法で攻める必要がある。

 

もし君が本気でオスカーを狙いに行くつもりなら、この本を読むといい…

 

多くのヒントを得られるはずだ…

 

 

は、はい…

 

ジョエル…イーサン…

 

 

何やってんすか?

 

さあ、打ち上げ行きましょう!打ち上げ!

 

今日はママにも遅くなるって言ってあるんだ!

 

 

 

(『THREE BILLBOARDS OF THE DEAD』打ち上げ)

 

 

よっしゃ!次はカラオケ行くぞ、カラオケ!

 

二次会の店、誰か探せ!

 

 

20名で予約取れました!すぐ近くの店です!

 

 

カラオケッ!カラオケッ!

 

 

・・・・・

 

 

(カラオケBOX、大部屋)

 

 

 

Oh baby give me one more chance〜♬ 

 

 

監督、どうしたんすか?

 

一次会でも全然飲んでなかったし…

 

 

ちょっとね…急に疲れが出たのかな…

 

しばらく隣の部屋で休んでいるよ…

 

君たちは気にせずパーッと盛り上がっててくれ…

 

 

了解っす。

 

 

(監督、大部屋を出て隣の空いている小部屋に入り、二人組に渡されたチェーホフの本を読み始める)

 

 

いったいどんなヒントがこの本の中に…

 

 

 

(大部屋。カラオケ店の従業員が入ってくる)

 

 

ドリンクお持ちしました〜。

 

 

来た来た!はい、あんたの!

 

 

あ、はい。どうも。

 

 

マスカットサワーの方?

 

 

ハ、ハイ…

 

 

ルーカス君かわいいw

 

なんで赤くなってんの〜?

 

 

べ、別に…

 

 

お姉さん超美人〜。モデルさんとかですか?

 

 

もう、やめてください(笑)

 

昼間は某政府機関で働いてるんだけど、このところの予算削減で給料がカットされちゃって…

 

だからこうして夜もバイトをしてるってわけ。

 

 

スカウトしちゃおうかな〜

 

 

お姉さん、なんか歌も超うまそう。

 

一曲歌っていって!ね!?

 

 

賛成っす!

 

自分もお姉さんの唄、聴きたいっす!

 

 

もう…

 

困ります、そういうの…

 

じゃあ1曲だけですよ。

 

 

いいねえ、そのノリ(笑)

 

何番?

 

 

えーと…

 

これお願いします。

 

 

ん?日本語の歌?

 

 

はい…わたし日本人なんです。

 

だから日本の歌で私が一番好きなものを皆さんにぜひ聞いてほしくて…

 

 

いいぞ!ネエチャン!

 

 

では歌います。

 

『あなたのキスを数えましょう』…

 

 

 

 

キュン…

 

 

すごーい!お姉さんプロ並み!

 

 

マジヤベエ…チョーナケル…

 

 

オスカー・ワイルドか…

 

 

なに言うてますの?

 

 

何を歌っているのかはわからなかったけど、胸がこうギュッと締め付けられるようだったよ。

 

恋人のことでも思いながら歌ったのかい?

 

 

か、彼氏とかいるんですか!?

 

 

残念ながら、いないですよ(笑)

 

 

ホッ…

 

 

でも好きな人はいました…

 

遠い、海の向こうに…

 

 

遠距離か…切ねえな…

 

 

姉さん、もう1曲聞かせてよ。あんたの歌、好きだよ。

 

 

御免さない…今夜はもう上がりなの…

 

急いで次のバイト先へ行かなきゃ…

 

今夜は掛け持ちで…

 

 

それは仕方ないな。すまん、引き留めて。

 

 

いえいえ、いいんです。

 

では皆さん、引き続き当店で楽しんでいってください。

 

 

 

 

(2時間後)

 

 

よっしゃー。三次会いくぞー

 

オラオラー

 

 

キャーーーー!

 

 

ん?そういえば監督の姿がずっと見えなかったけど…

 

 

あ、忘れてた。

 

隣の部屋、見てきます!

 

 

(中堅AD、隣の小部屋へ移動)

 

監督!大丈夫ですか!?三次会行きますよ!

 

 

あ…そうですか…

 

 

ずっと本なんか読んでたんすか?

 

 

読み始めたら止まらなくなってね…

 

さて、戻ろうか…

 

 

(大部屋)

 

 

監督、どこ行ってたんすか?次は三次会っすよ!

 

 

すまんすまん…

 

そういや、途中で日本語の歌が聴こえたんだが…

 

誰か日本語できる人いるの?

 

 

この店のバイトのお姉さんですよ。

 

ちょー歌うまかった。

 

 

すごく印象的な歌だったな…

 

キスがどうのこうのって歌詞の…

 

 

これですよ。英語版もあります。

 

 

えー!わたし歌っちゃおう!

 

 

 

・・・・・

 

 

どしたの?

 

 

いえ…なんでも…

 

 

フフフ…

 

 

さあ行くぞ、三次会!

 

今夜はオールだ!

 

 

えー

 

 

お前ら、どうせ帰っても男が待ってるわけじゃねえだろ!

 

 

古沢さん、ひどーい!

 

 

今夜は飲み続ける!打ち上げは止めない!

 

 

 

 

 

 

『スリー・ビルボード』

徹底考察エピローグ編へ続く

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

カメラを止めるな!(THREE BILLBOARDS OF THE DEAD)描かれなかった『スリー・ビルボード』の物語…第3話

  • 2019.01.27 Sunday
  • 09:40

 

 

 

本ブログはすべて妄想です。登場する個人・団体・作品とは一切なんの関係もありません。ちなみに『カメラを止めるな』の御鑑賞と、『スリー・ビルボード』徹底考察シリーズの読了を踏まえると、よりいっそう楽しめる内容となっております。

 

前回はコチラ

 

 

 

 

 

 

 

(馬小屋の横にあるモニター室)

 

(フランシス・マクドーマンドの親族らしき二人組、勝手に入りこんで、そわそわしながらモニターを覗いている)

 

 

ドキドキ…ドキドキ…

 

 

(トランシーバーでカウントダウンを始める中堅AD)

 

 

本番10秒前。

 

9、8、7…

 

 

(馬小屋内の新人AD)

 

 

6、5、4、3、2…

 

(新人AD、監督にキューを出す)

 

(監督、大きく息を吐く)

 

 

フーーー。

 

 

(撮影始まる)

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

 

(20世紀FOXの中継室)

 

(たくさんあるモニターの1つにウディ・ハレルソンが映る)

 

(中継映像を見ている重役ツル子と社員数人)

 

 

よっしゃ。いこいこ。頼むでぇ!

 

 

 

(監督、ふんだんにアドリブを入れて熱演)

 

(本当に涙を流している女優の顔が中継映像で映される)

 

 

・・・・・

 

 

(映画会社社員、女優に感心しながら)

 

 

いい表情しますね。

 

 

せやろ?この子、芝居に嘘がないねん。

 

 

 

(モニター室。監督、入ってくる)

 

(プロデューサー、サムアップしながら)

 

 

監督、グー!

 

 

すいません…つい熱が入っちゃいまして…

 

 

(マクドーマンドの親族らしき二人、身を乗り出してモニターを見ている)

 

 

オオ…オオ…

 

 

(監督、それをやめさせる)

 

 

お願いですから…

 

絶対に邪魔しないでください…

 

 

(二人組、不満そうに後ろへ下がり、台本を読み始める)

 

 

・・・・・

 

 

 

(監督とスタッフ一同、数々のトラブルに見舞われながらも、何とか撮影を進めてゆく)

 

(馬小屋の中、監督が死者蘇りの説明をするシーン)

 

 

(マクドーマンド、激しく動揺して崩れ落ちながら)

 

そんな…

 

あの噂が本当だったなんてーーー!

 

 

ちょっと!何の話してるんですか?

 

 

あれはちょうど1年前の夏…

 

目眩のするようなクソ暑い日だった!

 

俺は部屋に籠ってこの台本をひたすら書いていた!

 

そんなある日ネットに転がっていた妙な噂を…

 

 

(目のイってる男優が、監督の背後で扉にゆっくりと向かう)

 

 

・・・・・

 

 

(監督、扉の前に立って進路を塞ぐ)

 

 

ちょ…おい…どこに行く!?

 

 

ちょっと…

 

 

ちょっと?

 

待て待て待て待て…

 

「ちょっと」って何だ!?

 

 

ちょっと…

 

 

ハァ!?

 

 

(モニター室)

 

 

こんな場面あった?

 

 

(中堅AD、吐き捨てるように)

 

 

ありませんよ。なんだ?

 

 

(モニター画像)

 

 

そ、外にはねぇ…

 

ほら!バケモンが!

 

 

そうですよ!

 

今出たら…あの…

 

危ないっすよ!絶対。

 

 

(中堅AD、台本と見比べながら)

 

 

アドリブでつないでる。

 

 

そういう場面じゃなくて?

 

 

じゃなくて。

 

 

 

(モニター画像)

 

 

何だよ!急にどうしたんだよ!?

 

「ちょっと」って何だよ!?

 

 

(目のイってる男優、監督を突き飛ばす)

 

(モニター室の音効マン)

 

 

あかんやろ。あかんやろ…

 

 

(モニター画像)

 

 

ちょっとはちょっとだーーーー!

 

 

(目のイってる男優、監督を振り払い、外へ出る)

 

 

ブレンダン・セクストン3世!

 

 

 

 

本名、言うてもうたやん。

 

(中堅AD、トランシーバーで叫ぶ)

 

 

止めて!

 

 

 

(目のイってる男優の叫び声)

 

わー!ヤバいヤバいヤバいヤバい…

 

離して!

 

離せ!離せーーーー……

 

 

(20世紀FOX中継室)

 

 

また一人やられたで。盛り上がってきたねぇ。

 

 

(モニター室、焦るプロデューサー)

 

 

絵、準備してある?

 

 

はい。

 

(モニター画面、バラの絵と「しばらくお待ちください」の文字)

 

 

 

(マクドーマンドの親族らしき二人組、急いで台本をめくっている)

 

 

 

(モニター画像、監督がアップで)

 

 

撮影は続ける!カメラは止めない!

 

 

 

めっちゃカメラ目線やん…

 

 

(馬小屋の外)

 

(スタッフに羽交い絞めにされるブレンダン・セクストン3世に監督が詰め寄る)

 

 

ブレンダン・セクストン3世、どうしたんですか急に?

 

 

出ちゃう出ちゃう出ちゃう…

 

 

何が?

 

 

うんち。

 

 

(モニター室)

 

(中堅AD、脱力して椅子に落ちる)

 

 

放送事故になります。

 

 

(モニター画像)

 

(オロオロしながら同じ話を繰り返す三人)

 

 

ケガはないですか…?

 

うん、大丈夫…

 

あんたは?

 

 

 

怪我ないかずっと聞きあってます…

 

 

ブレンダン・セクストン3世抜きで続けらんない?

 

 

(中堅AD、立ち上がってプロデューサーを睨みながら)

 

 

話がつながりません!

 

 

(プロデューサー、オロオロしながら)

 

 

いったん…止めましょう…

 

 

(悔しそうに頷く中堅AD)

 

(差し替え画像に切り替えようとPCに手を伸ばす音効マン)

 

(マクドーマンドの親族らしき二人組、その手を掴んで放り投げる)

 

(二人組、台本を手に中堅ADへ)

 

 

 

ブレンダン・セクストン3世をゾンビにしてギフトショップへ戻せば14ページ7行目に戻せる!

 

 

え?

 

 

OLD CUNT!

 

(二人組、中堅ADの帽子を払い飛ばす)

 

ここ15ページ15行目!ここから16ページ11行目!ここ!

 

ギフトショップまで進めさせて!

 

時間ないよ、OLD CUNT!

 

 

どこ?

 

 

ここ!11行目、ここだよ…

 

ここだってば!

 

(二人組、音効マンの手をピシャリと叩く)

 

(中堅AD、台本を見ながら)

 

 

ひとまずは…

 

 

オッケー!

 

(二人組、呆然としているプロデューサーに詰め寄り)

 

おっちゃん、判断!

 

 

は…

 

(二人組、何が何だかわかっていないプロデューサーを叩きながら)

 

 

早く判断!

 

 

ん、じゃあ…それでいきましょう…

 

 

オッケー!

 

カンペ出そう、OLD CUNT!

 

 

 

(モニター画像、馬小屋内)

 

(アドリブでまだケガの話を続けているマクドーマンド)

 

 

ケガがないってことは、本当にいいことよ…

 

ねぇ…

 

 

(何かに気付いてゆっくりとカメラの方を見る三人)

 

 

・・・・・

 

 

(扉の外から新人ADがカンペを出している)

 

「携帯うろうろ 〜 何が起こってるんですか?まで進めて!」

 

(カメラマン、カンペをめくる)

 

「セクストンさん、ゾンビにしてギフトショップに戻します」

 

 

(状況を必死に考えながら後退りする三人)

 

 

 

(モニター室)

 

(慌てている中堅AD)

 

 

首どこやった?首首!ブレンダン・セクストン3世の首!

 

首知らない?ちょっと見つけて!

 

 

(二人組、奥の死体置き場で首を見つける)

 

 

うあ゛!

 

OLD CUNT!OLD CUNT!

 

 

あった!?はい、渡せ!

 

(二人組、首を中堅ADへ勢いよく投げる)

 

(キャッチできずによろける中堅AD)

 

(早く行けとシッシッする二人組)

 

(若いADが勢いよくモニター室へ入ってくる)

 

 

若いAD「ロックウェルさんが来てないんすけど知らないすか?」

 

 

(二人組、死体置き場で寝ていたロックウェルの頬をペシペシ)

 

 

刈上げとっちゃん坊や!シャキッとして!

 

君!君!あと任せた!

 

(二人組、中堅ADが座っていたメインモニターの前に座り)

 

っしゃ!

 

後半戦、みんな集中していこっ!

 

 

何者…?

 

 

 

つづく

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

カメラを止めるな!(THREE BILLBOARDS OF THE DEAD)描かれなかった『スリー・ビルボード』の物語…第2話

  • 2019.01.25 Friday
  • 12:40

 

 

 

 

本ブログはすべて妄想です。登場する個人・団体・作品とは一切なんの関係もありません。ちなみに『カメラを止めるな』の御鑑賞と、『スリー・ビルボード』徹底考察シリーズの読了を踏まえると、よりいっそう楽しめる内容となっております。

 

前篇はコチラ

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、これって…

 

 

嘘だろ。

 

 

(若い男優のもげた腕を持ちながら)

 

まさか…

 

そんなワケないわよ…

 

ありえないわよ、そんな事…

 

 

 

(マクドーマンドの背後から若い男優が襲いかかる)

 

 

ウガァーーーー!

 

 

キャーーーーーー!

 

 

(若い男優、もげた腕を持っているマクドーマンドを追いかける)

 

 

ウガァーーーー!

 

 

キャーーーー!

 

(マクドーマンド、持っていた腕を放り投げる)

 

(もげた腕を女優がキャッチ)

 

(若い男優、女優に迫っていく)

 

 

ウガァーーーー!

 

 

キャーーーー!

 

(女優が腕を放り投げ、禿男優がキャッチ)

 

 

お!?おわーーー!

 

(若い男優は禿男優を迫っていく)

 

 

ウガァーーーー!

 

(禿男優、もげた腕を持って、若い男優を馬小屋の出入口まで誘導し、腕を外に放り投げる)

 

(若い男優、腕を追って外へ出ていく)

 

(禿男優、扉を閉め、鍵をかける)

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

(外から扉が叩かれる)

 

 

ドンドンドン!

 

 

 

ハア…ハア…

 

(女優、気配を感じて振り返る)

 

(監督が女優にカメラを向けている)

 

 

・・・・・

 

 

監督…?

 

 

何やってんすか!?

 

 

何って、撮影だよ!

 

(馬小屋の中を逃げる女優。追いかけようとする監督)

 

(禿男優、背後から監督の肩を掴んで)

 

 

あんた状況わかってんのかよ!?

 

(禿男優、監督に振り払われてよろける)

 

おい!

 

(逃げる女優、監督に追い詰められて)

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

これが映画だよ!これが映画だよ!

 

 

イカレてるって!

 

 

これが映画なんだよ!!!

 

 

やめろ!

 

(禿男優、監督に掴みかかる)

 

(監督、禿男優を突き飛ばす)

 

(マクドーマンド、倒れた禿男優のもとへ)

 

 

あァーーーー!

 

 

見てみろよ!嘘がひとつもない!

 

本物だよ本物ォォォォォ!!!

 

 

(監督、女優にカメラを向ける)

 

 

ヒィ…

 

 

撮影は続けるぞ…!

 

カメラは止めない!!!

 

 

 

ねぇ…

 

あんた、まさか…

 

 

(外を指差しながら)

 

その「まさか」だよ!

 

ガソリンはもう撒き終わった…

 

 

ガソリン?

 

 

(激しく動揺して崩れ落ちながら)

 

そんな…

 

あの噂が本当だったなんてーーー!

 

 

ちょっと!何の話してるんですか?

 

 

あれはちょうど1年前の夏…

 

目眩のするようなクソ暑い日だった!

 

俺は部屋に籠ってこの台本をひたすら書いていた!

 

そんなある日ネットに転がっていた妙な噂を…

 

 

(目のイってる男優が、監督の背後で扉にゆっくりと向かう)

 

 

・・・・・

 

 

(監督、扉の前に立って進路を塞ぐ)

 

 

ちょ…おい…どこに行く!?

 

 

ちょっと…

 

 

ちょっと?

 

待て待て待て待て…

 

「ちょっと」って何だ!?

 

 

ちょっと…

 

 

ハァ!?

 

 

すぐ戻るんで…

 

 

そ、外にはねぇ…

 

ほら!バケモンが!

 

 

そうですよ!

 

今出たら…あの…

 

危ないっすよ!絶対。

 

 

いや…

 

 

何だよ!急にどうしたんだよ!?

 

「ちょっと」って何だよ!?

 

 

(目のイってる男優、監督を突き飛ばし、戸を開けて外に出る)

 

 

ブレンダン・セクストン3世!

 

 

 

(目のイってる男優の叫び声)

 

わー!ヤバいヤバいヤバいヤバい…

 

離して!

 

離せ!離せーーーー……

 

 

 

(叫び声のするほうを見ながら固まってる禿男優、監督、マクドーマンド、女優)

 

 

・・・・・

 

 

(禿男優、マクドーマンド、女優の三人が不安そうに監督を見つめる)

 

 

(監督、ゆっくりと馬小屋の外へ向かう。出口付近でカメラ目線)

 

 

撮影は続ける!カメラは止めない!

 

 

(啞然とする三人)

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

その30分前のこと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よろしくお願いしまーす!

 

 

 

(顔を上げたマクドーマンド、満面の笑み)

 

(隣の二人組、拍手する)

 

 

パチパチパチ!

 

 

 

(呆然とする出演者とスタッフ一同)

 

 

誰?あのオバちゃん。

 

 

え?マジ?フランシス・マクドーマンド?本物?

 

 

ゾンビ映画にオスカー女優のお出ましかよ。一気にメジャー作品じゃねえか。

 

 

隣の二人は誰?親族?

 

 

どっかで見たことがあるなァ…

 

 

(怒りに震えるハレルソン、マクドナー監督に詰め寄る)

 

 

中止すべきです。作品のためにも。

 

作品は残るんですよ…

 

 

作品の前に…興行なんです。

 

出資者や映画会社、そして劇場主に迷惑はかけられません…

 

お願いします!

 

 

(納得してないハレルソン)

 

 

興行の事はわかるんですけど、作品として…

 

 

(マクドナー監督、ハレルソンに耳打ち)

 

 

自分でもわかってると思うけど、これは君の作品なんだよ…

 

君がいないと始まらない…

 

(ハレルソンの手を両手で握りしめて)

 

必ずいい作品にするから…

 

この作品で君を絶対にオスカー俳優にしてみせるから…

 

約束する。

 

 

(二人組、こっそりそれを横で聞いている)

 

 

・・・・・

 

 

(ハレルソン、渋々納得して戻る)

 

(目のイってる男優、お腹に手を当てて歩き出す)

 

 

・・・・・

 

 

(異変に気付いたADが近づく)

 

 

どうしたんですか?

 

 

ちょっと…すぐ戻るんで…

 

 

(手首を押さえる刈上げ男優)

 

 

・・・・・

 

 

(隣にいた黒人男優が気付く)

 

 

手をどうした?ロックウェル…

 

 

(刈上げ男優、無言でどこかへ消える)

 

(監督、女優に頭を下げる)

 

 

申し訳ない。

 

 

わたしは全然。

 

でも監督が監督役ってウケる。

 

 

(監督、わざとらしく照れながら)

 

 

イヤア…

 

 

あ、遠慮せず来てくださいね。

 

監督やさしいから。ウフフフフ…

 

 

(監督、言葉を飲み込んで)

 

 

ウ……わかりました。

 

 

(上から目線の女優、笑顔で監督の腕をポンっと叩いて)

 

 

よろしくでーす。

 

 

(監督、返事が声にならない)

 

 

・・・・・

 

(監督、後ろに下がって大声で)

 

えーでは皆さん。まもなく始まります。

 

映画『THREE BILLBOARDS OF THE DEAD』パイロット版…

 

前代未聞のライブによる全世界ネット同時配信です!

 

改めて…

 

カメラは一台…ワンカット…ぶっ通しの生中継。

 

始まったらカメラは最後まで止められません!

 

(一同に深々と頭を下げ)

 

よろしくお願いします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:映画

カメラを止めるな!(THREE BILLBOARDS OF THE DEAD)描かれなかった『スリー・ビルボード』の物語…前篇

  • 2019.01.24 Thursday
  • 13:04

 

 

 

本ブログはすべて妄想です。登場する個人・団体・作品とは一切なんの関係もありません。ちなみに『カメラを止めるな』の御鑑賞と、『スリー・ビルボード』徹底考察シリーズの読了を踏まえると、よりいっそう楽しめる内容となっております。

 

 

 

 

THREE BILLBOARDS OF THE DEAD

 

シーン1

 

(典型的な南部の田舎町。郊外にあるカントリーハウスの馬小屋の中)

 

 

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

ああ…パパ…

 

もうダメ…死んじゃう…

 

止めないで…

 

お願いだから止めないで…

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

そう…そう…そう…

 

来て…来て…

 

来て!パパ!

 

 

ああーーー……

 

 

 

 

 

 

(濃厚なキス。うっとりとした表情で目隠しを取り、すぐさま顔をしかめる女優)

 

 

 

 

もう嫌!

 

口の中でパパを思う存分味わいたいのに、鼻から入ってくるのは馬糞の臭い…

 

なんで会う時はいつもここなの!?

 

母さんにも「あんた、草クサい」って言われるのよ!

 

あんな馬、撃ち殺してやりたい!ファッキン!

 

 

仕方ない。ここしか人目を避けられるところはないんだ…

 

しかしアンジェラ…

 

俺に抱かれてる時のお前は、最高にイカしたビッチだな ( 苦笑 )

 

 

ありがと、パパ。

 

 

その「パパ」という呼び方…

 

もう、やめてくれないか?

 

 

じゃあアレの最中に何て呼べばいいの?

 

お上品に「あなたのコックはとっても素敵よ、ミスター・ウィロビー!」とでも?

 

 

フフッ。好きにしろ。

 

 

先週、父さんに聞かれた時はマジ焦ったけど。

 

 

ちゃ、チャーリーに?

 

 

 

まさか聞いてるとは思わなかったの…

 

だからつい「パパと暮らしたい」って…

 

 

き、気付かれたのか!?

 

 

ううん…

 

自分のことだと勘違いしたみたい(笑)

 

 

頼むぞ…おい…

 

俺たちのことは絶対に秘密だ。二度と人前で口にするな…

 

わかったな?

 

 

うん…

 

ねえ、パパ…

 

 

なんだ?

 

 

わたしたち、いつまでこんなふうにコソコソしてなきゃいけないの?

 

 

・・・・・

 

 

最初にエッチした時、こう言ったよね?

 

「お前のためならどんな犠牲も払える」って…

 

いつ、奥さんと別れてくれるの?

 

 

あ、あれは…その…

 

 

わたし、パパなしでは生きていけない…

 

って言うか、もう家には帰れないの…

 

 

え?

 

 

今日ここに来る前に母さんから「お前なんかどこかでレイプされればいい!」って言われたのよ…

 

弟にまで「いっそ家を出て行けば?」って言われるし…

 

わたし、かわいそ過ぎると思わない?

 

あんな家族、もうマジで要らない…

 

 

・・・・・

 

 

でも、いいの。

 

わたしにはパパがいるから。

 

世界でただひとり、わたしの身も心もすべて愛してくれる最高のパパが…

 

このままずっと、パパのそばにいる…

 

 

あ、アンジェラ…

 

そろそろ帰ったほうが…

 

妻と子供たちが帰ってくる時間だ…

 

 

え?今日はパーティーに行ってるから、帰りは夜遅くになるって…

 

だから「2回はヤれる」って…

 

 

いや…やっぱり帰ったほうがいい…

 

万が一ということもある…

 

 

イヤよ!わたし、帰らない!

 

今日は奥さんが帰ってきても帰らない!

 

 

な、なにを…わけのわからないことを…

 

 

この姿のままで奥さんに挨拶するわ!

 

裸で手錠をしたままでね!

 

「はじめまして。御主人は随分前からあなたを愛していません。マグロのあなたでは満足できないそうです。だから可哀想な御主人は、わたしとこんなふうに愛しあっています。あなたは今まで御主人とこんなプレイをしたことあったかしら?」って…

 

 

そんなバカなこと、やめ…

 

 

わたし本気よ。

 

子供たちのことだって心配いらない。

 

わたし「いいママ」になれる自信があるわ。

 

これまでずっと反面教師には恵まれたから(笑)

 

だから、パパ…

 

もう1回…しよ…

 

 

ダメだ…

 

ダメだと言ってるだろう…

 

 

じゃあこの格好で街へ行って全部言いふらしてやる!

 

わたしたち二人のことを全部!

 

何もかも洗いざらい!

 

 

やめろ!

 

(女優の首を絞める男優)

 

 

!?

 

 

やめろ…やめるんだ…

 

お願いだから、やめてくれ…アンジェラ…

 

 

(苦しそうにもがく女優)

 

ヤ、ヤメテ…

 

 

(男優、女優の顔面に吐血)

 

 

!?

 

 

ナニ…コレ…?

 

 

俺は…お前を愛している…

 

 

パ、パパ…

 

 

本当だ…

 

あの言葉も嘘じゃなかった…

 

お前を…心から愛してたんだ…

 

 

 

(女優、意識が遠のく中、かすかに笑みを浮かべて)

 

 

ワタシモ…

 

アイシテ…ル……

 

 

(息絶える女優)

 

 

 

 

 

 

 

はい、カット!

 

 

 

 

 

 

 

どうでしょう?

 

 

・・・・・

 

 

何テイクめ?

 

 

今ので42です。

 

 

 

(監督、女優の前に腰をおろす)

 

 

 

君に死が迫っている…

 

 

ハイ…

 

 

しかも心から愛する男の手によって…

 

 

ハイ…

 

 

本物の恐怖はあった?

 

本物の喜びはあった?

 

愛される喜びと死の恐怖が混ざりあった、わけのわからないくらいの感情の高まりは、そこにあった?

 

 

はい…あの…

 

自分では出そうと思って…

 

 

だから、出したら嘘になるでしょ?

 

 

はい…

 

 

出すんじゃないの。出るの。

 

 

はい…あの…

 

「出る」っていうのは…?

 

 

 

(監督、台本を叩きつけ)

 

だから本物をくれよ!

 

喜びと恐怖が入り混じった本物の顔!

 

顔!顔!

 

なんで嘘になるか教えてやろうか!?

 

お前の人生が嘘ばっかりだから!嘘ついてばーっかりだから!

 

(監督、壁を激しく叩きながら)

 

嘘まみれのそのツラ、いい加減、剥ーがーせーよ!おい!

 

 

 

監督…

 

やり過ぎじゃないですか…?

 

 

 

(監督、助監督をビンタ)

 

 

ガキが口はさむなよ!

 

これは俺の作品だ!俺の作品だよ!

 

てめえはリハの時から台本グダグダグダグダ深読みばっかしやがって…

 

てめえ何様だ!?何えもんだ!?

 

バカ野郎!この野郎!

 

 

(監督、北野武風に助監督にケリを入れる)

 

 

(フランシス・マクドーマンド、監督から助監督を引き離す)

 

 

 

ちょっと!

 

1回休憩入れよ!ね、休憩!

 

 

監督、30分休憩入れても?

 

 

 

(女優、放心状態で涙を流す)

 

 

・・・・・

 

 

(監督、足早に去っていく)

 

 

 

今日はいちだんと荒ぶってる…

 

 

ちょっと外の空気吸ってくるわ…

 

(刈上げ男優、外へ向かう)

 

 

大丈夫だった?

 

 

はい、大丈夫です…

 

 

あなたは?

 

 

・・・・・

 

 

任せたよ、ウディ。

 

 

 

 

(男優、女優に服を渡す。女優、服を着て涙をぬぐって立ち上がる)

 

(男優と女優、歩きながら)

 

 

大丈夫?

 

あいつマジやべーって。気ィ狂ってるよ。

 

 

わたしが監督の求めるとこまで行けてないのが…

 

 

いやいやいや…

 

これ以上やってもさ。何回同じとこやるんだって話だよ。

 

 

がんばるから…

 

最後さ…もっと…ガッて…

 

強く、来て…

 

 

(男優うなずいて)

 

今日、行っていい?

 

 

(女優、うなずく)

 

 

あー!早く風呂入りてえ!

 

一緒に入ろ、ね?

 

 

しっ!

 

 

(男優と女優、お茶場へ到着)

 

 

 

はい、どうぞ。

 

 

あざーす。

 

 

座って。

 

いやー、42テイクはヤバいね。

 

 

すいません…

 

 

いやいや、あいつが頭おかしいんだって。

 

 

本物の手錠とか警棒とか使います?

 

超重いんですけど。

 

 

(助監督がポリタンクを重そうに持って歩いてくる)

 

 

ハア…ハア…

 

 

なに?

 

 

なんか、ありったけのガソリン持って来いって…

 

 

ガソリン?何すんの?

 

 

知らないっすよ!

 

頭からかぶってチベット僧みたいに抗議の焼身自殺でもするんじゃないっすか!?

 

(助監督、馬小屋の外へ出て行く)

 

 

 

監督って、いつもあんな感じすか?

 

 

まあ今回は特にね…

 

この映画に懸けてるみたいでさ。ずいぶん借金もしたみたいよ。

 

 

マジっすか、借金…

 

 

わたし、ちょっと集中してきます。

 

 

休んだほうがいいって。

 

 

うん、1回リラックスしな。

 

 

・・・・・

 

 

座って。

 

マジメね、本当に…

 

 

でもよくこんなとこ見つけましたね…

 

南部感ハンパない…

 

 

監督が南部中の田舎を何百カ所もまわって…

 

 

えー。なんかこう雰囲気ガチっすよね…

 

 

まぁここガチでヤバい場所だからね…

 

 

え?

 

 

いや、嘘よ、嘘。

 

ほら、ネットとかに載ってる都市伝説みたいな…

 

 

・・・・・

 

 

じゃあ…ちょっと来て…

 

ここね…今はどこにでもあるような牧場付きの家なんだけど…

 

南北戦争の頃は、南軍が「ある実験」をする場所として使ってたんだって…

 

 

ある実験?

 

 

人体実験。

 

 

人体実験!?

 

 

一説によると…

 

兵士不足を補うために…死人を生き返らせてたとか…

 

 

それって…

 

 

かもね…

 

 

でね、この噂には続きがあってね…

 

 

続き?

 

 

 

ガタン!

 

(と、ドアに何かが当たる音)

 

 

 

!?

 

 

・・・・・

 

 

 

 

マジびっくりしたー

 

タイミング。

 

風かな?

 

 

(男優、立ち上がってまた座る)

 

 

フランシスって、あの…

 

趣味って何ですか?

 

 

趣味?

 

 

趣味。

 

 

な、なに急に…

 

 

楽しい話しよ!楽しい話!

 

 

あ、うん…

 

 

趣味っていうか…

 

今はあれ、護身術、勉強してる。

 

 

護身術?

 

 

うん。

 

いや、ほら、こういう仕事してるとさ、若い子と絡む機会多いでしょ?

 

若い子の夢を食い物にする悪質な業界人っているのよね…

 

自宅に呼んで「君を主役にしてあげるよ」と言いながら肉体関係を強引に迫ってくるの…

 

だから、自分の身は自分で守るために、空いた時間に護身術を教えてあげたりとか。

 

 

フランシスも…若い頃に…?

 

 

私はデビュー作で監督とデキてすぐ結婚しちゃったから、そういうのはなかったけどね…

 

でも多くの女優が奴らの餌食になっていくのを見てきたわ。

 

 

へー!

 

 

例えば、例えば…

 

こう前から襲ってきたら?

 

 

 

(と、マクドーマンドに襲いかかるフリ)

 

(マクドーマンド、男優の股間を蹴り上げる。寸止めするつもりが少し当たる)

 

 

 

痛い痛い痛い…

 

 

みたいな。

 

 

すご〜い!(拍手)

 

 

じゃあ…

 

後ろから、みたいなパターンは?

 

 

あ、はい。じゃあ、グッと来てください。

 

 

あ、はい。失礼します。グッ!

 

(と、マクドーマンドに後ろから抱きつく)

 

(マクドーマンドは腕の中で180度向きを変え、膝を思い切りハレルソンの股間に)

 

 

ミートゥー!

 

 

!#?㊎⇩㊎★!%#?!…

 

(股間を押さえながら無言でうずくまる男優)

 

 

すごーい!(拍手)

 

その「ミートゥー!」っていうのは…?

 

 

あー、これ言う言わないで全然違うのよ。抜け方が。

 

 

・・・・・

 

 

へー!すごーい!(拍手)

 

 

(目がイっちゃってる男優、ペットボトルを片手にゆっくりと三人の前を通り過ぎる)

 

 

・・・・・

 

 

 

 

(目がイっちゃってる男優、馬小屋の外でうがいをして中に戻る)

 

(カメラが外に出る。C方向から若い男優が歩いてくる)

 

(若い男優、タバコをくわえて火をつけようとするが、なかなかライターがつかない)

 

カチッ…カチッ…

 

(背後に刈上げ男優が現れる)

 

 

・・・・・・

 

 

わーーーー!びっくりしたー!

 

なんすかロックウェルさん?

 

え?それ、やってもらったんすか?

 

 

ウウウウ…

 

(刈上げ男優、虚ろな目で唸り声をあげている)

 

 

芸達者じゃないすか。

 

出ちゃいます?アカデミー賞…

 

オスカー取れちゃいますよ(笑)

 

 

(刈上げ男優、若い男優に寄りかかる)

 

 

ウウウウ…

 

 

ちょっと、なんすか?

 

ちょっと…

 

(刈上げ男優、若い男優の顔にゲロを吐く)

 

 

オエッ

 

 

わーーーーー!?

 

(刈上げ男優、若い男優の肩に喰らいつく)

 

 

ウガウガ…ムシャムシャ…

 

 

 

うわーーーーーーー!

 

 

 

 

(悲鳴を聞き、馬小屋の外をうかがう三人)

 

 

・・・・・?

 

 

(外から、ちぎれた人間の腕が飛んでくる)

 

 

わーーー!

 

(三人、驚きながら後ろへ下がる)

 

・・・・・

 

(マクドーマンド、ゆっくりと腕に近付きながら)

 

 

こんなの作ってたっけ…?

 

 

(禿男優、おそるおそる近付く)

 

 

え、すげー。めっちゃリアルじゃないすか…

 

(腕を触ってみる)

 

うォ…きもちわり…

 

 

(外から腕の無い若い男優が入ってくる)

 

 

・・・・・

 

 

わー!え?なにそれ?

 

誰にやってもらったの?監督?

 

 

(若い男優、禿男優に倒れこむ。腕が無い)

 

 

わーーー!え?死んじゃった?

 

(若い男優の腕の無い部分と、転がってる腕を交互に指差して)

 

これがそれっていう…

 

 

(カメラを探しながら)

 

え?ちょっと…

 

やだこれ、何ドッキリよー?

 

ちょっとー、もうやめてよ、もう…

 

(若い男優の体を叩きながら)

 

ねぇ、ルーカス。

 

いいょ。もう早く腕、出ーしーなーよ。

 

 

・・・・・

 

 

(腰が砕けて後ずさりしながら)

 

きゃー!

 

腕ない!腕ないよ!

 

 

死んでる!マジで死んでる!

 

 

え!?

 

(刈上げ男優が背後から襲いかかってくる)

 

 

ウウウウ…

 

 

キャーーーーー!

 

(女優、両手で刈上げ男優を近づけないようにして、頭を下げる)

 

(刈上げ男優、女優の頭上でゲロを吐く)

 

 

オエッ!

 

 

助けて何これ!?やだ!キャーー!

 

 

(目がイっちゃってる男優、放心状態)

 

 

・・・・・

 

 

(禿男優、そばにあったマイクブームを手に取り、刈上げ男優に押しつけて馬小屋の外に出そうとする)

 

(刈上げ男優に押し返される禿男優)

 

(女優が禿男優の背中を押し、二人がかりで刈上げ男優を外に出して扉を閉める)

 

(外で扉を叩く刈上げ男優)

 

 

ドンドンドン…

 

 

 

ハァ…ハァ…

 

 

ねぇ、これって…

 

 

嘘だろ。

 

 

(若い男優のもげた腕を持ちながら)

 

まさか…

 

そんなワケないわよ…

 

ありえないわよ、そんな事…

 

 

 

 

後篇へ、つづく

 

 

 

 

 

 

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