「マーサ=マーサー説を世界で初めて唱えて、世界で初めて検証してみた」〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説・番外編

  • 2018.10.29 Monday
  • 14:09

 

 

 

 

 

さて、お待ちかね、TOM WAITS『CLOSING TIME』徹底解説の番外編だよ。

 

 

冗談で言ったのに…

 

 

「オチが平凡」とか余計なこと言うからや。

 

このオッサン、年を重ねて丸くなるどころか、年々大人げなくなっとるさかい…

 

 

何か言った?

 

最近、耳毛のせいで他人の意見がよく聞こえないんだ。

 

 

もう、好きにしてください(苦笑)

 

 

ありがとう。では思う存分、語らせてもらおうか。

 

今回のテーマは、ズバリこれだ。

 

A面6曲目『Martha』の主人公トム・フロストが愛していたマーサとは「マーサー」のことだったのでは?

 

 

 

マーサ―?誰?

 

 

シナトラの十八番『One for My Baby (and One More for the Road) 』の作者ジョニー・マーサーのことやろ。

 

前にもオッサンは「この曲はトム・ウェイツに大きな影響を与えた」って熱弁しとったやんけ。

 

 

「熱弁」

 

 

その通り。

 

トム・ウェイツとこの僕が、こよなく愛するソングライター、ジョニー・マーサーのことだ。

 

Johnny Mercer(1909−1976)

 

 

トム・ウェイツは、ジョニー・マーサーの「ある歌」をヒントに『Martha』を書いたのでは?と僕は推理する…

 

『Martha』という曲は、共に家庭を持つ身でありながら、過去を忘れられない男が、かつて愛した女性に長距離電話をかけてしまう…というストーリーだった。

 

そしてそれは、ジョニー・マーサーの「ある歌」と非常によく似た構造となっているんだよ…

 

 

 

来ました、惜しくも落選した歌動画紹介シリーズ(笑)

 

 

『マーサ』はこれで5組目やで。

 

 

この曲は人気曲だから多くの人に歌われていて、名カバーもたくさんあるんだ。

 

だから紹介したい動画もたくさんあってね…

 

 

さて、続いては、その『マーサ』の元ネタになったと思われるジョニー・マーサーの歌を聴いてもらおう。

 

1941年に発表された曲『I REMEMBER YOU』だ。

 

 

 

『マーサ』と全然雰囲気が違うんですけど…

 

めっちゃウキウキしてるし…

 

ムチムチしてる(笑)

 

 

せやけど、どっかで聞いたことある歌やな…

 

超ビッグな有名人がカバーしとったような…

 

 

これじゃない?

 

 

 

び、び、ビートルズ!

 

 

『I REMEMBER YOU』は、下積み時代のビートルズの持ち歌だったんだよね。

 

ポール・マッカートニーがジョニー・マーサーの大ファンで、この歌をレパートリーにしていたそうだ。

 

彼らのデビュー曲『LOVE ME DO』など初期の楽曲は、この歌の影響が非常に大きいと思う。

 

ちなみにポールの夢は、ジョニー・マーサーと一緒に曲を作ることだったらしい。

 

ビートルズ解散後にオファーしたんだけど、すでにその時マーサ―は病に倒れており、実現しないまま76年に亡くなってしまった。

 

 

ジョニー・マーサーって、何気に偉大な人なんだな。

 

 

ポールやトム・ウェイツに限らず、あの世代のソングライターの誰もが憧れた存在だと思うよ。

 

ボブ・ディランやカズオ・イシグロなどのノーベル文学賞受賞者だって、マーサーの影響を大きく受けているのは確実だ。

 

彼らの作品を見れば、一目瞭然だからね。

 

たとえば…

 

 

ねえねえ、おかえもん。

 

『I REMEMBER YOU』はホントに『マーサ』とそっくりな内容なの?

 

 

ナイス・オブストラクション!

 

あやうく壮大なウンチクが始まるとこやった。

 

 

そっくりどころじゃないよ、同じシチュエーションの歌だから。

 

『マーサ』の1番では、主人公トム・フロストが長距離電話のオペレーターと会話を交わす。

 

「40年ぶりに話す相手なんだ」とか「俺が感極まって涙ぐんでしまう前に、彼女は俺の声を思い出してくれるかな?」とか、忘れられない昔の恋人について喋るんだよね…

 

 

詳しくは『マーサ』の回をどうぞ。

 

『Martha』って誰?

 

 

オペレーターが実は「天使」のことやったっちゅうのは驚いたな。

 

 

そのシチュエーションが、そっくりそのまま『I REMEMBER YOU』の借用なんだよ。

 

『I REMEMBER YOU』も、主人公が天使相手に「忘れられない人」について語るというストーリーなんだ。

 

 

そうなん!?

 

 

ジョニー・マーサーの『I REMEMBER YOU』は、天使に「忘れられない人」を説明するところで終わるんだけど、トム・ウェイツはそこから先の物語を2番以降で描いてみせたというわけ。

 

つまり『マーサ』という歌は『I REMEMBER YOU』の「ロングバージョン」なんだね。

 

 

ホンマでっか!?

 

 

じゃあ歌詞を見ていこうか。

 

まずはこんなVERSE(導入部)で始まる…

 

Was it in Tahiti?
Were we on the Nile?
Long, long ago,
Say an hour or so
I recall that I saw your smile.

 

あれはタヒチだったかな?

それともナイル川クルーズの時?

とにかく遠い昔のこと…

だけどつい1時間前のことのようにも思える…

僕の目の前で君は笑っていたんだ

 

 

歌詞はめっちゃ切ないじゃんか!

 

なんであんなウキウキ気分で歌うんだよ!

 

 

しかも1941年よりずっと以前にタヒチ旅行やナイル川クルーズしとったなんて、めっちゃセレブやんけ。

 

 

天使を相手にノロケ話をしてる歌なんだから、ウキウキなのも仕方ないよね。

 

そして「タヒチ」と「ナイル川」には別の意味が隠されているんだ。

 

歌詞の文章をよく見ると、ヒントが隠されている。

 

「Was it on Tahiti?」とは「それは楽園でのこと?」という意味で…

 

「Were we on the Nile?」とは「私たちはエジプトにいた?」という意味なんだよね…

 

楽園とエジプトといえば?

 

 

『創世記』と『出エジプト記』か!

 

 

だから主人公は「つい1時間ほど前のこと」と言い直すんだね。この歌は『旧約聖書』ではなくて『新約聖書』の物語だから。

 

『新約聖書』の登場人物が、天使に「一番忘れられないことは?」と尋ねられて、「愛した人」の

ことを話す歌なんだよね。

 

 

聖書の中でイエスが「愛した人」といえば、「最も愛した弟子」こと使徒ヨハネと、「愛していた姉妹」ことマルタとマリア…

 

なるほど、確かに『マーサ』と丸っきり同じ構図だ…

 

 

VERSEが終わると1番に入る。

 

I remember you,
You're the one who made
My dreams come true
A few kisses ago.

 

君のことを思い出してしまう

君は僕の夢を叶えてくれた人だから

僕は思い出してしまうんだ

君と交わしたすべてのキスを

 

I remember you, 
You're the one who said
"I love you, too," I do.
Didn't you know?

 

君のことを思い出してしまう

君は僕に「私もあなたを愛してる」

と言ったただひとりの人(僕も愛してるよ)

知らなかったの?

 

 

 

めっちゃエエ歌詞やな。

 

しかもちゃんと「イエスと愛した人」の歌にもなっとる。

 

 

そして2番。

 

ここからがジョニー・マーサーの真骨頂だよ。

 

I remember, too, 
A distant bell,
And stars that fell like rain
Out of the blue.

 

こんなことも思い出す

遠くから何かを告げる鐘の音

そして降ってきた星

まるで雨のように

夜空のむこうから

 

 

 

遠くで何かを告げる鐘の音?

 

どゆこと?

 

 

実はこの歌、ジョニー・マーサーの失恋ソングだと言われている。

 

愛していた女性が、彼とは別の相手を選んで結婚してしまったんだよね。

 

その結婚式のチャペルの鐘の音を聴いた時の悔しさを歌詞にしたというんだ…

 

 

シュガーの『ウェディング・ベル』か!

 

 

 

歌詞がちょっと怖いんですけど…

 

どこにでもいそうな普通のお姉さんたちに笑顔で歌われると余計に…

 

 

ホント怖いよね(笑)

 

ちなみにこの歌に続編があるのを知ってるかな?

 

結婚したカップルの「その後」を描いたものなんだけど、歌詞がとても興味深いんだよね…

 

 

 

金曜の夜に帰って来なかった夫?

 

日曜日に出かける約束だったのに同僚とゴルフへ行ったまま帰って来ない?

 

どこが興味深いの?バブル時代あるある話でしょ?

 

 

ちゃ、ちゃうで…

 

よう歌詞を聞いてみい…

 

全部イエスの死と復活のことを言うとるんや…

 

『ヨハネによる福音書』では、日曜の早朝、墓に眠るイエスをマグダラのマリアが見に行く…

 

そしたら復活したイエスが現れて、喜んだマリアが体に触れようとしたら、なぜか断られてまう…

 

そんで今から使徒たちのところへ行くといってイエスは姿を消した…

 

その後イエスは使徒たちのところに長居。マリアにはさせへんかったスキンシップも交えながら…

 

「続・ウェディングベル」は、マグダラのマリアの「やきもちソング」やで…

 

 

まあ、サビの最後が「アーメン」という歌だからね。

 

最初から「そういう歌」だったわけだ。

 

さて、脱線話はこれくらいにして、『I REMEMBER YOU』に戻ろう。

 

A distant bell, and stars

that fell like rain out of the blue

 

とは「イエスの誕生」つまり「クリスマス・イブ」のことだね。

 

空のむこう、つまり天から聞こえてきた「鐘の音」と、雨のように降った「星」とは、キリスト(救世主)であるイエスの誕生を告げる「知らせ」のことだ。

 

夜明け前、羊飼いのところに「イエスの誕生」を告げる天使たちが現れ、東方の三博士はベツレヘムに降る「星」を見た。

 

 

なるほど!

 

 

そしてこの歌詞の面白いところは、「失恋ソング」として聴くと「rain」や「blue」といった言葉がネガティブ・イメージを喚起させるところにある。

 

心の中は雨降りで、ブルーな気分…みたいな。

 

だけど「イエスと愛した人」の歌として聴くと、打って変わってポジティブな意味になるんだ。

 

キリスト教やゴスペルソングで「rain」とは「めぐみ・神の愛・祝福」のことだからね。

 

「fell like rain out of blue」で「天から祝福が降りて来た」という意味になるんだ。

 

 

ジョニー・マーサーの代表曲『COME RAIN OR COME SHINE』と同じだな!

 

 

そして歌詞はこう締め括られる。

 

When my life is through,
And the angels ask me to recall
The thrill of them all,
Then I shall tell them
I remember you.

 

たとえ僕が今の人生を全うし

天国で天使たちから

「人生で一番気持ちが高揚したことは?」

と尋ねられたとしても

僕はこう答えるよ

君のことしか思い浮かばない、とね

 

 

 

なんか意味深やんけ。「my life is through」のとこが。

 

 

ジョニー・マーサーにも相手にも、それぞれパートナーがいたからね。いわゆる「不倫関係」だったらしい。

 

しかも相手というのが、誰もが知ってる世界的な大スターだった…

 

だから絶対に公に出来ないし、誰にも辛い思いを打ち明けられない関係だったんだよ…

 

だからこうして歌にしたんだろうね。胸の中の切ない気持ちを吐露する形で…

 

 

なぬ!?

 

 

さて、この部分の歌詞で興味深いのが「The thrill of them all」という言い回しだ。

 

 

サム・スミスのアルバム『The thrill of it all』みたい。

 

 

 

デビューアルバムも「信仰と愛」がテーマやったけど、これはもう完全にゴスペルやな。

 

 

サム・スミスもジョニー・マーサーの大ファンなんだと思うよ。

 

ジョニー・マーサーは南部で過ごした少年時代、白人なのに黒人たちと遊び、大人たちには内緒で黒人教会にも入り浸っていたそうだ。

 

黒人たちが歌っていたフォークソングやブルース、そして黒人教会のゴスペルソングが、彼の音楽のルーツなんだよね。

 

だから彼の代表作『ムーン・リバー』のサビは「My huckleberry friend, moon river, and me」なんだよ。

 

マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』は、ホワイト・トラッシュの父から逃げるハックと逃亡奴隷の黒人ジムがミシシッピ川を旅する物語だからね。

 

 

なるほど。確かになぜ「ハック」が出て来るんだろうって何となく疑問だったかも。

 

 

そしてこの「The thrill」という言葉は、良い意味でも悪い意味でも「精神が高揚する・心がぞくぞくする」という状態を指す。

 

だから英語の歌では「秘められた情事」と「イエスの受難・信仰心」のダブルミーニングで使われることが多いんだ。

 

ジョニー・マーサーの『I REMEMBER YOU』も、表向きは「秘められた情事」の歌なんだけど、「イエスと愛した人」の歌にも聞こえるようになっている。

 

B・B・キングがリバイバルで大ヒットさせ、彼の代表曲にもなった『The thrill is gone』なんて、この「thrill」という言葉の持つ特性をフルに活かした作品だ。

 

このトレイシー・チャップマンとのデュエット版は、映像でそれがよくわかるようになっているよね。

 

エレベーターで「上階」へ向かうB・Bなんて、十字架で昇天するイエスのイメージが重ねられている…

 

 

 

「重ねられてる」どころじゃなくて、十字架そのものじゃんか!

 

 

 

ルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』や、コーエン兄弟の『バートン・フィンク』と一緒だね…

 

ホテルのロビーを「ゴルゴダの丘」での「受難」に喩え、エレベーターを「復活(天国と地上の往復)」に喩えているのは…

 

 

いろんなことが繋がって来たな…

 

ルネ・クレマン&アラン・ドロン『太陽がいっぱい』徹底解説

 

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解説

 

 

ちなみにこの『The thrill is gone』へのB・B・キングや黒人社会の思い入れは非常に強い。

 

なぜなら「The thrill is gone(受難は過ぎ去った)」というメッセージが、自身も含め、かつて差別されてきた「アメリカ社会の中の黒人」のことにも当てはまるからね。

 

 

そこは深読みし過ぎとちゃうんか?

 

 

そんなことはないんだな。

 

この『The thrill is gone』という歌を書いたのは、Lew Brown(ルー・ブラウン)という人物なんだけど、彼は旧ロシア帝国の黒海沿いの町オデッサに生まれ、1898年、5歳の時に家族と共にアメリカへ移民したんだ…

 

Lew Brown(1893 - 1958)

 

 

1900年前後の時代のオデッサから!?

 

それってもしかしてポグロム(ユダヤ人への大迫害)じゃ…

 

 

まさにその通り。

 

黒海からバルト海にかけての地域、つまり現在のウクライナからリトアニアにかけての地域には、多くのユダヤ人が住んでいて、19世紀末から20世紀初頭にかけてロシアやプロイセン(ドイツ)から大規模な迫害を受けた。

 

ヨーロッパでキリスト教徒に迫害されるくらいならイスラム教徒のいるパレスチナへ行こうという「シオニズム運動」が高まるんだけど、やはり危険すぎるということで、その多くはアメリカへ逃れた。

 

1920年代30年代に活躍した多くのソングライターや映画人は、このようにしてアメリカへやって来た人々だ。

 

だけどポグロムから逃れてアメリカへ渡ったのにも関わらず、新天地アメリカでも差別に苦しめられてしまう。

 

生きていくために「改名や改宗」を迫られたんだよね。

 

「ルー・ブラウン」という名前も、もちろん改名後のものだ。

 

そこを踏まえると「The thrill is gone」という言葉の持つ意味は、非常に重いものだと言える…

 

 

 

なるほど…

 

後世に残る作品って、それなりの背景があるんだな…

 

ただ「いい曲だから」って理由じゃないんだ…

 

 

そこを伝えるのが僕の役割だと自負している。

 

いわゆる「使命」ってやつだね。

 

 

 

さて、ここまで『I REMEMBER YOU』の歌詞を見てきたけど、トム・ウェイツの『MARTHA』との共通点がたくさんあったことに気付いたと思う。

 

まず「オペレーター(天使)と話す」こと…

 

想う相手が「かつて愛し、今でも愛している人」であること…

 

それが「long distance call(recall)」であること…

 

愛が「雨」のように思い出されること…

 

 

 

確かに『MARTHA』は『I REMEMBER YOU』の「ロングバージョン」だな…

 

『ONE FOR MY BABY(AND ONE MORE FOR THE ROAD)』の件もあるし、「トム・ウェイツはジョニー・マーサーの大ファン説」は間違いないかも…

 

ジョニー・マーサーって人が、一気に気になってきた…

 

誰もが知る世界的スターとの「秘められた情事」ってのも気になるし…

 

 

それね、トム・ウェイツも『マーサ』でネタにしてるんだ。

 

サビの部分の出だしの歌詞は、こうだったよね…

 

And those were days of roses

Poetry and prose

あの頃は詩と散文とバラの日々だった

 

これってジョニー・マーサーの代表曲『Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)』へのオマージュであると同時に、マーサーが『I REMEMBER YOU』で歌った「愛した人」のことでもあるんだよ…

 

実はこの「愛した人」には、当時「David Rose」という別の恋人もいたんだ…

 

 

ええ!?そんな!

 

 

だってマーサーは既婚者だったからね。

 

ちなみにローズ氏も既婚者だったんだけど、マーサーとは違い、彼女のために奥さんと別れた。

 

そして晴れて二人は教会でウェディング・ベルを鳴らす…

 

しかもデヴィッド・ローズ氏は、マーサーもよく知る相手、同業の作詞家だったんだ…

 

 

David Rose…作詞家…?

 

マーサーの「愛した人」って、まさか…

 

 

そう。

 

ジュディ・ガーランド、と言われている…

 

 

Judy Garland(1922 - 1969)

 

 

じゅじゅじゅ、ジュディ・ガーランド!?

 

 

さらに言うと、A面5曲目『ミッドナイト・ララバイ』でもトム・ウェイツはこんな歌詞を書いた…

 

There's gumdrops in your head

お前はガムドロップ(グミのこと)の夢を見ている

 

 

実はジュディ・ガーランドの本名って…

 

「フローレンス・ガム(Gumm)」というんだ…

 

 

じぇじぇじぇ!

 

 

面白いよね、トム・ウェイツは…

 

ジョニー・マーサー愛にあふれている…

 

 

す、すべて偶然じゃないの…?

 

 

信じるも信じないも、あなた次第。

 

でも僕はそういう時、よりスリルのある方、ゾクゾクする方を選ぶけどね。

 

 

あんたらしいや。

 

 

ということで、次回からはトム・ウェイツやポール・マッカートニー、ボブ・ディランなど様々なソングライターに多大なる影響を与えたジョニー・マーサーの代表曲を解説していこうと思う。

 

これほど重要な人物なのに、その作品群をきちんと解説した人はいないからね…

 

『One for My Baby(and One More for My Road )』『COME RAIN OR COME SHINE』『Days of Wine and Roses』『MOON RIVER』の他にも、解説しておきたい曲は山ほどあるんだ…

 

 

 

こうなった時のおかえもんはもう誰にも止められない…

 

どうぞお気の召すまま、お気の済むまで…

 

 

では、こうご期待!

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

最終回「なぜクロージング・タイムは3時22分なのか?」〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説18

  • 2018.10.27 Saturday
  • 20:33

 

 

 

 

 

では第4の教会「Thyatira(テアテラ)」へのメッセージについて解説しよう。

 

『Nighthawks』Edward Hopper

 

 

何のことかわからない人は前回をどうぞ!

 

TOM WAITS「CLOSING TIME」中篇

 

 

四番目の椅子の上に描かれとるのは、どう見ても堅気には見えない男や。

 

立場の弱い従業員の兄ちゃんにガン飛ばしとる。

 

なんや偉そうにしとるけど、どうせ娼婦のヒモか何かやろ。

 

 

 

ギャング映画の中のこうゆう娼婦の女は、だいたい男が目をかけている子分と浮気するんだよね。

 

 

コーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』(笑)

 

 

 

まさにその通り。

 

『ヨハネの黙示録』第2章にある「テアテラの教会へ」でも、こう書かれている…

 

2:20 しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは、あのイゼベルという女を、そのなすがままにさせている。この女は女預言者と自称し、わたしの僕たちを教え、惑わして、不品行をさせ、偶像にささげたものを食べさせている。

2:21 わたしは、この女に悔い改めるおりを与えたが、悔い改めてその不品行をやめようとはしない。

 

 

やっぱり自分の女を管理しきれていなかった(笑)

 

 

しかもエドワード・ホッパーが女に「カビの生えたサンドイッチ」を食べさせた理由も書いてある…

 

2:22 見よ、わたしはこの女を病の床に投げ入れる。この女と姦淫する者をも、悔い改めて彼女のわざから離れなければ、大きな患難の中に投げ入れる。

 

 

あんなカビだらけで緑色したサンドイッチ食べたら確実に食中毒で病院送りだな(笑)

 

 

 

さて、次は第5の教会「Sardis(サルデス)」だ。

 

 

5番目の椅子のエリアは奇妙やな。

 

誰も座っとらんのに、飲みかけのドリンクが置いてあるやんけ…

 

 

 

ヒラデルヒアの席に座ってる男の飲み物じゃないの?

 

 

ちゃうわ。よく見てみい。カウンターの角の向こうや。

 

 

いいところに気が付いたね…

 

あそこには幽霊が座っているんだよ。

 

まだこの世に生きていると勘違いしてる幽霊が飲んでるんだ。

 

 

 

ゆ、幽霊…?

 

また適当なこと言ってオイラたちを騙すつもりだな…

 

もうあんたの足の指の間なんて舐めないぞ!

 

この知ったかぶり野郎め!さっさと隠居してしまえ!

 

 

 

ええハナシやな。

 

 

やれやれ。

 

君たちにはホント世話が焼ける…

 

ホッパーはね、『ヨハネの黙示録』の記述を忠実に再現したんだよ…

 

3:1 サルデスにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『神の七つの霊と七つの星とを持つかたが、次のように言われる。わたしはあなたのわざを知っている。すなわち、あなたは、生きているというのは名だけで、実は死んでいる。

 

 

うわあ〜〜〜!

 

実は死んでいるのに生きてると勘違いしてる人!?

 

なんなんだよこれ!?

 

 

ホッパーと僕を甘く見ないでほしい。

 

君たちが普段のほほ〜んと生きているような世界の遥か上の次元で物事を考えているんだ。

 

 

お、お見それしやした!

 

 

わかればよろしい。

 

これ以上僕に同じセリフを言わせないでくれたまえ。

 

 

さて、第6の教会「Philadelphia(ヒラデルヒア)」に行こう。

 

 

ホッパーは第6の椅子ヒラデルヒアの位置に「カップルと従業員のやり取りを見つめる男」を描いとるな。

 

後ろ斜め45度の角度で顔は見えへん。

 

 

 

ホッパーが「あの位置」に男を描いたことには重要な意味がある。

 

実を言うと「カップルと従業員のやり取り」は関係無いんだ。

 

ホッパーは別の目的で男を「あの位置」に描いたんだよ…

 

 

別の目的?

 

カップルと従業員を観察してるから「あの位置」じゃないの?

 

 

違うんだな。

 

あの男に関しては「ドアの視点」から見なければならないんだ…

 

そのためにホッパーはドアに「目」を付けたんだよね…

 

「ドアの視点」で「あの男」が正面に来るように…

 

 

 

ドアの視点で正面!?

 

どゆこと!?

 

 

ホッパーが「第6の教会ヒラデルヒアへの伝言」を忠実に再現したからだよ。

 

3:7 ヒラデルヒヤにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『聖なる者、まことなる者、ダビデのかぎを持つ者、開けばだれにも閉じられることがなく、閉じれば誰にも開かれることのない者が、次のように言われる。

3:8 わたしは、あなたのわざを知っている。見よ、わたしは、あなたの前に、誰も閉じることのできない門を開いておいた。

 

 

ああ!「あなたの前に」って!

 

第1の教会「エペソ」に出て来たパラダイスへの入口だ!

 

 

『Nighthawks』の中では「食糧倉庫のドア」が「楽園の扉」の役割を果たしている。

 

だからホッパーは「食糧倉庫のドアの正面」に人物を配置したんだよ。

 

「第6の教会ヒラデルヒアへの伝言」を再現するためにね。

 

そしてこの後に続く聖書の記述から、ホッパーは「何か不穏な空気が漂う深夜の食堂」という舞台を作り上げたんだ…

 

おそらく絵の中でこれから起こるドラマはこんな感じだろう…

 

 

女「な、なんだか…お腹が急に…オエッ…」

 

ギャング「どう落とし前つけてくれるんや!責任者出さんかワレぇ!」

 

従業員「ぼ、暴力は、いけません…」

 

ギャング「じゃかあしいわ!」

 

従業員「うわ〜〜〜」

 

背中男「…もう我慢できない。やめるんだ」

 

ギャング「なんやと?ええ度胸しとるやんけ。もういっぺん言うてみい」

 

背中男「ここまで黙って聞いてたが、もう我慢の限界だと言ったんだ。その手を放せ」

 

 

 

ええ!?

 

背中男、大丈夫!?相手はサタンの会堂に属する筋の者だよ!

 

どう見たって勝ち目はない…

 

 

ギャングは背中男に殴り掛かる…

 

だけどギャングのパンチは大きく空を切り、その勢いで横転して壁に頭を強打…

 

床にうずくまるギャングに背中男は蹴りを連続で入れ、ギャングはあっけなくノックダウン…

 

土下座して背中男に許しを請うた…

 

 

なにその展開!?

 

 

『ヨハネの黙示録』の「ヒラデルヒアへの伝言」には、そう書いてある。

 

3:8 なぜなら、あなたには少ししか力がなかったにもかかわらず、わたしの言葉を守り、わたしの名を否まなかったからである。

3:9 見よ、サタンの会堂に属する者、すなわち、ユダヤ人と自称してはいるが、その実ユダヤ人でなくて、偽る者たちに、こうしよう。見よ、彼らがあなたの足もとにきて平伏するようにし、そして、わたしがあなたを愛していることを、彼らに知らせよう。

3:10 忍耐についてのわたしの言葉をあなたが守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試すために、全世界に臨もうとしている試錬の時に、あなたを防ぎ守ろう。

 

 

うわあ!

 

ヒラデルヒアの人は防ぎ守られて、サタンの会堂に属する者は足元に平伏するのか!

 

ホッパーは、その手前の瞬間を絵にしたんだ…

 

おもしろすぎる…

 

 

それだけじゃないよ。

 

「ヒラデルヒアへの伝言」には、まだ続きがある…

 

3:12 勝利を得る者を、わたしの神の聖所における柱にしよう。彼は決して二度と外へ出ることはない。そして彼の上に、わたしの神の御名と、わたしの神の都、すなわち、天とわたしの神のみもとから下ってくる新しいエルサレムの名と、わたしの新しい名とを、書きつけよう。

 

 

彼の上?

 

 

「彼の上」っちゅうたら、絵の中で「男の背中」と並行して描かれとる「広告看板」のことや…

 

 

 

そこに「わたしの神の御名と、新しいエルサレムである神の都の名と、わたしの新しい名」が書かれているというわけだ。

 

これは前々回に説明したね。

 

「ONLY 5¢」は「ONLY IN GOD WE TRUST」と読む。

 

1930年代になるまで、アメリカの硬貨に「IN GOD WE TRUST」が書かれていたのは「5セント硬貨(ニッケル)」だけだった。

 

そして葉巻の銘柄「PHILLIES」とは「Philadelphia(フィラデルフィア)」のことだ。

 

フィラデルフィアは「新しいエルサレム」ことアメリカ合衆国の建国の地であり首都でもあった。

 

 

アメリカは新しいエルサレムなの?

 

 

報道されることはあまりないけど、米国大統領というのはホワイトハウスで様々な定例儀式を行っている。日本の天皇が皇居の中でやってるみたいにね。

 

その中には、米国大統領が「新しいモーセ」であり、アメリカが「新しいエルサレム」であることを祝う儀式もあるんだ。これを毎年行っているんだよね。

 

連邦議会の議事堂内の後ろの壁にも大きなモーセのレリーフがあり、議会の檀上に登ると、視線の先にモーセが見えるようになっている。

 

アメリカ議会で演説する人は、モーセに見つめられるというか、向き合うようになっているんだ。

 

 

そういやアメリカの国章がハクトウワシに決まる前は「海を渡るモーセ」のマークやったな…

 

 

そして「わたしの新しい名」とは「アメリカ」のこと。

 

ホッパーは途中までしか描かなかったけど「American No1」というキャッチコピーが見えるよね。

 

 

 

完璧すぎる…

 

 

これぞまさしく「目に映るすべてのものはメッセージ」だね。

 

なぜ76年間ものあいだ、誰も気付かなかったのか不思議なくらいだ。

 

ようやく僕が指摘して、ホッパーも草葉の陰で喜んでいるかもしれない。

 

 

バッタじゃないんだから…

 

 

そして最後に、第7の教会「Laodicea(ラオデキヤ)」への伝言だ。

 

 

 

また誰もいない席だ。

 

しかも今度は店内に何も描かれていない。もう幽霊という手は使えないぞ!

 

 

心配無用。

 

ラオデキヤの人は店中じゃなくて外だから(笑)

 

3:20 見よ、わたしは戸の外に立って、叩いている。誰でもわたしの声を聞いて戸を開けるなら、わたしはその中に入って彼と食を共にし、彼もまたわたしと食を共にするであろう。

 

 

ズコっ!

 

店の入口のドアをノックしているのか!

 

そりゃ見えないはずだ(笑)

 

 

おもしろいね、ホッパー。

 

でもまだあるんだ。こういうのとか…

 

3:15 わたしはあなたのわざを知っている。あなたは冷たくもなく、熱くもない。むしろ、冷たいか熱いかであってほしい。

3:16 このように、熱くもなく、冷たくもなく、なまぬるいので、あなたを口から吐き出そう。

 

 

コーヒーのことでもクレームつけられてたのか!(笑)

 

 

 

そしてこんなことも書かれている。

 

3:14 ラオデキヤにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『アーメンたる者、忠実な、まことの証人、神に造られたものの根源であるかたが、次のように言われる。

 

 

これがどうかしたの?

 

 

ホッパーが「American」の文字を途中までしか描き入れなかった理由がこれだ。

 

「アーメン(Amen)」という言葉を再現したかったんだね…

 

 

 

ズコっ!そんなんあり!?

 

 

神は細部に宿るというからね…

 

さらにはこんなことまで書かれている…

 

3:18 そこで、あなたに勧める。富む者となるために、わたしから火で精錬された金を買い、また、あなたの裸の恥をさらさないため身に着けるように、白い衣を買いなさい。また、見えるようになるため、目にぬる目薬を買いなさい。

 

 

へ?なにこれ?

 

金と白い衣と目薬を買いなさい?

 

 

実はこれが『SING A SONG OF SIX PENCE(6ペンスの歌)』の元ネタなんだ。

 

つまりトム・ウェイツ『クロージング・タイム』の5曲目『Midnight Lullaby(ミッドナイト・ララバイ)』の元元ネタってことだね。

 

 

『6ペンスの歌』には3人の人物が出て来た。

 

「お金が好きな王様」と「蜂蜜が大好きな王妃」と「洗濯物を干すメイド」だったね。

 

これが『ヨハネの黙示録』第三章の「金と目薬と白い衣」のことだったんだよ…

 

 

 

金と衣はわかる。でも目薬がなぜハチミツになったんだ?

 

 

かつては蜂蜜って目薬としても使われていたんだよね。

 

今でもそうやって使う人はいるらしいけど…

 

 

さて、これにて『ヨハネの黙示録』の「7つの教会へのメッセージ」はおしまい。

 

エドワード・ホッパーは、ものの見事にこれを絵の中に落とし込んでいたわけだ。70年以上も誰にも見破れないような手法でね。

 

だけどトム・ウェイツは気付いていた。

 

そしてデビューアルバム『クロージング・タイム』に落とし込んだ。『ヨハネの黙示録』とホッパーの絵を融合させてね。

 

それを平成も終わろうとしている2018年の秋に僕が発見したというわけ。

 

 

何気に壮大な物語やったな。

 

まさかこんな展開になるとは夢にも思っとらんかったで…

 

 

ちなみに「7つの教会へのメッセージ」は、どんなふうに終わるの?

 

 

いいところを聞いてくれた。ちょうどそれについて話そうと思っていたんだ。

 

第2章と3章にわたって展開される「神からヨハネへの伝言」は、こんなふうに締め括られるんだ。

 

3:21 勝利を得る者には、わたしと共にわたしの座につかせよう。それはちょうど、わたしが勝利を得てわたしの父と共にその御座についたのと同様である。

3:22 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。

 

ポイントは「第3章22節」で終わるところだね。

 

何か気付かない?

 

 

何か?

 

 

これを時間に置き換えると…

 

3時22分…

 

 

ああ!

 

『クロージング・タイム』のジャケットの時計の時間!

 

TOM WAITS『CLOSING TIME』

 

 

『ヨハネの黙示録』って書は、芸術家の創作意欲をここまで刺激するんだね…

 

キリスト教文化圏に生まれなかった僕には、なかなかその根底にある感覚がわからないんだけど…

 

でも、西洋文化や西洋芸術を理解する上ではマストなのかもしれないな…

 

 

 

というわけで、長らくのお付き合い、どうもありがとう。

 

これで僕の『CLOSING TIME』解説はクロージング・タイムです。

 

なんちゃって。

 

 

 

オチはめっちゃ平凡…

 

 

そういうこと言うと、番外編とか書いちゃうよ。

 

 

そ、それだけは…!

 

これで大満足です!ホントにマジでもうお腹いっぱい!

 

 

やっぱり書いた方がよさそうだなあ…

 

あのこと書いちゃおうか…

 

 

「あのこと」って何!?

 

ちょー気になる!

 

 

でしょ?

 

ではまた番外編で…

 

 

もうコッポラの『地獄の黙示録』状態を覚悟やな…

 

 

なにそれ?

 

 

『地獄の黙示録』っちゅう映画は、17週間の撮影予定が61週間まで延び、編集にも2年という歳月が費やされたんや…

 

 

ひゃあ!やめて!

 

 

ふふふ…

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

ホッパーさん、あそこにある物体は何ですか?〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説17

  • 2018.10.26 Friday
  • 19:10

 

 

 

 

さて、いよいよトム・ウェイツのデビューアルバム『クロージング・タイム』に隠された最後の謎「なぜトム・ウェイツは福音記者ヨハネとエドワード・ホッパーを掛け合わたのか」を探っていくとしよう。

 

 

ついに最終回だな!

 

おら、わくわくすっぞ!

 

 

油断したらアカンで。

 

このオッサンの「これが最後」に今まで何度騙されたことか…

 

 

何か言った?

 

僕ね、最近耳毛がたくさん生えてきて、余計なことが聞こえなくなってきたんだ。

 

年をとるのも悪いことばかりじゃないね。

 

でも、いつから生えてきたんだろう、この耳毛?

 

40歳の時はまだ無かった気がするんだけど…

 

 

あんたの耳毛の話なんてどうでもいい!

 

さっさと本題に入れ!

 

 

佐々成政と本多忠勝といえば、どっちが強いかって話があって…

 

 

あんたどうゆう耳してんだよ!

 

ニガヨモギの幻覚幻聴成分ツヨンに脳の中枢まで侵されてるんじゃねえのか!?

 

 

まあまあ、落ち着いて。

 

これでも聴いてクールダウンしなよ。

 

 

 

何度聴いてもいい曲だな。

 

シンプルなのに、何かドラマ性を感じる。

 

 

だってこの曲は、主(神)から福音記者ヨハネへのメッセージだからね。

 

トランペットの音色で「7つの教会への伝言」を表現しているんだ。

 

トム・ウェイツは、エドワード・ホッパーの代表作『Nighthawks(ナイトホークス:夜ふかしする人々)』を観た時に、大きなインスピレーションを受けたに違いない…

 

あの絵からトム・ウェイツは『ヨハネの黙示録』を感じ取り、『クロージング・タイム』という曲を作り、それを展開させる形でデビューアルバムの全体像を構築したんだ…

 

『Nighthawks』Edward Hopper

 

 

この絵のどこをどう見たら『ヨハネの黙示録』やねん。

 

妄想も、たいがいにせえや。

 

 

前回も解説した通り、この絵はホッパーの無意識下での心理「迫り来る世界最終戦争への不安」が描かれたものだ。

 

ホッパーに限らず、当時の欧米人は似たような思いを抱いていた。

 

そして欧米人にとって「世界最終戦争」とは『ヨハネの黙示録』を想起せずにはいられないもの…

 

7人の天使が7つのラッパを吹いて禍をもたらし、世界は地獄のような破滅を迎えるんだ…

 

 

人類は滅びちゃうの?

 

 

その破滅から救われる方法は、ただひとつ…

 

主の言うことに耳を傾け、それを守り続けることだ。

 

それが語られるのが『ヨハネの黙示録』第2〜3章「7つの教会への伝言」というわけ。

 

ホッパーはそれを『Nighthawks』の中に落とし込んだ…

 

 

マジで?

 

また適当なこと言ってんじゃないの?

 

 

ここに知恵が必要だ。

 

絵の中には「7つ描かれたもの」がある。

 

その7という数が「七つの教会」を指している…

 

 

 

絵の中に7つあるものといったら…

 

イス…?

 

 

その通り。

 

ホッパーは店内の「7つの椅子」と、その上に配置したもので、『ヨハネの黙示録』第2〜3章「7つの教会への伝言」を表現したんだよ。

 

 

 

ええ!?

 

 

では解説していこう。

 

まず7つの教会の第1「Ephesus(エペソ)」へのメッセージは、第1章のラストにある導入部から続くように描かれる。

 

ここで面白いことを僕は発見した。

 

この部分からトム・ウェイツの「ある曲」が頭に浮かんでこない?

 

1:19 そこで、あなたの見たこと、現在のこと、今後起ろうとすることを、書きとめなさい。

1:20 あなたがわたしの右手に見た七つの星(seven stars)と、七つの金の燭台(seven golden lampstands)との奥義は、こうである。すなわち、七つの星は七つの教会の御使であり、七つの燭台は七つの教会である。

2:1 エペソにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『右の手に七つの星を持つ者、七つの金の燭台の間を歩く者が、次のように言われる。

 

 

トム・ウェイツの曲との関連性はよくわからないけど、「7つの星と7つの燭台の奥義」って何だかカッコいいね。

 

北斗神拳みたい。

 

 

この部分が1曲目『Ol' 55』の元ネタになったんだ。

 

「七つの星」が「車やトラック」のことで、「七つの燭台」が「高速道路や車のライト」のことなんだよ。

 

 

なぬ!?

 

 

トム・ウェイツは「7つの燭台の間を歩く者」から「フリーウェイの車線」をイメージしたんだ。

 

カリフォルニアでは「片側7車線」なんて普通だからね。

 

最大「9車線」まであるらしい…

 

 

そして「lampstands(燭台)」という単語も「フリーウェイ」を想起させる。

 

「lamp(ランプ)」と「ramp(ランプ)」の駄洒落だね。

 

 

ramp?

 

そういや高速道路で「ランプ」っちゅう言葉をよう聞くけど、あれは何のこと言うとるんや?

 

ジャンクションのことか?

 

 

「ramp(ランプ)」とは「高低差のある道路」という意味だよ。

 

「ジャンクション」のほうは「道路の結合部」だ。

 

アメリカの「フリーウェイ」とは「交差点や信号で走行が妨げらることのない道路」という定義なので、「ramp」で高低差をつけて交通をスムーズにする必要があったわけだ。

 

「ramp」via austrini

 

 

それを支える柱が「rampstand」か!

 

トム・ウェイツおもろい(笑)

 

 

そして「7つの星」とは「北斗七星」のこと。

 

人々を「不変の教え(北極星)」に導くものが「北斗七星」だったね。

 

夜空を見上げて、いきなり北極星を見つけることは難しい。

 

だから古来より人は、北斗七星を手掛かりに北極星を見つけていた。

 

これを「主の教え」に喩えているんだ。

 

神の考えていることを人間が理解するのは難しい。だから人の子イエスが人間の言葉で主の教えを説いたというわけ。

 

これをトム・ウェイツは「車やトラック」と表現した…

 

 

意味がわかりません(笑)

 

 

「北斗七星」って「人や荷物を運ぶ車」なんだよ。

 

西洋では北斗七星を「great chariot(偉大な車)」と呼ぶ。

 

そもそも古代ローマで「septentriones(牛が引く7つ星)」と呼ばれていたからなんだよね。

 

天の中心をグルグル回る様子から名付けられたんだろうけど、古代中国でも北斗七星は天帝の乗り物とされていた。

 

人間、考えることは一緒なんだね(笑)

 

 

そうだったのか!

 

 

そしてトム・ウェイツは『Ol' 55』の2番でこう歌った…

 

Where there's trucks all a-passin' me,

and the lights all a-flashin'

 

俺を追い越してゆくトラックたち

ライトが俺を眩しく照らす

 

これなんてまさに「7つの星」と「7つの燭台」からのイメージだね。

 

 

 

この二人、『Ol' 55』を歌いながら「Via Dolorosa(苦難の道)」を再現してる!

 

おかえもんの解説と一緒じゃんか!

 

『Ol' 55』解説

 

 

僕の読みが間違っていないことがわかるだろう。

 

多くの西洋人は、この歌から無意識のうちに「イエスの受難」のイメージを受け取る。イエスが十字架を背負って歩いた道のりをね…

 

 

ということで、第1の教会「Ephesus(エペソ)」について見てみよう。

 

まず主はエペソの人々が「忍耐強かった」ことを褒める。

 

でも「その忍耐の質」について、辛辣な意見を述べるんだ…

 

2:3 あなたは忍耐をし続け、わたしの名のために忍びとおして、弱り果てることがなかった。

2:4 しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは初めの愛から離れてしまった。

2:5 そこで、あなたはどこから落ちたかを思い起し、悔い改めて初めのわざを行いなさい。もし、そうしないで悔い改めなければ、わたしはあなたのところにきて、あなたの燭台をその場所から取りのけよう。

 

 

あなたは忍耐をし続けたけど、初めの愛から離れてしまった…?

 

あなたの燭台をその場所から取り除けよう…?

 

これって…まさか…

 

 

4曲目の『OLD SHOES(&PICTURE POSTCARDS)』だね。

 

向いていないのに勢いで「同棲」を始めてしまった主人公が、しばらくは忍耐強く辛抱したけど、最初の頃の愛の魔法を失ってしまい、雨の中で泣いている女を見捨てて出て行くというストーリーだった。

 

 

『OLD SHOES(&PICTURE POSTCARDS)』

 

 

なんか「選ばれなかった歌動画」紹介シリーズになってない?

 

 

彼のカバーは晩年のジョン・レノンみたいなテイストで捨てがたかったんだよね…

 

あの時どっちにしようかとても迷ったんだ。

 

だから紹介できる機会があればと思って…

 

 

そうゆう趣旨とちゃうやろ。

 

『ヨハネの黙示録』とホッパーの『Nighthawks』とトム・ウェイツの話や…

 

 

そうだった。僕としたことが(笑)

 

ホッパーの『Nighthawks』における、第1の教会エペソへのメッセージで重要な部分はここだね。

 

2:7 Whoever has ears, let them hear what the Spirit says to the churches. To the one who is victorious, I will give the right to eat from the tree of life, which is in the paradise of God.

2:7 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、神のパラダイスにある命の木の実を食べることを許そう』

 

 

てか、誰もいないじゃんか。エペソの席には。

 

 

 

「ドア」のことだよ。

 

あのドアの向こうにある食糧倉庫が「命の実がある楽園」に喩えられているんだ。

 

 

ああ!そう来るか、ホッパー!

 

 

そして第2の教会「Smyrna(スミルナ)」だ。

 

ホッパーの絵で「2つ目の椅子の上」に描かれるのは「カウンターの中にいる従業員」だね。

 

彼は目の前に座るカップルに何か言われて、明らかに狼狽している…

 

 

 

女が食うとるサンドイッチへのクレームやな…

 

おそらくこんな感じや…

 

 

女「何このパン、変な色…。緑色やわ」

 

男「わしの女にカビの生えたモン食わす気か?」

 

従業員「いえ…そんな…」

 

 

 

まあ、そんなところだろうね。

 

ホッパーは「第2の教会スミルナへの伝言」から、このシチュエーションを考案したに違いない…

 

スミルナの人々も、怖い連中に恫喝されていたんだ…

 

2:9 わたしは、あなたの苦難や、貧しさを知っている(しかし実際は、あなたは富んでいるのだ)。また、ユダヤ人と自称してはいるが、その実ユダヤ人でなくてサタンの会堂に属する者たちにそしられていることも、わたしは知っている。

2:10 あなたの受けようとする苦しみを恐れてはならない。見よ、悪魔が、あなたがたの内のある者を試すために、獄に入れようとしている。あなたがたは十日の間、苦難にあうであろう。死に至るまで忠実であれ。そうすれば、命の冠を与えよう。

 

 

ユダヤ人を自称する、サタンの会堂に属する者たちにそしられる!?

 

従業員にイチャモンつけてるあの男は「サタンの会堂に属する者」だったのか!

 

 

初期の教会は「ユダヤ人問題」で揉めていた。

 

割礼をしているユダヤ人の信徒が「自分たちだけが本物の信徒」だと主張し、割礼をしてない非ユダヤ人の信徒を見下していたんだ。

 

イエスと使徒たちは皆ユダヤ人だったからね。イエス自身も「戒律を守ることは重要だ」と言っていたわけだし。

 

だから教会幹部は事態の収拾に苦労することになった。

 

ただでさえ各地のユダヤ人コミュニティの中で「異端」だと非難されていたのに、内部でも揉めていたら空中分解してしまう。

 

ペトロやパウロといった大幹部も事態収拾へ向けた書簡を書いたり、直接現地に赴いて信徒をまとめ上げようとしたんだ。

 

「サタンの会堂に属する者」は、ちょっと言い過ぎだと思うけどね…

 

 

じゃあ、あの従業員は獄に入れられちゃうの?

 

 

ホッパーが大好きだったヘミングウェイの小説『The Killers(殺し屋)』では、食堂に入って来てサンドイッチをオーダーした二人組の客によって、コックの若者は縛り上げられ食糧倉庫に監禁される。

 

まさに第2の教会スミルナの人々みたいに。

 

 

なんてこった…

 

 

そして第3の教会「Pergamum(ペルガモ)」の場所に位置するのは「サンドイッチを食べる、赤い服の女」だね。

 

 

かなり「ケバい」ねーちゃんや。どう見ても娼婦やな…

 

こいつもサタンの仲間か?

 

 

第3の教会「ペルガモ」への伝言は、こうなっている…

 

2:13 わたしはあなたの住んでいる所を知っている。そこにはサタンの座がある。あなたは、わたしの名を堅く持ちつづけ、わたしの忠実な証人が、アンテパスの治世にあなたがたの所で殺された時でさえ、わたしに対する信仰を捨てなかった。

2:14 しかし、あなたに対して責むべきことが少しばかりある。あなたがたの中には、現にバラムの教を奉じている者がある。バラムは、バラクに教え込み、イスラエルの子らの前につまずきになるものを置かせて、偶像に捧げたものを食べさせ、また不品行をさせたのである。

 

サタンの座があるところに住んでる!?

 

偶像に捧げたものを食べさせ、不品行をさせた!?

 

 

これは『旧約聖書』の『民数記』の引用だ。

 

イスラエルの民はモーセに率いられエジプトを脱出し、約束の地を目指していた。

 

だけどある時、男たちがモアブ人の女たちにハマってしまう。

 

モアブ人の女と一緒に偶像に捧げたものを食べ、淫らな行為に耽ってしまったんだね。

 

これに激怒した神は、イスラエルの民2万4千人を罰として殺した。

 

 

2万4千人って…

 

だけど、おかえもんは物知りだよね。なんでこんなこと知ってるの?

 

 

『民数記』は『バベットの晩餐会』の元ネタでもあるからね。

 

前に書いてたシリーズの時に、いろいろ調べたんだよ。

 

『バベットの晩餐会』徹底解説

 

バベットが当選する「富くじ(Numbers)」って、実は『民数記(Numbers)』のことなんだ。

 

英語だと、どちらも「Numbers」なんだよね(笑)

 

イサク・ディーネセンの原作を読んで、この2つが駄洒落になっていることに気が付いたというわけ。

 

 

いろいろ繋がるな…

 

 

だから話があちこち飛んでしまうんだけどね。

 

さて、ペルガモの人々にはこんなメッセージも伝えられる…

 

2:16 だから、悔い改めなさい。そうしないと、わたしはすぐにあなたのところに行き、わたしの口のつるぎをもって彼らと戦おう。

2:17 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、隠されているマナを与えよう。また、白い石を与えよう。この石の上には、これを受ける者のほかだれも知らない新しい名が書いてある』。

 

 

だから第3の教会ペルガモの位置に「サンドイッチを食べる、いかにも不品行なケバい女」なんだな…

 

 

ちなみに、ペルガモにあると指摘された「サタンの座」も、ホッパーはちゃんと描き入れている。

 

 

ええ!?どこ?

 

 

従業員の視点から女を見ると、おそらくこんな風に見えるはずだ…

 

 

 

なんだよあれは!?

 

何であんなとこに「玉座」があるんだ!?

 

 

どうしてもホッパーは「サタンの座」を絵の中に描き入れたかったんだよ…

 

だけど女を大袈裟な椅子に座らせるのは不自然過ぎる…

 

だから従業員から見た女の背後に描いたんだ…

 

あんなところにポツンと「不自然な物体」を描く意味って他にあると思う?

 

 

ありません…

 

恐るべし、エドワード・ホッパー…

 

 

そしてそれを見抜いた僕も、だよね?

 

 

尊敬します、おかえもん!

 

今まであなたを疑うようなことを口にして申し訳ありませんでした!

 

 

わかればよろしい。

 

土下座して僕の足なめて頂戴。

 

指の付け根も念入りに。

 

 

はは〜!

 

 

あ、あかん…

 

完璧にオッサンを調子づかせてもうたやんけ…

 

せやけどオッサンの言うことを全て真に受けたらエライことになるんやで…

 

おい、聞いとるんか、そこの小僧!

 

オッサンの足の指の間を舐めとる場合やあらへんで!

 

こいつの言うとることは全部「知ったかぶり」や!鵜呑みにしたらアカン!

 

 

ふふふ。

 

僕の「知ったかぶり」を甘く見ちゃいけないよ…

 

 

 

ズコっ!

 

なんだこれ(笑)

 

 

お後がよろしいところで、第4の教会以降はまたの機会に。

 

次回、最終回でお目にかかりましょう。

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

風の歌を聴け!ラッパの音を聴け!ホッパーの声を聴け!〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説16

  • 2018.10.25 Thursday
  • 22:07

 

 

 

 

 

さて、TOM WAITSのデビューアルバム『CLOSING TIME』の解説も、ついに12曲目、最後の曲となった…

 

ラストを締め括るのは、アルバムタイトルにもなっている『CLOSING TIME』だ。

 

 

歌詞の無いインスト曲だけどね…

 

 

 

では今回は無駄話をせずに、さっそく歌を聴いてもらおうか。

 

 

 

エドワード・ホッパーの絵やな。

 

トム・ウェイツも影響を受けたと言われとる画家や。

 

せやけどやっぱり「歌詞」はない。「歌」やのうて「曲」やで。

 

 

なぜ「歌詞が無い」と決めつける?

 

僕にはありありと「歌声」が聴こえるんだけどね。

 

 

ハァ!?

 

何言ってんだ、このオッサン…

 

まさかニガヨモギの過剰摂取で幻聴が聞こえ出したとか…

 

真昼間からアブサンを飲んでるせいだ…

 

 

失礼な。僕はシラフだよ。

 

君たちの耳がおかしいんじゃない?

 

もう一度しっかり曲を聴いてみてよ。

 

 

何回聴いても同じだと思うんだけど…

 

・・・・・

 

やっぱり歌声なんて入っていません!

 

誰がどう聴いてもインスト曲!レコードに入ってる原曲も一緒!

 

 

 

やれやれ…

 

あんなに高らかに歌いまくっているじゃないか…

 

 

トランペットが。

 

 

 

トランペット!?

 

 

もう忘れたのかい?

 

『ヨハネの黙示録』では、主(神)の声は「トランペットのよう」と喩えられていた。

 

これは旧約時代からの名残りで、人間は神の肉声を直接聞いてはいけないことによる。

 

そもそも神の言語は人間には理解できないので、ラッパや雷や強風の音のように聞こえるんだね。

 

でも神に選ばれた者の頭の中では、それが不思議と人間の言葉に変換されるというわけだ。

 

モーセやムハンマドなど預言者たちは、そうやって神の言葉を人間の言葉に書き記してきた。

 

このトランペットが鳴り響く『クロージング・タイム』を聴いて、「歌が聞こえる者」と「聞こえない者」の二種類の人間がいるのは、そういう理由なのかもしれないな…

 

これぞまさしく「風の歌を聴け」だね…

 

 

 

妄想とウンチクが三度の飯より大好きな偽預言者がよく言うよ…

 

 

何か言った?

 

さて、このアルバムにおいて、トム・ウェイツは福音記者ヨハネを演じていた。

 

ヨハネが見聞きしたことを『ヨハネによる福音書』や『ヨハネの黙示録』に書いたように、トム・ウェイツは『クロージング・タイム』の各曲を書いたというわけだ。

 

あのジャケットのデザインは、それを表していたんだよね…

 

トム・ウェイツの目の前のタバコの吸い殻は、晩年ヨハネが常用していたとされる「ニガヨモギ」だった…

 

 

 

ああ、そうだったな…

 

前回のことをすっかり忘れてた…

 

 

だからアルバムのラストを締め括る曲に、トランペットが歌う『クロージング・タイム』を持ってきたわけだ。

 

新約聖書のラストを締め括る『ヨハネの黙示録』の「主の歌」を再現するためにね。

 

あのトランペットの旋律は『ヨハネの黙示録』第2〜3章に描かれる「7つの教会へのメッセージ」を表しているんだよ。

 

 

7つの教会へのメッセージ?

 

 

現在のシリアからトルコにかけての地域で布教活動していた7つの教会に宛てた、主からの伝言だ。

 

内容は叱咤激励というか、ほとんどが「ダメ出し」なんだよ。

 

1つだけ100%合格の教会を除いてね…

 

 

あれ?その話、どっかで聞いたよね?

 

 

『ロッキー』や…

 

フィラデルフィアが舞台に選ばれたのは、天国への門が開かれた唯一の教会「ヒラデルヒア」が元ネタ…

 

『ロッキー』という物語に隠されている秘密を今こそ語ろう!

 

 

解説シリーズを重ねるごとに様々な知識が蓄積されて、僕のセンサーはどんどん精度を増していくね。

 

今では西洋人作家の考えることが手に取るようにわかるような気がする。

 

トム・ウェイツがエドワード・ホッパーの代表作『Nighthawks(ナイトホークス:夜ふかしする人々)』を、アルバム『クロージング・タイム』の題材に選んだ理由もはっきりと理解できた。

 

『Nighthawks』Edward Hopper

 

 

この絵は『クロージング・タイム』やのうて、サードアルバム『Nighthawks at the Diner』の元ネタとちゃうんか?

 

 

 

『クロージング・タイム』もそうなんだよ。

 

よく見てごらん、この絵のシチュエーションを…

 

バーカウンターで飲みながら、離れたところにいる女を見つめる男…

 

男から離れたところにいる、ちょっとイイ女…

 

その隣でタバコを吸う別の男…

 

 

ああ!2曲目の『I hope that I don't fall in love with you』だ!

 

シンガーの女は演奏が終わった後に男の隣へ行ってタバコに火を付けて、主人公の僕は羨ましそうに見てるだけだった!

 

「ちなみに主人公の僕が惚れるシンガーは女じゃなくて男です」

 

 

最初に紹介した歌動画に出て来るホッパーの絵を見てもらえばわかると思うんだけど、他にも『クロージング・タイム』の各曲の元ネタになっているっぽい絵があったよね。

 

夏の夜に窓辺に佇む若いカップルを描いた『Summer Evening』なんて、まさに5曲目『ミッドナイト・ララバイ』だし…

 

『Summer Evening』Edward Hopper

 

古女房に怒鳴りつけられても聴く耳をもたず、別のことに想い耽っている初老の男の絵『Four Lane Road』は、40年も前の女のことが忘れられない男の歌『マーサ』だ…

 

たぶんこの後、ついに男は長距離電話をかけてしまう…

 

『Four Rane Road』Edward Hopper

 

 

そう来たか!

 

せやったら、女をドライブに誘い、モーテルにシケ込んだ瞬間を捉えた絵『Western Motel』は、1曲目『Ol' 55』やな(笑)

 

『Western Motel』Edward Hopper

 

 

トム・ウェイツの歌だと、このあとに振られちゃう(笑)

 

 

これでトム・ウェイツがデビュー前からエドワード・ホッパーの絵に影響されていたことがわかったと思う。

 

でもやっぱり最も重要なのは『Nighthawks』だね。

 

この絵から若き日のトム・ウェイツは多大なるインスピレーションを受け、数々の歌を作った。

 

だからデビューアルバム『クロージング・タイム』を一言で言い表すと…

 

「福音記者ヨハネ  Nighthawks = CLOSING TIME」

 

と言える。

 

 

なんだそれ!?

 

 

まずエドワード・ホッパーと名画『Nighthawks』誕生までを簡単に解説しよう。

 

Edward Hopper(1882−1967)

 

エドワード・ホッパーは1882年にニューヨーク市の北にある小さな町で、割と厳格なオランダ系ピューリタンの両親のもとに生まれた。

 

小さい頃から絵が好きだったホッパーは、美術学校を卒業すると、ニューヨークで商業広告のイラストを描く仕事に就き、第一次世界大戦が勃発した1910年代には、ホッパーのイラストは高い評価を受けるようになっていった。

 

だけど「絵描き」としての成功を夢見るホッパーは、ジョゼフィーン(愛称ジョー)との結婚を機に、絵一本で行くことを決意。

 

イケイケだった1920年代のアメリカの好景気にも乗ってホッパーの絵は高値で売れ、大恐慌が訪れる前には絵描きとしての地位を確立し、暗黒の30年代も安定して作品を発表することができた。

 

そして1941年12月初旬のある日、ホッパーは『Night Hawks』の制作に取り掛かる。

 

妻ジョーの創作メモによると、それは「12月7日前後」のことだった…

 

 

制作開始日なんて、どうでもよくない?

 

 

どうでもよくないんだな。

 

この日付をみて何か気付かない?

 

 

1941年の12月7日?

 

アメリカから見た真珠湾攻撃の日やんけ。

 

 

その通り。

 

そしてこれを機に日本と同盟を結んでいた枢軸国ドイツ・イタリアもアメリカに宣戦布告した。

 

 

アメリカはナチスドイツと戦争してたんじゃないんだ。

 

 

孤立主義の伝統があるアメリカは、1939年に欧州で戦争が始まっても、表だって介入してこなかったんだ。

 

あっという間にドイツに欧州大陸のほとんどを占領され、イギリスも空爆を受けていたにも関わらず、これまでずっと参戦せずに後方支援に徹していたんだよ。

 

だけど日本のパールハーバー攻撃によって、ついに第二次世界大戦に参戦することになったんだ。

 

国土の東西、大西洋(ヨーロッパ)と太平洋(アジア・オセアニア)の両面での戦いにね。

 

これと時期を同じくして制作された『Nighthawks』には、当時のアメリカ国民の不安が色濃く反映されている…

 

 

アメリカは本土が前線から遠く離れとって安全やし、冷静に考えれば「負けはない戦争」やさかい、そこまで暗くならへんやろ?

 

 

そんなことはないんだよね。

 

ナチスドイツの快進撃と、日本によるハワイ急襲は、アメリカ人を大きく動揺させたんだ。

 

実際にロサンゼルスでは「日本軍襲来」という誤情報でパニックになった軍が高射砲を撃ちまくって、市民3人が落下してきた砲弾の破片で死亡し、3人が心臓発作で亡くなった。

 

「海を渡って日独軍がアメリカ本土に上陸してくる」という噂も広まり、「最悪の場合にアメリカ政府は、アパラチア山脈までをドイツに、ロッキー山脈までを日本に譲って、中央平原に遷都する」という説まで流布していたほどだ。

 

 

高い城の男やな…

 

 

高城剛?

 

 

『The Man in the High Catsle』だね。

 

あれは開戦当時、本当に「あるかもしれない」とアメリカ国民が考えていたことなんだ…

 

 

だから『Nighthawks』も、全体的に「緊張感」や「不穏な空気」が支配しているんだよ。

 

深夜あんな格好をしてサンドウィッチを食べてる女性は、どう考えても娼婦だ。その横で険しい顔をしてタバコを吸っているのは女を管理しているギャングだよね。

 

カウンターの中のコックは、何かを言われたのか、明らかに少し緊張している。

 

そしてカウンターの別サイドに座る男は、顔が見えないけど、三人のやり取りに意識を向けていることが背中から感じられる。

 

間違いなくこの後に「何か嫌なこと」が起こる予感をさせる絵だ…

 

 

 

そう言われてみれば、そうかも…

 

 

それにこの絵は、ジョーの創作メモによると『Nighthawks(夜ふかしする人々)』ではなく、『Night Hawks(夜の鷹たち)』というタイトルになるはずだった。

 

「赤いブラウスの女」の隣に座る男が「Night Hawk(夜の鷹)」なんだよね。この男だけわざわざ創作メモに「わし鼻」と書かれている。

 

わし鼻の彼と女と背中越しの男の三人で「Night Hawks(夜の鷹たち)」なんだ…

 

 

夜の鷹たち?どうゆう意味?

 

 

「Hawks」というのは「タカ派」という意味だね。戦争好きの強硬論者という意味だ。

 

そして「Night」には「夜の闇・黒」という意味もある。

 

つまり「Night Hawks」には「好戦的な黒い鷹とその仲間たち」という意味が隠されているんだ…

 

もうわかったでしょ?

 

「黒い鷹」といえば…

 

 

神聖ローマ帝国から続くドイツの国章だ!

 

 

 

そして「Night Hawk」の隣に座る「赤いブラウスの女」がイタリアなんだ。

 

サンドイッチを食べてるからね。

 

 

サンドイッチはイギリスだろ!

 

イタリアならピザだ!

 

 

あわてない、あわてない。よく見て欲しいな。

 

ホッパーは「赤色のブラウスを着た白人女性」に面白い仕掛けを施したんだ。

 

あのサンドイッチをよ〜く見てみると、なぜか「緑色」なんだよね…

 

服の「赤」と、肌の「白」と、サンドイッチの「緑」で「イタリア」が完成するんだ…

 

 

 

げげぇ!

 

これは金田一耕助も真っ青だ!

 

 

アズーリだけにね(笑)

 

さて、ジョーの創作メモには「背中越しの男」は「薄気味悪い」と書かれている。

 

これは残る三国同盟の一角「日本」のことだね。

 

当時の日本人はアメリカ人から「何を考えているかわからない」と思われていた。

 

言葉も宗教も文化も全く違うから不気味な存在だったんだよね。

 

だからアメリカ社会に溶け込んでいた白人のドイツ系やイタリア系と異なり、日系人だけ強制収容所に入れられてしまうことになる。

 

まあそもそも1924年の移民法で日系人は「アメリカに増えるのが好ましくない」という指定を受けていたから、仕方なかったんだけど…

 

 

じゃあ三人の「Night Hawks」と対峙するコックさんは、日独伊と対峙したアメリカってこと?

 

 

だね。

 

ジョーの創作メモによると「茶色のカウンターの中には白い服を着たブロンドの好青年がいる」と書かれている。

 

彼だけ「善い人」なんだ。

 

つまり彼はアメリカ人の象徴で、アメリカの国章のハクトウワシのことなんだ。

 

 

 

なんだよこれ…

 

「斧琴菊(よきこときく)」みたいじゃんか…

 

おかえもんが本当に金田一に見えてきた…

 

 

「季が違ってる」とか、もう言わないでね。

 

 

はい、もう言いません…

 

 

でもね、実は答えが絵の中にちゃんと書かれているんだ。

 

この絵はホッパーの絵にしては珍しく「字」がたくさん書かれている絵なんだけど、それにはちゃんと意味が隠されていたんだよね…

 

 

字?

 

 

店の屋根にある茶色い部分の葉巻広告だよ。

 

このレストランにおいて「cherry wood(赤茶色)」は「アメリカ」を表す。だからちゃんと看板にも「アメリカ」が書かれているんだ。

 

よく見るとこう書かれてるね。

 

「ONLY 5¢ PHILLIES American No1」

 

 

 

ホントだ!

 

「American」の「ican」は欠けてるけど「アメリカ」って書いてある!

 

 

意味深やんけ…

 

 

そして「PHILLIES」とは「フィラデルフィア」のことだね。

 

フィラデルフィアは建国の地であり、アメリカの元首都だ。

 

名前の由来はギリシャ語で「Brotherly Love(兄弟愛)」という意味だった。

 

アメリカの参戦で人類史上最大の世界戦争が始まったことに対するホッパーの祈りのようなものを感じるな。

 

そして「ONLY5¢」にもね。

 

 

なぜ「ONLY5¢」にも?

 

 

「ONLY5¢」と書いて「ONLY IN GOD WE TRUST」と読むんだ。

 

 

ええ!?なんで?

 

 

1930年代になるまで、アメリカのモットー「IN GOD WE TRUST」が書かれたコインは「5セント硬貨(ニッケル)」だけだったんだ。

 

 

この5セント硬貨は、ホッパーが生まれた翌年1883年に製造が中止されて、その後しばらく硬貨に「IN GOD WE TRUST」は書かれていなかった。

 

現在は当たり前のように使われている「IN GOD WE TRUST」というモットーだけど、以前は賛否両論だったんだ。

 

「コインと神の名」というのは、敬虔なキリスト教徒にとっては「微妙」な組み合わせだからね…

 

 

カエサルのものはカエサルにカエサル…

 

 

まあとにかく、ホッパーは「ONLY5¢ PHILLIES American No1」というタバコ広告に「アメリカという国がどうあるべきか」という想いを込めた。

 

「ONLY5¢ PHILLIES American No1」という広告が、世界の終わりのような状況の中で、厳格なピューリタンの家庭に育ったホッパーにとっての最後の支えみたいなものだったんだろう…

 

 

「ican」が欠けているのが、やっぱり気になるんですけど…

 

 

そのあたりは本人にしかわからない。

 

奥さんのジョーも、それについては創作メモに何も書き残していなかった。

 

意味があるのかもしれないし、ないのかもしれない…

 

ホッパーは作品について語ることを嫌い、常々「すべての答えはキャンバスの中にある」と言っていた人だから、作品を見た人それぞれが感じ取ればいいんじゃないのかな。

 

正解なんて無いんだから。

 

さて、ここまでの話をまとめてみると、こういうことになる。

 

 

 

 

これまでもいろいろ驚かされたけど、これはインパクト大だったな…

 

超有名な絵だし…

 

 

まだ前フリだよ。ここからが本題だ。

 

「なぜトム・ウェイツは福音記者ヨハネとエドワード・ホッパーを掛け合わせてアルバムを制作したのか?」という謎を解き明かさなければならない。

 

 

もう十分じゃない?

 

「聖書ネタが好きでした」と「エドワード・ホッパーが好きでした」でいいじゃん…

 

 

そんな生ぬるいオチで満足するような人間だと思われたくはないね。

 

僕はネズミ年の乙女座だから、完璧主義者で、しつこいんだ。

 

 

ネズミ年の乙女座って、なんかディズニーランドでミッキー耳付けてはしゃぐ女子高生みたい…

 

「ヘビ年のサソリ座」とかならわかるけど…

 

 

君たちは本当に失礼だね。

 

次回、吠え面かくなよ。

 

ということで、続きは次回の講釈で…

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

「月の歌ではありません。星の歌なんです!」(GRAPEFRUIT MOON)〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説15

  • 2018.10.23 Tuesday
  • 23:15

 

 

 

 

 

さて、TOM WAITS(トム・ウェイツ)のデビュー作『CLOSING TIME(クロージング・タイム)』の11曲目(B面5曲目)の『GRAPEFRUIT MOON(グレープフルーツ・ムーン)』の話をしよう。

 

 

 

このアルバムの中でも『Ol' 55』や『マーサ』『ロージー』と並んで人気のある曲やな。

 

 

そうだね。たくさんの人がこの曲を歌っている。

 

僕の家の近所にも「GRAPEFRUIT MOON」というライブ演奏付きのバーがあるくらいだ。

 

 

「Martha」や「Rosie」っちゅうバーもあるで。ええ店や。

 

 

ちなみに『Martha』と『Rosie』のストーリーを足して二で割ったような映画があるんだけど、知ってる?

 

 

なにそれ?

 

 

この『Love, Rosie』(邦題:あと1センチの恋)という映画は、『マーサ」と『ロージー』の歌詞をベースに、『クロージング・タイム』の各曲を元ネタにして作られた作品なんだ。

 

トム・ウェイツの歌は流れないけど、映画は全編を通して『クロージング・タイム』のモチーフで構成されている…

 

 

 

マジですか!?

 

「ヘドウィグと怒りの1インチ」みたいな邦題だけど…

 

 

原作はアイルランドのセシリア・アハーンという人の小説なんだけど、彼女はちょっと面白いんだ。

 

いつか彼女の作品についても話そうと思う…

 

 

さて、本題の『グレープフルーツ・ムーン』を聴いてもらおうかな。

 

今回は白組からだ。

 

アイルランドが出たついでだから、アイルランド人のカバーで行こう。

 

元プロのラグビー選手で、引退後はミュージシャンとして活躍し、アルバムがアイルランドチャートで1位になったこともある「BRESSIE(ブレッシー)」ことニール・ブレスリンの登場だ!

 

 

 

ラグビーのプロ選手からミュージシャンに!?

 

すご〜い!

 

 

この『クロージング・タイム』というアルバムのジャケットでも歌詞の中でも、トム・ウェイツは「黒ビール」を飲むから、アイルランド人はぴったりだよね。

 

 

なかなかやるやんけ…

 

せやけど紅組も負けてはおらへんで。

 

アメリカ・メイン州の肝っ玉ウクレレ姐さん、イライザ・ルース・ワトソンの登場や!

 

 

 

いいねえ、この『グレープフルーツ・ムーン』も。

 

 

さあ、これまで紅白11組が勝負したトム・ウェイツ歌合戦、どっちの勝ちや?

 

そこのチビの審査員!軍配はどっちや!?

 

 

突然そんなこと言われても…

 

歌ってくれた人たちは、みんな甲乙つけがたいし…

 

引き分けじゃダメ?

 

 

いいんじゃない?引き分けで。

 

本家の紅白歌合戦も勝敗をつけることが目的ではないんだから。

 

 

せやな。歌は優劣つけるもんやない。

 

男女も争うんやのうて和合するもんや。

 

 

というわけで、最後はこの『グレープフルーツ・ムーン』で締め括ろうか。

 

イスラエルのKama VardiとYaron Fishmanのカップルによるデュエットだ。

 

エルサレムの夜空に浮かぶグレープフルーツ・ムーンに愛と平和の想いを馳せながら聴くとしよう…

 

 

 

世界人類が平和でありますように。

 

 

ホントにそうだよね。

 

では皆さん、さようなら。よいお年を。

 

 

なに終わってんだよ!歌の解説がまだだろ!

 

最後くらい真面目にやれ!

 

 

反省。。。

 

 

だからそうゆうのが要らないって言ってるんだけど…

 

 

前フリはこれくらいにして、そろそろ本題に入ろう。

 

と、その前に、まず1つ謝っておきたいことがある。

 

以前『グレープフルーツ・ムーン』は「ヘロデ大王の歌」だと紹介したけど、僕の早とちりだった。

 

この歌も前曲に続いて「ヨハネ(使徒&福音記者)」が主人公だ。ごめん。

 

僕はいつも考えをまとめてから書くのではなく、書きながら思索を進めていくタイプの人間なので、時々こういうことが起こる。

 

そしてこれからも同様のことがあるだろうから、何卒ご了承のほどを。

 

「こいつ、前に言ってたことと違う!」とか怒らないでね。

 

 

ぶ〜ラジャー!

 

 

では歌詞を見ていこう。まずは1番。

 

Grapefruit moon, one star shining,

shining down on me

 

何気ない歌詞だけど、ほとんどの人がタイトルとこの出だしで躓いてしまう。

 

トム・ウェイツは、とんでもない「罠」を仕掛けてくれたよね。

 

 

つまづく?罠?

 

「グレープフルーツみたいな月と、1つの輝く星が、地上の僕を照らす」やろ?

 

どこがトラッピーやねん。

 

 

その安易な思い込みが「浅はか」だと言うんだよ。

 

この歌の主人公は「輝く1つの星」へ思いを馳せているんだ。

 

「グレープフルーツみたいな月」は、あくまで「輝く1つの星」の「引き立て役」、つまり脇役なんだよね。

 

 

なぬ!?

 

 

歌詞をよく読めばわかること。

 

煌々とした満月が他の星々を消して「輝く1つの星」だけが見える、というわけなんだ。

 

歌の趣旨からするとタイトルを『YOU'RE MY ONLY SHINING STAR』とすべきなんだろうけど、そうしちゃうと「バレバレ」になっちゃうから、ダミーに月を持ってきたんだろうね…

 

 

そんなタイトルの歌があったな…

 

 

 

「輝く1つの星」へ想いを馳せる歌といえば、こんなのもあったね。

 

 

 

まさに『グレープフルーツ・ムーン』という歌は、一休さんの『ははうえさま』に近い…

 

どちらも「会うことが出来ない相手」を想う歌…

 

前者は天上人への想い、後者は殿上人への想いだ…

 

 

っちゅうことは「one star shining」はイエス・キリストのことを言うとるわけやな…

 

 

もちろん。

 

「Grapefruit moon, and one star shining, shining down on me」という歌詞は、またこの絵がモチーフになっているんだね。

 

使徒ヨハネが夢に見た相手は「月」じゃなくて「輝く星イエス」だったから…

 

『ゲッセマネの祈り』ジョルジョ・ヴァザーリ

 

 

またこの絵か!

 

ここまで来ると、もはや否定できないな…

 

 

そして続く歌詞では、主人公が過去を回想して歌っていることが明らかにされる…

 

Heard that tune, and now I'm pining,

honey, can't you see?

 

「that tune」というのは、イエスの物語「福音」という意味だ。

 

元々聖書というのは「歌う」ものだ。ただ文章として読むのではなくて、節をつけて歌うものなんだよね。

 

だから、歌詞を訳すとこんなふうになる…

 

あなた様の最期の日のことを想うと

私の心は張り裂けんばかりになります

主よ、おわかりになられますか?

 

 

「Can't you see」といえば…

 

 

 

もういい!

 

 

でもこの角松敏生の歌も「隠れゴスペル」だね。

 

夜中に去って行く「最愛の人」はゲッセマネから連行されたイエスのことだし、「影が残っていたシーツ」とはイエスの血の跡が残った「聖骸布」のことだ…

 

3番はローマ郊外の街道に現れたイエスを歌ったものだから、使徒ペトロが主人公の歌なんだろう。

 

まさに森山直太朗の『明けない夜はないってことを明けない夜に考えていた』と同じだね。

 

さらに言うとボブ・ディランの『スペイン革のブーツ』やジャック・ケルアックの『孤独な旅人』と同じテーマであり…

 

 

 

ウンチクはいいから、さっさと話を進めろ!

 

 

ごめんごめん。この話になるとつい…

 

さて、歌詞はこう続く。

 

'Cause every time I hear that melody,

well, something breaks inside

And the grapefruit moon, one star shining,

can't turn back the tide

 

 

「tune」を「melody」に置き換えただけで、さっきと同じ内容じゃんか。

 

 

そうだね。

 

だけどここは「なぜ主人公ヨハネの心に想いが募るのか」の説明なんだよ。

 

次の「break」という言葉がポイントだね。

 

「break」は「壊れる」という意味の他に「(知らせが)伝えられる」という意味もある…

 

つまり「心の中で何かが壊れる」んじゃなくて…

 

something breaks inside

私の中に何かが伝えられる

 

という意味になっていたわけだ…

 

 

ヨハネの黙示録…

 

『福音記者ヨハネ』ドメニキーノ(ドメニコ・ザンピエリ)

 

 

その通り。

 

最後の「can't turn back the tide(時の流れを戻すことは出来ない)」は説明不要だね。

 

では2番へ行こう。

 

Never had no destinations,

could not get across
You became my inspiration,

oh but what a cost

 

 

到達できない目的地など決してなかった?

 

なんのこっちゃ?

 

 

わかった!「across」は「a cross」なんだよ!

 

これまでの歌で「close」や「cloth」がそうだったように!

 

 

イグザクトリー。

 

Never had no destinations, could not get a cross

十字架に架けられないという結末などあり得なかった

 

という意味なんだね。

 

だからヨハネはこう歌ったんだ…

 

You became my inspiration, 

あなた様の死は私のインスピレイションとなりました

oh but what a cost

しかし何という高い代償なのでしょうか!

 

 

 

福音記者ヨハネ…じゃなくてトム・ウェイツ、うまい!

 

 

続く歌詞は1番とほぼ同じだから、3番へ進もう。

 

Now I'm smoking cigarettes and I strive for purity
And I slip just like the stars into obscurity

 

ここで主人公は突然こんなことを言い出す。

 

今、タバコを吸っている

自分自身が汚れてしまわないように

そして消えゆく星たちのように

滑り落ちてゆく

 

 

ふつう逆でしょ!

 

タバコはあなたを汚します!

 

 

お前は海外タバコのパッケージか。

 

タバコっちゅうのはな、昔は神聖なものでもあったんや。

 

インディアンの例を挙げずとも、仲間が死んだ時とかタバコを線香代わりにしたりしてな…

 

 

そんなの田舎のヤンキーと団塊世代の編集者だけだよ!

 

 

うまいこと言うね、若いのに。

 

さて、ここでトム・ウェイツが「清らかさを保つためにタバコを吸う」と歌ったことには、当然のことだけど、別の意味が隠されているんだ。

 

これは使徒&福音記者ヨハネの歌だよね。

 

パトモス島に流された晩年のヨハネは、体を蝕む苦痛を和らげるために鎮静作用のあるハーブ「ニガヨモギ」を常用していたという説があるんだよ。

 

 

にがよもぎ?なにそれ?

 

 

ヨーロッパのアル中オヤジが飲む酒アブサンの原料やな。

 

 

 

むかしバーテンダーだった頃、よく飲んだなアブサンを。

 

ちなみにマティーニなどのカクテルなどで有名なハーブ酒「ベルモット」の名前の由来でもある。

 

ニガヨモギはドイツ語で「wermud」といい、それが転訛したのが「vermouth(ベルモット)」なんだよ。

 

このニガヨモギは古来から薬草として重用されていた。

 

草に含まれる成分ツジョン(ツヨン)に鎮静作用があるんだけど、これには常習性があって、大量に摂取すると幻覚・錯乱・麻痺などを引き起こす。

 

この「ニガヨモギ」の常用による副作用で、ヨハネは昼夜を問わず幻覚・幻聴に襲われたと言われているんだ。

 

だから『ヨハネの黙示録』には「ニガヨモギ」という名の恐ろしい「星」が登場するというわけ…

 

8:10 第三の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が、空から落ちてきた。そしてそれは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。

8:11 この星の名は「苦よもぎ」と言い、水の三分の一が「苦よもぎ」のように苦くなった。水が苦くなったので、そのために多くの人が死んだ。

 

 

鎮静作用のあるハーブ…

 

そして「燃えながら落ちて来る星」…

 

なんだよ、これ…

 

 

ここからトム・ウェイツは歌詞をインスパイアされたわけだね。

 

ついでに言っておくと、何度も紹介したジョルジョ・ヴァザーリの『ゲッセマネの祈り』にも「ニガヨモギ」が描かれているんだ。

 

眠りに落ちる使徒ヨハネの目の前に「ニガヨモギ」が生えているんだよね。

 

まるで「ニガヨモギ」のせいで眠りに落ちたかのように…

 

 

 

うわあ…

 

 

そう考えると「And I slip just like the stars into obscurity(星たちのように意識が朧げになってゆく)」の「the stars」の意味も見えて来る…

 

ヨハネの両脇で眠ってしまった両使徒、ペトロとヤコブのことだね。

 

 

 

なるほど…

 

「the stars(使徒たち)」は「shining one star(主)」と格が違うから「obscurity(ぼんやりする)」わけだな…

 

トム・ウェイツ、おそるべし…

 

 

さらに歌詞はこう続く。

 

'Cause every time I hear that melody,

well, puts me up a tree
And the grapefruit moon,

one star shining, is all that I can see

 

「主の歌を聞く時は毎回、木の上に置かれる」というんだね。

 

この「put me up a tree」という慣用句は「逃げ場がなくなる」という意味なんだけど、トム・ウェイツは「tree」に「ニガヨモギ」を被せているんだ。

 

「主の歌を聴く時は毎回、ニガヨモギを服用している」という意味になってるんだよ。

 

 

なんでニガヨモギが「木」なんだ?

 

どう見ても「草」でしょwww

 

 

トム・ウェイツや僕を甘く見ないで欲しいな。

 

ニガヨモギは英語で「worm wood」というんだよね。

 

草なのに木なんだよ(笑)

 

 

ズコっ!マジですか!

 

 

笑えるね。

 

ついでに言っておくと、引き立て役の「グレープフルーツ・ムーン」とは、グレープフルーツの果肉のように赤みがかった色の月のことを言う。

 

これも『ヨハネの黙示録』からの引用だ。

 

6:12 小羊が第六の封印を解いた時、わたしが見ていると、大地震が起って、太陽は毛織の荒布のように黒くなり、月は全面、血のようになり、

6:13 天の星は、いちじくのまだ青い実が大風に揺られて振り落されるように、地に落ちた。

 

 

血のような月!?

 

また星たちも落ちてるよ…

 

 

この記述も「グレープフルーツ・ムーン」の元ネタになってるね。

 

2:7 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、神のパラダイスにあるいのちの木の実を食べることをゆるそう』。

 

 

なんでこれがグレープフルーツ・ムーンなの?

 

 

「神のパラダイスにある命の木の実」って、グレープフルーツのことなんだ。

 

グレープフルーツの学名は「Citrus×Paradisi」というんだけど、これって最初に白人に「発見」された時に「エデンの園の命の木の実」だと思われたことによるんだよね。

 

彼らの中で、知恵の実はリンゴで、命の実はグレープフルーツだったんだ。

 

 

そうだったの!?

 

 

学名に付けちゃうくらいだから本気でそう思ったんだろう…

 

というわけで、この歌は完璧に「使徒&福音記者ヨハネ」の歌になっていたわけだ。

 

そしてトム・ウェイツは福音記者ヨハネに自分自身を重ねている。

 

主の歌にインスパイアされてヨハネが『ヨハネの黙示録』を書いたように、トム・ウェイツは『グレープフルーツ・ムーン』を…

 

いや、アルバム『クロージング・タイム』の各曲を書いたんだね…

 

 

ヨハネに自分自身を重ねる?

 

 

だからあのアルバムジャケットなんだよ。

 

あれって「ゲッセマネでのヨハネ」が元ネタなんだ…

 

 

譜面台に置かれた「タバコの吸い殻であふれた灰皿」が「ニガヨモギ」で…

 

ピアノの天辺に置かれた「酒瓶」が「イエス」で…

 

宙づりになった「照明」が、イエスを照らす「天使」で…

 

午前3時22分の時刻を知らせる「丸い時計」が「満月」なんだよ…

 

 

確かにポーズがよく似てる…

 

なんで今まで気付かなかったんだ…

 

 

仕掛けたトム・ウェイツが天才だからだよ。

 

半世紀もの間、みんなすっかり騙されていた…

 

かく言う僕も20年近く気付かなかったんだけどね…

 

まったくトム・ウェイツという男は大したもんだよ(笑)

 

 

この次のアルバム最後の曲『CLOSING TIME』はインスト曲だから、この解説シリーズもこれでお終いだな…

 

ジャケットの謎も解けたし、まさに「お後がよろしいようで(CLOSING TIME)」って感じ!

 

 

全11曲を「たったの15回」で終わらせるんやさかい、オッサンの解説にしては短くまとまった方や。

 

全30話くらい行くかと思っとったわ。

 

 

まだ僕は一言も「最終回」だなんて言ってないけど。

 

 

なぬ?

 

 

僕の中では、まだ序章に過ぎない…

 

ここまでは単純に各曲を解説しただけだからね…

 

 

な、なに言うとんのや…

 

もう十分ウンチクたれたやんけ…

 

 

まだトム・ウェイツが「なぜここまで徹底してイエスの物語を描いたか」という謎が残ってる…

 

それにやっぱり12曲目『CLOSING TIME』も解説しなきゃいけない…

 

 

解説するもなにも、歌詞が無いじゃんか…

 

 

天才トム・ウェイツが、何の意味も無い曲をアルバムのラストに入れると思う?

 

何か重要な意図があったと考えるのが普通じゃないかな?

 

 

確かにそうだけど…

 

歌詞も無いのに、いったい何を読み取れるというんだ?

 

 

ふふふ…

 

それは次回の講釈で。

 

想像を絶する展開が待ってるよ…

 

お楽しみに。

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

LITTLE TRIP TO HEAVEN(ON THE WINGS OF YOUR LOVE)〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説14

  • 2018.10.21 Sunday
  • 22:06

 

 

 

 

 

さて、今回はB面4曲目の『LITTLE TRIP TO HEAVEN(ON THE WINGS OF YOUR LOVE)』を解説しよう。

 

 

天国への小旅行(あなたの愛の翼に乗って)…

 

意味深な括弧のサブタイトル付きか。

 

A面4曲目の『OLD SHOES(& PICTURE POSTCARDS)』以来やな。

 

 

あの(&PICTURE POSTCARDS)には重大な秘密が隠されていたけど、今回もやっぱりそうなのかな?

 

 

もちろん。天才トム・ウェイツのやることに意味のないものはない。

 

でなきゃ、わざわざサブタイトルなんて付けないよね。

 

ということで、さっそく歌を聴くことにしよう。

 

今回は紅組からだよ。

 

 

よっしゃ!

 

前回は紅組白組共にプロのカバーやったけど、今回は原点に戻って、頑張っとる素人の歌動画で行きまっせ!

 

歌ってくれるのは、ヨランダ・リムや!

 

 

 

なんかいい感じ。原田知世が出るCMとかで流れそう。

 

 

しかも再生回数が14ヵ月で130回っちゅうのがええやろ。

 

埋もれとった掘り出し物を見つける「目利き」の気分や。

 

 

それなら僕も「目利き」ぶりを披露しちゃおうかな。

 

白組はジェイソン・コルソンの歌う『LITTLE TRIP TO HEAVEN』だ。

 

彼の再生回数は、なんと27ヶ月で、たったの60回だよ!

 

 

 

おお…

 

100パー誰も気にしてへんのに、歌う前に「この髪型は今日のひどい湿気のせいで…」とかエクスキューズ入れるあたり、めっちゃ素人萌えするやんけ…

 

 

何を競い合う歌合戦なんだよ。

 

 

歌動画には、いろんな楽しみ方があるってことだね。

 

流行ってるもの、バズってるものに乗っかるのは誰でも出来るけど、僕はそんなものに興味はない。

 

僕は誰も踏んでいない道、誰も通ろうとしない道を歩むことに価値があると考える人間なんだ。

 

『Martha(マーサ)』の回に紹介したロバート・フロストの詩『The Road Not Taken(選ばれざる道)』のようにね…

 

 

 

常に日の当たらん人生街道を歩んできたオッサンらしい哲学や。

 

 

さて、まずはこの歌の「表向き」の内容を簡単に紹介しよう。

 

歌詞の一行目でわかるように、かなりの「のろけ歌」になっているんだ。

 

Lazy trip to heaven on the wings of your love

お前の愛の翼に乗って、天国までのダラダラ旅行

 

以後延々とノロケ話が展開される。

 

お前がいると天国にいるみたいだ

お前が笑うと天国にいるみたいだ

俺たちの体は地面から離れられないけれど

探していた天国への鍵を見つけた気分

それがお前なんだ

 

わざわざ宇宙旅行なんかしなくていい

お前の顔を見てりゃ十分だ

気付いた時にはお前にぞっこん

お前の美しい体のラインを見るたびに

出会わせてくれた星の巡りに感謝だよ

お前は俺のインスピレーション

インスピレーションそのものなんだ

 

お前は俺の北極星

迷える子羊な俺を導いてくれるんだ

どんなに厚い雲で覆われようと必ず太陽は現れる

そうだよな?お前もそう思うだろ?

お前の周りじゃ他の星は霞んで見える

お前の笑顔を見るたびに

出会わせてくれた星の巡りに感謝だよ

お前に代わるものなど有り得ない

それがお前なんだ

シュビドゥバダッダ〜

 

 

 

のろけ過ぎ。聞いてるこっちが恥ずかしい(笑)

 

 

だよね。恥ずかしいくらいのラブソングだ。

 

しかも時代性が感じられる内容になっている。

 

 

時代性?

 

 

「月と宇宙」がキーワードになってるのは、この歌が作られた1971年当時の「月旅行ブーム」を受けてのものだよね。

 

1969年にアポロ11号のクルーが人類史上初めて月面を歩き、その後も月には多くのアメリカ人が降り立った。

 

 

いま丁度ニール・アームストロング船長の映画をやっとるな。

 

『ラ・ラ・ランド』の監督デイミアン・チャゼルの『ファースト・マン』や。

 

 

 

そんな空前の宇宙旅行ブームの中で、トム・ウェイツは「宇宙なんか行かなくても、お前の顔を見てれば十分だ」と歌ったわけだ。

 

そして愛する彼女を「北極星」に例え、人生に迷える自分を導いてくれる存在だと歌った。

 

 

まるで灯台みたいな女神様だな(笑)

 

 

いや、冗談じゃなくて、まさに「灯台&女神」なんだよ。

 

トム・ウェイツは「自由の女神」のことを歌っているんだね。

 

 

 

なぬ!?

 

 

本来は灯台として建てられた「自由の女神」のモデルって「人々を導く北極星」なんだよ。

 

 

ドラクロワの絵がモデルとちゃうんか?

 

『民衆を導く自由の女神』ドラクロワ

 

 

ポーズはそうだけど、もっと有名なモデルがいるんだよ。

 

それが「ステラ・マリス(海の星の聖母)」つまり「北極星」なんだね。

 

STELLA MARIS

 

 

聖母マリアのこと?

 

 

その通り。

 

「マリア」という名前は、ヘブライ語では「Miryam(ミリアム)」だったよね。「海のしずく」という意味だ。

 

これがギリシャ語からラテン語に翻訳される過程で「Stella Maris(海の星)」となってしまった。

 

それ以来、聖母マリアは旅人や航海の守護「北極星」と同一視されるようになったんだ。

 

だから自由の女神は「7つの星の冠」を被っている。これは北極星を見つけるための北斗七星を表しているんだよね。

 

ちなみに北米のアカディア人の末裔たちは、この「ステラ・マリス」を自分たちの守護神とし、讃美歌『Ave Maris Stella(めでたし、海の星)』を仮想国家「アカディア国」の「国歌」としている。

 

 

 

アカディア人?

 

我が青春のアルカディアじゃなくて?

 

 

アカディア人とは、現在のカナダ・ケベック州とアメリカのニュー・イングランド地方の中間地点に住んでいたフランス系のカトリック教徒たちだ。

 

彼らはカナダを支配するイギリス政府にもアメリカ植民地政府にもつかず、中立を掲げ独立を維持しようとした。

 

だけどイギリスからの独立を狙うアメリカ植民地政府はそれを許さなかった…

 

 

戊辰戦争の時の越後長岡藩みたいやな…

 

 

 

結局アカディア人は土地を追われ、各地に散り散りになってしまったんだ。

 

ユダヤ人のディアスポラみたいなもんだね。

 

ちなみにアメリカ南部に逃れたアカディア人はニューオーリンズ周辺に定住し、「ケイジャン」と呼ばれるようになった。

 

同地の名物ケイジャン料理とかケイジャン音楽というのは、アカディア人が持ち込んだ文化がルーツだったわけだ。

 

 

 

「ちなみに」が続く時のオッサンは、実に生き生きしとるな。

 

 

最近の回では無駄話をあまりしなかったからね。そのストレスの影響が今回に出てしまったよ(笑)

 

ということで、そろそろ本題に入ろうか。

 

でもその前に、トム・ウェイツの原曲をちょっと聴いてみて頂戴。アマゾンで視聴できるから。

 

 

 

トム・ウェイツの渋い声と絡み合うトランペットがカッコいいね。

 

 

まさにそれがこの歌のカギなんだよ。

 

歌声のバックで「トランペットが鳴り響いていること」に深い意味があるんだ。

 

なぜならこの歌は、福音記者ヨハネ(St. John the Evangelist)が主人公の歌だから…

 

 

せ、せやった!

 

『ヨハネの黙示録』といえば「ラッパ」や!

 

全編を通してラッパが鳴り響くんや!

 

 

その通り。

 

『ヨハネの黙示録』において、主の声は「背後でトランペットのように鳴り響いた」と表現される。

 

1-10

On the Lord’s Day I was in the Spirit, and I heard behind me a loud voice like a trumpet,

 

主の日に、私は御霊を感じた。そして私の背後でトランペットのような大きな声が聞こえた。

 

そして主は「今から言うことや見たことを書き取れ」とヨハネに命じる。

 

つまり福音記者ヨハネは、このトランペットのような主の声を『黙示録』として書き記したわけだね。

 

その出来事から約1900年後、トム・ウェイツはボーカルとトランペットの掛け合いで、それを再現してみせた。

 

ちなみに、これが福音記者ヨハネだよ。

 

『福音記者ヨハネ』ドミニコ・ザンピエリ

 

 

イエスが最も愛した弟子ヨハネとは別人なの?

 

 

今は別人説が主流だけど、かつては同一視されることが多かった。

 

アルバム『クロージング・タイム』でのトム・ウェイツも「同一人物説」をとっている。

 

 

ちょ、ちょい待てェ!

 

絵の中のヨハネは何に乗っとるんや!?

 

 

ああ、気付いちゃった?

 

オチに使おうと思ってたんだけどね。

 

 

うわあ!ヨハネが大きなワシの翼に乗ってるよ…

 

 

だから「ON THE WINGS OF YOUR LOVE」なんだよね(笑)

 

鷲は主の家来なんだ。「天使軍団 VS 地上の王連合軍」の戦いでも大活躍する。

 

トム・ウェイツは、この「鷲の翼の上に乗って天国の話を書き記すヨハネ」の絵をもとに『LITTLE TRIP TO HEAVEN(ON THE WINGS OF YOUR LOVE)』の歌詞を書いたというわけだ…

 

 

また有名絵画が元ネタか…

 

よっぽどアートが好きなんだな、トム・ウェイツは…

 

 

さて歌詞を見ていこう。

 

まず1番から。きっとどこかで見覚えのある光景だと思うよ…

 

Lazy trip to heaven on the wings of your love
Banana moon is shining in the sky,
Feel like I'm in heaven when you're with me
Know that I'm in heaven when you smile,
Though we're stuck here on the ground,

I got something that I've found
And it's you.

 

 

うとうとしながら天国まで旅行…

 

「バナナムーン」って三日月のことだよね…

 

そして「あなたと一緒にいると、天国にいるような気分になる」のか…

 

 

ポイントは「we're stuck here on the ground」だ。

 

地べたにへばりついているのは「私」だけではなく「私たち」と複数形なんだよね…

 

 

地べたに「私たち」がへばりついとる…?

 

わ、わかった!これや!

 

『ゲッセマネの祈り』ジョルジュ・ヴァザーリ

 

 

ご名答。

 

地面で寝ている三人のうちの真ん中が、福音記者ヨハネと同一視される使徒ヨハネだね。

 

この絵が元ネタになっていたA面5曲目の『Midnight Lullaby(ミッドナイト・ララバイ)』は、”窓枠の上に座る男”ことイエスから見た視点の歌だった。

 

だけど『LITTLE TRIP TO HEAVEN』は、地べたに寝ていたヨハネの視点からの歌というわけだ。

 

 

よっぽどこの絵が好きなんだな、トム・ウェイツは…

 

 

きっとインスピレーションを与える絵なんだろうね。

 

見ていると物語が湧いてくるような絵なんだよ。

 

1曲目の『Ol' 55』の元ネタになったフラ・アンジェリコの『受胎告知』同様に、多くのアーティストがこの絵を元ネタにしているはずだ。

 

では続いて2番を見てみよう。

 

And I don't have to take no trip to outer space
All I have to do is look at your face,
And before I know it, I'm in orbit around you
Thanking my lucky stars that I've found you,
When I see your constellation, honey,

you're my inspiration, and it's you.

 

福音記者になりきったトム・ウェイツは、こう歌う…

 

宇宙まで旅行する必要はない

私がすべきことは、主の顔を見ること

そして私はこれを知る以前から

こうなる定めにあった

私が主を見つけた印「7つの星」に感謝しよう

主の姿や軍勢をこの目で見た時に

私は大きなインスピレーションを得た

それはすべて主の栄光

 

 

 

なんで宇宙と顔なんや?

 

 

イスラム教の開祖ムハンマドは、大天使ガブリエルに促されて宇宙旅行をした。文字通り「世界の全て」を見たんだね。

 

だけど唯一、神アッラーの「顔」だけは見ることができなかった。

 

ユダヤ教同様に、人間は神様の顔を直接見てはいけないというルールなんだ。全宇宙を見た開祖ムハンマドですらね。

 

だけどキリスト教では、神が「人の子イエス」の姿になって多くの人の前に現れたことになっている。

 

そして福音記者ヨハネは、宇宙旅行はしなかったけど、ついに神の声を聞き、その顔を直接見た。

 

『ヨハネの黙示録』

1:8今いまし、昔いまし、やがてきたるべき者、全能者にして主なる神が仰せになる、「わたしはアルパ(初め)であり、オメガ(終わり)である」。

1:16 その右手に七つの星を持ち、口からは、鋭いもろ刃のつるぎがつき出ており、顔は、強く照り輝く太陽のようであった。

 

 

口から鋭い刃が出てて、顔が強く照り輝く太陽みたい?

 

ななつ星☆!?

 

 

 

確かに似てるかも(笑)

 

さて、ヨハネが見た「7つ星」を主が説明する。

 

1:20あなたがわたしの右手に見た七つの星と、七つの金の燭台との奥義は、こうである。すなわち、七つの星は七つの教会の御使であり、七つの燭台は七つの教会である。

 

ここから主はヨハネに対し「7つの教会」に宛てたメッセージを述べる。

 

これを伝えるためにヨハネが選ばれたんだね。

 

 

なるほど!

 

 

そして歌詞の「constellation」や「inspiration」という言葉のチョイスもナイスだ。

 

「constellation(コンステレーション)」は「星座」という意味の他に「使徒・優秀な集団」という意味でも使われる。

 

『ヨハネの黙示録』の中盤以降は「主の軍勢」と「地上の諸王連合軍」との壮絶な戦いが描かれるからね。

 

「inspiration(インスピレーション)」は元々「神の力(霊感)が人に作用して得られたもの」という意味だ。

 

神の息吹が人の体内に入って来て、何か普段と違うことが起こると考えられていたんだよ。

 

 

「吉右衛門の鬼平」を贔屓にしとったワイとしては「インスピレーション」なんちゅう間の抜けた表記は許せへんな。

 

男ならビシッと「インスピレイション」や。

 

 

 

2分20秒からのテクが凄過ぎる!

 

 

さて、3番に行くよ。

 

You're my north star when I'm lost and feeling blue,
The sun is breaking through the clouds don't you,

don't you know it's true?
Honey, all the other stars seem dim around you
Thanking my lucky stars that I've found you,
When I see your smiling face, honey,
I know nothing ever going to take your place,

and it's you.

 

まず注目ポイントは「The sun(太陽)とThe clouds(雲)」だね。

 

『ヨハネの黙示録』にはこう書かれている。

 

1:7 見よ、彼は雲と共にやって来る。すべての人、特に、彼を刺しとおした者たちは、彼を仰ぎ見るであろう。また地上の諸族はみな、彼のゆえに胸を打って嘆くであろう。しかり、アァメン。

 

主が雲と共に降臨する際、かつてイエスを処刑した者たちも含めて全ての人がその姿を仰ぎ見るというんだ。

 

 

雲と一緒?孫悟空みたいに?

 

 

そうだね。福音記者ヨハネを描いたものには、こんなものもある。

 

『パトモス島の福音記者聖ヨハネ』ヒエロニムス・ボス

 

旧約の頃から、神と雲はセットなんだ。

 

神が地上に降りてくる時は、必ず雲の中から現れることになっている。もちろん天に昇っていく時も、雲が現れる。

 

シナイ山でモーセが十戒を授かる時もそうだったし、イエスが十字架で死んだ時もそうだった。

 

 

そして「The sun is breaking through the clouds」では「sun/son」と「cloud/crowd」が掛けられている。

 

「神の子イエスは群衆を打ち破る」という意味にもなってるんだね。

 

 

どゆこと!?

 

 

「主の軍勢 VS 地上の諸王連合」の戦いでは、神の子羊(イエス)が諸王連合を打ち破るんだよね。

 

17:12 あなたの見た十の角は、十人の王のことであって、彼らはまだ国を受けてはいないが、獣と共に、一時だけ王としての権威を受ける。

17:13 彼らは心をひとつにしている。そして、自分たちの力と権威とを獣に与える。

17:14 彼らは小羊に戦いを挑んでくるが、小羊は、主の主、王の王であるから、彼らに打ち勝つ。また、小羊と共にいる召された、選ばれた、忠実な者たちも、勝利を得る。

 

 

なんかすごい世界だな…

 

 

内容が内容だけにトム・ウェイツは「don't you, don't you know it's true?(まさかそれが真実だと知らなかったの?)」なんておどけて見せたんだよ。

 

 

へ?どゆこと?

 

 

実は福音記者ヨハネという人物は、流罪でパトモス島にいたという説があるんだ。

 

『ヨハネの黙示録』の内容を見れば明らかなように、彼は比喩を使ってローマ帝国の政治や周辺国との外交政策を批判している。

 

韻も踏みまくってるから、今風に言えば「ラップにして国家権力をディスってる」んだよね。

 

福音記者ヨハネは元祖ラッパーなんだ。

 

 

「ラッパ」だけに…

 

 

ありがとう。

 

当時、帝国内で魔術や占星術を行って予言をする者は、人心を惑わす犯罪者と見做された。

 

どうやらヨハネはその罪でエーゲ海の島パトモスに流されていたらしいんだ。

 

だから『ヨハネの黙示録』には、たくさんの国や王が登場して、ことごとく主の軍勢に叩きのめされるんだよね。

 

まるで鬱憤を晴らすかのように…

 

 

だからこの歌は星占いみたいな歌詞なんだ…

 

まさに福音記者ヨハネの唄だったんだな…

 

 

そうゆうこと。

 

さて、次回はB面5曲目の『GRAPEFRUIT MOON(グレープフルーツ・ムーン)』だ。

 

これも人気の歌だね。

 

 

歌詞のある曲は、それで最後じゃんか…

 

ラストの曲はインストだから…

 

 

最初の頃は「ホンマにこれ終わるんかい?」っちゅう感じやったけど、いよいよ終わるとなると淋しいもんやな。

 

 

まあ僕のことだから、そうは簡単に問屋が卸さないと思うよ。

 

 

なんだそれ!?ドヤ顔で言うことか?

 

 

ふふふ…

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

「ICE CREAM MANは何を売っていたの?」〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説13

  • 2018.10.20 Saturday
  • 16:18

 

 

 

 

 

今回はB面3曲目の『ICE CREAM MAN(アイスクリーム・マン)』を解説しよう。

 

 

これまでの回はコチラ

 

 

ほな、さっそく歌に行こか。今回は白組からや。

 

 

よし。ではガツンと行かせてもらうよ。

 

歌ってくれるのはロシアのLESRUKだ。

 

永久凍土でギンギンに冷えた『ICE CREAM MAN』が炸裂するぞ!

 

 

 

ナニモンや、こいつ!?キレッキレやんけ!

 

クロマティ・ハラショー!

 

 

ハラショー(ロシア語の「いいね」)はわかるけど、クロマティって何だよ?

 

 

ロシア語で「めっちゃ」っちゅう意味や。

 

 

子供に嘘を教えちゃいけないね。

 

原の前を打ってた3番打者のことだよ。

 

ちなみに歌ってくれた「Les Ruk」の「Les」とはロシア語で「森」という意味だ。

 

そして「Ruk」とは「手・腕」のことで「技術・職人」という意味もある。日本語で「手工業」とか「腕を磨く」と言うのと一緒だね。

 

 

どうでもいい情報だな。

 

もしかして、今回の解説の伏線だったとか?

 

 

多くの人は僕がいつも無駄話ばかりしてると思っているみたいだけど、実は無駄な話など一切していない。

 

僕の口から出て来るものには、必ず意味が隠されているんだ。

 

 

オッサンの能書きはもうええわ。紅組の歌に行かしてもらいまっせ。

 

イスラエルの「Three Little Birds」こと「The Hazelnuts(ザ・ヘーゼルナッツ)」の登場や!

 

フィーチャリングChanan Ben Simonで『ICE CREAM MAN』行ってみよ!

 

 

 

わお!こっちのお姉さんたちも超カッコいい!

 

今回は紅白共にハイレベルだな!

 

 

さて、この『アイスクリーム・マン』という歌は、流しのアイスクリーム売りの男が主人公となっている。

 

歌詞の中にもアメリカで有名なアイスの商品名がたくさん出て来るんだ。日本では馴染みが薄いけどね。

 

 

そんで「ワイの棒アイスはビッグでキンキンやで〜。奥さん1本どうでっか?」っちゅう感じで訪問販売するわけや。

 

 

なんか下品。

 

 

「表向き」はそういう歌なんだよ。歌詞もスレスレだしね。

 

日本風に言ったら「昼下がりの団地妻と訪問販売員」みたいなもんだ。

 

 

宮下順子か!

 

 

懐かしいな。その名前は男のロマンだよね。

 

さて、トム・ウェイツはメキシコの古典的艶歌『El Manicero(南京豆売り)』を元ネタにして、この歌を作った。

 

「南京豆売りの男」を「アイス売りの男」に替えたんだね…

 

 

 

ボーカルの男!「手つき」が卑猥や!

 

そして黒い服の方の女!表情がいちいちエロい!

 

 

冒頭の売り声にもなっている「Mani」とはラテン語由来の言葉で、スペイン語で「手」のことだ。

 

「Mantas(カマキリ)」や「Manufacture(製造する)」の語源だね。

 

つまり「Ma〜ni〜」という売り声は「お嬢さんたち、私が手を貸すよ」という意味になっている…

 

 

手を貸す?

 

ナニに手を貸すっちゅうねん?

 

 

わかってるクセに聞かないでくれるかな?

 

この歌って超エロい歌詞なんだよ。

 

さすがの僕でも全部訳すのは気が引けるんで、一部だけ紹介しよう。

 

 

お口が淋しかったら僕の南京豆を召し上がれ

これを食べずに寝ちゃいけないよ

煎りたてのあったか南京豆

このまま僕を行かせちゃ勿体ない

僕が行っちゃってからじゃ遅いんだよ

この歌声が聞こえたら、バルコニーからこう呼び止めて

「ああ、南京豆をくださいな!食べないと今晩眠れないわ!」

あったかホヤホヤの南京豆

早くしないと行っちゃうよ〜

 

 

 

「行く」とか連発しよってからに…

 

しかもほとんど全部訳しとるやんけ…

 

 

これがメキシコや中南米でヒットして、英語に翻訳されてアメリカでも爆発的に売れた。

 

英語では『The Peanuts Vender(ピーナッツ売り)』というタイトルだね。

 

ヒットの要因は、このタイトルにあると思うんだ。

 

だって「nuts」は「睾丸」のことだし、「pea」は「pee(おしっこ)」の駄洒落になってる。

 

つまり「Peanuts」という言葉で「男性の生殖器」が想起される仕組みになってるんだ。

 

しかも「nuts」には「夢中にさせる・狂わせる」という意味もある。

 

「The Peanuts Vender」って最高のネーミングだよね(笑)

 

 

オッサン、こうゆう話する時は、めっちゃ嬉しそうやな…

 

 

わかる?

 

これぞ芸術の神髄だよね。古来よりエロスは芸術における最大のテーマなんだ。

 

人間最大の関心事「性愛」を描きながら、いかに表向きは「別のこと」のように見せるかが、芸術家の腕の見せ所なんだよ。

 

だから僕は天才的な表現や職人技に出会うと興奮せずにはいられなくなるんだ。

 

 

シェイクスピアの「チェス」とか、カズオ・イシグロの「メグ・ライアンのチェス」とか(笑)

 

 

大人って、もっと立派で、すっごくオトナだと思ってたけど、そうでもなさそうだな…

 

 

僕も子供の頃はそう思ってた。

 

というわけで、そろそろ本題である『ICE CREAM MAN』の解説に入ろう。

 

トム・ウェイツは『El Manicero』をオマージュしながら、「アイス売りの男」の物語を書いた。

 

だけどそれは「表向き」のこと。艶歌に見せかけたのは、世間の目を欺くための偽装だったんだ。

 

各種アイスを登場させた本当の目的は「イエスの死と復活」を描くためだったんだよ…

 

 

各種アイスがイエスの「死と復活」!?

 

どゆこと!?

 

 

そもそもタイトルの『ICE CREAM MAN』からして、十字架の上でのイエスの最期を言い表したものなんだよね。

 

『ルカによる福音書』第23章46節には、こう書かれている…

 

ルカ23:46

そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。

 

 

声高く叫んで言われた…?

 

まさに "I scream" man やんけ…

 

そしてトム・ウェイツと「I scream & ICE CREAM」と言えば…

 

 

 

こっちでしょ(笑)

 

 

ジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』には、前に紹介した6曲目『マーサ』や、この『アイスクリーム・マン』が重要なネタに使われているんだ。

 

曲は流れないけどね。

 

 

さて、歌詞を見ていこう。

 

まず1番は、こんな出だしで始まる…

 

I'll be clickin' by your house about two forty-five

 

 

出た!2時45分!

 

歌詞の中に「3時前後」の時間が出て来たら「イエスの死」が隠されている…の法則だ!

 

 

その通り。

 

3曲目『Virginia Avenue』では「1時45分」だったから、一気に時間が進んだね。

 

そしてこの『ICE CREAM MAN』では「死の瞬間と復活」が扱われているんだ。

 

 

「clickin' by your house(あんたの家でビビっと来た)」は、どう訳すんや?

 

 

1番での「your」は、イエスの母マリアのことなんだよね。

 

そしてこのセンテンスは、十字架上のイエスが使徒ヨハネに対して「私の母マリアを自分の母だと思いなさい」と言ったことを指している。

 

イエスの遺言どおり、最も愛された弟子ヨハネはマリアを家に引き取った…

 

ヨハネによる福音書

19:26 イエスは、その母と愛弟子とがそばに立っているのをごらんになって、母にいわれた、「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」。

19:27 それからこの弟子に言われた、「ごらんなさい。これはあなたの母です」。そのとき以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引きとった。

 

 

これが「2時45分」の出来事なの?

 

 

その通り。このあと3時頃に最後の言葉を発するからね。

 

イエスは死にあたって、母マリアの老後を心配をしていたようにもとれる。

 

歌詞にある「click」とは「ビビっと来る・物事が収まる」という意味で、「your house」とは「母マリアの住居」だ。

 

つまり出だしの一文は…

 

I'll be clickin' by your house about two forty-five

死ぬ直前の2時45分に母マリアの住居問題を片付けるだろう

 

ということだったんだね。

 

 

げげぇ!

 

言われてみれば確かにそうだ…

 

 

この次の歌詞がもっと凄いんだ。3種類のアイスの登場だね。

 

Sidewalk sundae strawberry surprise
I got a cherry popsicle right on time
A big stick, mamma, that'll blow your mind

 

 

歩道からストロベリーサンデーのサプライズ?

時間きっかりにチェリー味の棒アイス?

ママも悶絶、どデカ棒?

 

最後のはアカンやろ、最後のは…

 

 

 

変な意味に聞こえるのは、君の心が汚れているからだよ。

 

アイスの意味を完全に履き違えている。

 

「sidewalk sundae strawberry surprise」は…

 

「十字架を背負って歩いた道、主の日、腹を槍で刺され、復活をして驚かせた」

 

という意味なんだ

 

 

なぬ!?

 

 

「sidewalk(歩道・人の道)」とは、いわゆる「ヴィア・ドロローサ(苦難の道)」のことだね。

 

死刑の判決を受けたイエスが、刑場のゴルゴダの丘まで十字架を背負って歩かされた道のことだ。

 

 

 

なるほどな。

 

そんで次の「sundae(サンデー)」が「sunday(主の日)」の駄洒落っちゅうわけか。

 

せやけど磔の日は13日の金曜日や。日曜日やあらへん。

 

 

ラテン系言語やギリシャ語などでは「主の日=日曜日」となっているけど、そうじゃないんだよ。

 

旧約聖書で預言されている「主の日」とは「イエスが十字架に架けられる日」なんだ。

 

キリスト教徒にとって「イエスの出現を預言した書」である『イザヤ書』には、こう書かれている…

 

2:12 まことに、万軍の主の日は、すべておごり高ぶる者は、すべて誇る者に襲いかかり、これを低くする。

13:6 泣きわめけ。主の日は近い。全能者から破壊が来る。

13:9 見よ。主の日が来る。残酷な日だ。憤りと燃える怒りをもって、地を荒れすたらせ、罪人たちをそこから根絶やしにする。

13:13 それゆえ、わたしは天を震わせる。万軍の主の憤りによって、その燃える怒りの日に、大地はその基から揺れ動く。

 

 

おごり高ぶる者が、誇る者に襲いかかる…

 

全能者からの破壊…

 

残酷な日…

 

天と大地が震える日…

 

全部イエスが十字架に架けられて処刑された日のことじゃんか…

 

 

他の書にもあるよ。

 

ヨエル書2:11

主は、ご自身の軍勢の先頭に立って声をあげられる。その隊の数は非常に多く、主の命令を行なう者は力強い。主の日は偉大で、非常に恐ろしい。だれがこの日に耐えられよう。

 

アモス書5:18

ああ。主の日を待ち望む者。主の日はあなたがたにとっていったい何になる。それは闇であって、光ではない。

 

 

主の日は恐ろしくて、闇であって光ではない…

 

確かに「復活の日(日曜日)」やのうて「死んだ日(金曜日)」のことや…

 

 

ちなみに「軍勢の先頭に立って声をあげる」は1曲目の『Ol' 55』の元ネタだね(笑)

 

 

じゃあ「strawberry surprise(イチゴのサプライズ)」は?

 

どこから「槍で腹を刺される」とか「復活する」が出て来るの?

 

 

「strawberry」は「straw belly」の駄洒落なんだ。

 

「ストローを腹に突き刺す」、つまり「細くて長い槍で腹を突き刺す」って意味なんだね。

 

 

 

ああ!イエスの死を確認したロンギヌスの槍!

 

 

そして「surprise(サプライズ)」は「rise(復活する)」と掛けてあるんだね。

 

「sidewalk sundae strawberry surprise」は、畳み掛けるような言葉遊びになってるんだよ。

 

 

おそるべしトム・ウェイツ…

 

 

そして「cherry popsicle(チェリー味の棒アイス)」。

 

チェリーは「甘酸っぱいもの」の代名詞だ。

 

日本人は甘い品種を好むけど、海外では酸味のあるものが好まれる。特にサワーチェリーと呼ばれる酸味の強い品種は、料理や飲み物によく使われる。日本でいうと梅のような存在だね。

 

 

もうわかった…

 

棒の先っぽに付けた、酸っぱい葡萄酒のことだ…

 

 

 

その通り。各福音書には、こう書かれている。

 

ヨハネによる福音書

19:28 そののち、イエスは今や万事が終ったことを知って、「わたしは、かわく」と言われた。それは、聖書が全うされるためであった。

19:29 そこに、酢いぶどう酒がいっぱい入れてある器がおいてあったので、人々は、このぶどう酒を含ませた海綿をヒソプの茎に結びつけて、イエスの口もとにさし出した。

19:30 すると、イエスはそのぶどう酒を受けて、「すべてが終った」と言われ、首をたれて息をひきとられた。

 

マタイによる福音書

27:46 そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。

27:47 すると、そこに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「あれはエリヤを呼んでいるのだ」。

27:48 するとすぐ、彼らのうちのひとりが走り寄って、海綿を取り、それに酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。

27:49 ほかの人々は言った、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」。

27:50 イエスはもう一度大声で叫んで、ついに息をひきとられた。

 

イエスが自らの死によってメシアの預言を成就させるためには、最後に「酸っぱい葡萄酒」が必要だった。

 

そしてそのタイミングは「3時」だ。3時きっかりに酸っぱい葡萄酒が出されるようにタイミングを計ったというわけなんだね。

 

だからトム・ウェイツは、こう歌詞を書いた…

 

I got a cherry popsicle right on time

3時きっかりに、酸っぱい葡萄酒(棒付き)を頂くぜ

 

 

トム・ウェイツ…天才…

 

 

最後の「A big stick, mamma, that'll blow your mind」は、もう説明しなくていいね?

 

さっきも出て来た「ロンギヌスの槍」、あるいは「十字架の杭」のことだ。

 

母マリアは、まさしく「a big stick」に「blow you mind」している…

 

 

 

棒アイスの「棒」を、あらぬものに勘違いしてしまったこのワイを、どうぞお許し給え…

 

 

大丈夫。ほとんどの人がそう思ってしまっていたから…

 

恨むならトム・ウェイツの才能を恨もう。

 

さて、次はサビだね。ここもかなり面白いことになっているよ。

 

'Cause I'm the ice cream man,

I'm a one-man band yeah
I'm the ice cream man, honey,

I'll be good to you

 

 

鍵は「one-man band」だな!

 

 

その通り。

 

「楽団ひとり」ではなくて「三位一体」のことだね。

 

父と子と聖霊が「one-man(唯一神)」に「band(束ねられる)」という意味だ。

 

 

トム・ウェイツは答えを言うとるやんけ…

 

なんで今まで気付かんかったんや…

 

 

思い込みとか先入観というものは実に恐ろしいね…

 

真実が目の前に提示されているというのに、それが見えなくなってしまうんだ…

 

さて2番に行こう。2番は「復活」の場面が歌われているよ。

 

Baby, missed me in the alley, baby, don't you fret
Come back around and don't forget,

 

この部分はわかりやすいね。

 

 

ベイビー、路地裏で俺を見失っても心配するな

ひと廻りしてから必ず戻って来る

 

そのまんまだ(笑)

 

『空の石棺と女たち』フラ・アンジェリコ

 

 

次の歌詞も見事だよ。

 

イエスの復活の場面をたった一行にまとめたんだ。

 

When you're tired and you're hungry and you want something cool
Got something better than a swimming pool

 

 

疲れたり、腹減ったり、何かクールが欲しい時?

 

なんのこっちゃ?

 

 

『ヨハネによる福音書』における「イエス復活の場面」のことだね。

 

他の福音書と違い『ヨハネ』では「イエスが弟子たちの前に姿を現すシーン」が三度描かれるんだ。

 

まず「when you're tired(疲れている時)」は「マグダラのマリア」の前に姿を現した時のこと。

 

空っぽの墓から他の人たちが帰った後も、マグダラのマリアはその場に泣き崩れていた。

 

あまりのショックで動けなくなってしまったんだね…

 

そこにイエスが登場するんだ。

 

ヨハネ20:15

イエスは女に言われた、「女よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか」。マリヤは、その人が園の番人だと思って言った、「もしあなたが、あのかたを移したのでしたら、どこへ置いたのか、どうぞ、おっしゃって下さい。わたしがそのかたを引き取ります」。

 

 

なるほど!

 

 

次の「When you're hungry」はティベリアの海(ガリラヤ湖)での復活シーンだね。

 

魚が一匹も取れずに腹を空かしていた弟子たちの前に、イエスは現れる…

 

21:4 夜が明けたころ、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだとは知らなかった。

21:5 イエスは彼らに言われた、「子たちよ、何か食べるものがあるか」。彼らは「ありません」と答えた。

21:6 すると、イエスは彼らに言われた、「舟の右の方に網をおろして見なさい。そうすれば、何かとれるだろう」。彼らは網をおろすと、魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。

21:12 イエスは彼らに言われた、「さあ、朝の食事をしなさい」。弟子たちは、主であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と進んで尋ねる者がなかった。

21:13 イエスはそこにきて、パンをとり彼らに与え、また魚も同じようにされた。

 

 

日清カップヌードルじゃないけど、まさに「Are you hungry?」だな…

 

 

そして最後の「When you want something cool」だ。

 

この「cool」という言葉は対照的な意味で使われる。本来の意味である「冷静」と、スラング的な意味「目を見張ること」だね。

 

イエスが復活したことで弟子たちは歓喜に包まれた。

 

だけど使徒トマスはそれを認めようとせず、ひとりで熱くなってしまう…

 

20:25 ほかの弟子たちが、彼に「わたしたちは主にお目にかかった」と言うと、トマスは彼らに言った、「わたしは、その手に釘あとを見、わたしの指をその釘あとにさし入れ、また、わたしの手をそのわきにさし入れてみなければ、決して信じない」。

 

そんなトマスを見て、イエスは「冷静になりなさい」と言うんだ…

 

そして肉体が無いはずなのに、脇腹の傷口に手を入れさせるという「目を見張るような奇跡」を行う…

 

20:26 八日ののち、イエスの弟子たちはまた家の内におり、トマスも一緒にいた。戸はみな閉ざされていたが、イエスがはいってこられ、中に立って「安かれ」と言われた。

20:27 それからトマスに言われた、「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手をのばしてわたしのわきにさし入れてみなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい」。

 

『疑い深い聖トマス』カラヴァッジョ

 

 

『北斗の拳』の秘孔の元ネタだな!

 

 

最後の「Got something better than a swimming pool(プールに入るより気持ちいいぜ)」は説明不要だね。

 

「洗礼よりも大切なものを得よ」つまり「復活を信じることが最も重要だ」という意味だ。

 

 

でもこれで「復活劇」は全部終わっちゃったよ…

 

まだ3番があるんでしょ?

 

 

確かに福音書での「復活劇」はこれでお終いだ。

 

だけど、もうひとつ重要な「復活劇」が残っていることを忘れてないかな?

 

イスラエルの地から遠く離れた、ローマ近郊での出来事が…

 

 

死ぬのが怖くて逃げだした使徒ペトロの前に現れたイエス!

 

『主よ、どこへ行かれるのですか?』アンニバーレ・カラッチ

 

3番は、この「イタリアでの復活劇」が描かれているんだよ…

 

See me coming, you ain't got no change
Don't worry baby, it can be arranged

 

普通に訳すと、こうなる。

 

さあ帰って来たぜ、小銭なんて要らねえよ

心配するなって、万事うまくいく

 

ここでのポイントは「change」だね。

 

「小銭・コイン」という意味で使われているんだけど、ローマとコインと言えば…

 

 

皇帝…

 

ペテロは皇帝ネロから逃げていた…

 

 

その通り。

 

かつてイエス逮捕の時に裏切ったペトロは、心を入れ替えて布教活動していたんだけど、皇帝ネロの弾圧が始まると、再び裏切って逃げ出してしまったんだね…

 

それを見たイエスは呆れてしまった…

 

 

See me coming, you ain't got no change

久しぶりに戻って来たが、お前は何も変わってないな

 

 

そして歌詞はこう続く…

 

Show me you can smile, baby just for me
Fix you with a drumstick, I'll do it for free

 

 

ワイのために笑えるところを見せろ?

 

ドラムスティックをタダで用意しといたで?

 

なんのこっちゃ?

 

 

酔いどれ詩人トム・ウェイツの真骨頂だね。

 

「私のために《smile》出来ることを見せなさい」って天才的すぎる。

 

わかるかな?

 

ここで「smile」という語を繰り出したセンスの素晴らしさを?

 

 

へ?

 

 

これって「私のために犠牲となる心意気を見せなさい」という意味なんだ。

 

「smile」とは「生贄・犠牲」のことなんだよ。

 

 

なんで?

 

生贄なんかにされたら全然笑えないんですけど。

 

 

これのことだよ。「イサクの燔祭」だ。

 

『アブラハムとイサク』レンブラント

 

神の指示によってイサクは、父アブラハムの手により危うく犠牲となるところだった…

 

そしてこの「イサク」という名は、ヘブライ語で「笑う」という意味だったよね。

 

だから、この一文はこういう意味になる…

 

Show me you can smile, baby just for me

イサクのように犠牲になれるところを見せよ。私のために

 

 

 

元祖『君は人のために死ねるか』やな…

 

 

 

ドラムスティックは?

 

これもアイスの名前でしょ?

 

 

 

ドラムのスティックとは似ても似つかん形やんけ…

 

 

だってドラムのスティックとは関係ないからね(笑)

 

 

ハァ?じゃあ何なんだ?

 

 

「ドラムスティック」とは、サンクスギビングやクリスマスでお馴染みの、七面鳥や鶏を丸焼きにした時の「足の形」のことなんだ。

 

細くなってる足の先を持って、先太になったモモ肉に食らいつく様子が似てるから、あの形のアイスの名前になったというわけ。

 

 

 

そうだったのか!

 

でもそれと使徒ペトロが何の関係があるんだ?

 

 

弱虫ペトロは「チキン」だからね…

 

弱虫でチキンだからこそペトロはイエスに選ばれたんだ…

 

それと、ターキーやチキンの丸焼きを作る時、ボディを逆さまにして足を縛るんだよ。

 

おそらくトム・ウェイツは、この姿とペトロの最期を重ね合わせている…

 

『聖ペテロの逆さ磔』カラバッジオ

 

 

ああ!

 

だから「Fix you with a drumstick(お前のためにドラムスティックを用意しておく)」なんだ! 

 

 

そして「I'll do it for free」だと言うんだね。

 

この「free(無料)」には「flee(逃走)」が掛けられている。

 

ペトロの逃走に対してドラムスティック(足を縛って逆さまにする)を用意したというわけだ。

 

 

トム・ウェイツ…

 

恐ろしい子…

 

 

というわけで、この『ICE CREAM MAN』という曲は、表向きは「アイス売りの艶歌」なんだけど、同時に「イエスの死と復活の物語」になっていた…

 

しかも一寸の無駄もない、完璧な歌詞でね…

 

多くのアーティストがカバーするのも頷ける。まさに名曲だよ。

 

では次回はB面4曲目『LITTLE TRIP TO HEAVEN」を解説します。こちらも乞うご期待!

 

 

あと2曲か…

 

あっという間に終わりが近づいてきたな…

 

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

「メラニー・ジェーンって誰?」(LONELY)〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説12

  • 2018.10.18 Thursday
  • 21:20

 

 

 

 

今回はB面2曲目の『LONELY(ロンリー)』の解説だよ。

 

 

A面とかB面とか何言ってんの?

 

『クロージング・タイム』の8曲目でしょ?

 

 

昔のレコード盤はディスクの両面に録音されてたんや。

 

半分終わったら、ひっくり返さんと続きが聴けへんかったんやで。

 

 

何それ!?超不便!

 

 

だけどそれを逆手にとる形でアーティストはアルバムを構成したり出来たんだ。

 

A面とB面で違ったストーリーが展開するようにね。

 

 

例えばA面で恋をして、B面で失恋したりな。

 

表裏のあるレコード盤から数々のドラマが生まれたんやで…

 

 

 

何この歌、超笑える!

 

「A面A面」ってゴスペルソングのパロディじゃんか!

 

 

 

まさにその通り。

 

レコードからA面B面が無くなってしまい、もうこのネタは使えないよね。

 

さて、そろそろ『ロンリー』の解説に入ろう。

 

 

その前に歌を聴かなアカン!

 

今回は紅組からやで!

 

ひとりユニット「Bat For Lashes(バット・フォー・ラッシーズ)」ことナターシャ・カーンの歌う『ロンリー』や!

 

 

 

わお!カッコいい!

 

 

いいよね、彼女。

 

ちなみに彼女は、パキスタン人の父を持つためにイギリスの学校でイジメにあい、登校拒否になってしまったという過去をもつ。

 

その時に様々な歌と出会い、孤独や絶望から救われたらしい。

 

彼女がトムウェイツの『ロンリー』を歌うのは、当時の辛い経験が彼女のアーティストとしての創造の源泉となっているからだろう…

 

そして彼女は歌手としてデビューし、この『IN GOD'S HOUSE』を発表する…

 

 

 

明らかにトムウェイツの『ロンリー』にインスパイアされた曲だね…

 

 

よっぽど思い入れがあるんだろう。

 

さて、白組はスペインのフラメンコギターの名手ディエゴ・ハラに登場してもらおうかな。

 

歌はモニカ・ポブレテだ。

 

 

モニカって女やんけ。

 

ボーカルが女なら紅組と相場は決まっとる。ドリカムと一緒や。

 

 

ごめん。なぜかこの歌は男性があまり歌ってないんだ。カバーしてるのが女性ばかりなんだよ。

 

でも超カッコいいから許してチョンマゲ。

 

 

 

確かに超カッコいい!

 

 

でしょ?

 

では歌詞を見ていこう…

 

と言っても、歌詞は短いうえに「Lonely」ばかりだね。

 

繰り返し部分を省略すれば、これだけだ。

 

Lonely, lonely, lonely, lonely eyes,
lonely face, lonely in your place

 

I thought that I knew all that there was to,
 

Melanie Jane won't feel the pain
Lonely eyes, lonely in your place

 

孤独、孤独、孤独

寂しげな眼差し、寂しげな表情

もしも私があなたの立場だったなら

私は孤独で仕方ないでしょう

 

私が言えることは、ただそれだけ

 

メラニー・ジェーンは挫けませんよ

男の子です

淋しくなったら、話しに来ますね

いつか、たぶん

 

 

なんか途中で違う歌にすり替わっとるやろ…

 

 

これだ(笑)

 

 

 

この歌も「隠れゴスペル」だよね。

 

「ゆうべ杉の梢に明るく光る星ひとつ見つけました」って、イエスの誕生を告げた星のことを言ってるように聞こえる。

 

ベツレヘムの辺りは杉や松が多く生えているし、イザヤ書第55章でも杜松などの針葉樹は祝福の木とされていた。

 

 

深読みのし過ぎじゃね?

 

一休さんは仏教だし…

 

 

ふふふ。信じるも信じないも、あなた次第…

 

さて、この『ロンリー』という歌は、イエスが最も愛していた弟子ヨハネの唄だ。

 

使徒ヨハネが師の不在を嘆いた歌なんだね。

 

 

たったあれだけの歌詞で、なんでそこまで言い切れるんだよ!

 

 

ポイントは「Melanie Jane won't feel the pain(メラニー・ジェーンは痛みを感じることはありません)」という歌詞だ。

 

これまでの解説でも明らかなように、このアルバムの各曲は「男が愛する女について歌う」という先入観で聴いてしまうと、その核心部分を見誤ってしまう構造になっていた。

 

実は「男が男への愛について歌う」という内容のアルバムだったんだよね。

 

イエスが弟子を思って歌ったり、弟子が師イエスを思って歌ったり…という構造になっていたわけだ。

 

 

だからトム・ウェイツは歌詞の中に「she/her」という単語を使わなかった…

 

なのになぜかみんな「男と女の唄」だと決めつけてしまっていた…

 

 

その通り。

 

この「メラニー・ジェーン」も、すべての人が「女」だと決めてかかってる。

 

実は「男」なのにね。

 

 

イエスが最も愛した弟子…

 

どっからどう見ても美女にしか見えへん使徒ヨハネか…

 

『ゲッセマネの祈り』ジョルジュ・ヴァザーリ

 

 

でも何で「メラニー・ジェーン」がヨハネになるの?

 

 

まず「Jane」。

 

「Jane」とは「John(ヨハネ)」の女性形なんだよね。

 

そしてこの歌の最重要キーワードともいえる「Melanie(メラニー)」だ…

 

 

メラニーっちゅうたらメラニー・グリフィスやろ。

 

 

 

あれを明石家さんまがパクった…と言おうと思ったんだけど、『男女7人秋物語』のほうが先だったんだね。失礼しました。

 

 

何の話してんのか、さっぱりわかんねえよ。

 

 

さて、この「Melanie」なんだけど、こちらもみんな騙されている。

 

「Melanie」は女性のファーストネームじゃないんだよ。

 

実は「メラニンの多い」という意味なんだよね。

 

 

メラニン!?

 

あのメラニン色素のメラニン?

 

 

その通り。

 

女性の名前にも使われる「Melanie」という言葉は「黒っぽい」という意味なんだよ。

 

古ギリシャ語の「melas(黒い)」が由来の言葉なんだ。

 

つまりトム・ウェイツは、巨匠エル・グレコの有名な絵『福音記者ヨハネ』のことを言っているんだね。

 

『福音記者ヨハネ』エル・グレコ

 

 

確かにメラニン色素多い…

 

でも他の「美女系ヨハネ像」とは似ても似つかない別人じゃんか…

 

 

「使徒ヨハネ」と「福音記者ヨハネ」を、同一人物だと考える人もいれば、別人だと考える人もいるんだよね…

 

学術的には「別人説」が濃厚なんだけど、信仰として同一視されることが多いというわけだ。

 

 

なにそれ!

 

なんでそんな曖昧な状態にしておくの?

 

 

科学的に分析してしまったら、聖書の大半が「別人の手によるもの」になってしまうんだよ。これまで信じられていた著者とされる人物の書いたものではなくなってしまうんだね。

 

だから「学術的な論証」と「伝統的な信仰」は切り離して考える必要がある。

 

 

日本の初期の天皇みたいなもんか…

 

ヤバい古墳は立ち入り禁止やさかいな…

 

 

そういうこと。

 

さてエル・グレコの『福音記者ヨハネ』の話に戻ろう。

 

古代ギリシャでは、普段は黄色い胆汁(コリー)が何らかの原因で黒い色(メラス)になると「憂鬱質(メランコリア)」になると考えられていた…

 

「メランコリー」の語源だね…

 

胆汁が黒くなってしまうと、人は「恐怖感・幻覚・妄想」に襲われてしまうと信じられていたんだ…

 

 

「恐怖感・幻覚・妄想」と言えば、新約聖書の問題の書『ヨハネの黙示録』を書いた時のヨハネ…

 

晩年に常用していた痛み止めの副作用で、精神状態が不安定になっていたという説もあったよな…

 

 

そうだったね。

 

あの内容はどう考えても尋常じゃない。あの書が新約聖書に正式に入れられるまで、かなりの議論があったくらいだ…

 

今でも多くの宗派では『ヨハネの黙示録』だけを礼拝や儀式で読まなかったりする…

 

かなり過激でぶっ飛んだ内容だから、解釈に困るんだろう。

 

 

その代わり、小説や映画など芸術作品には人気やけどな。

 

スタインベックの『怒りの葡萄』、コンラッドの『闇の奥』、コッポラの『地獄の黙示録』、そして『オーメン』…

 

 

だね。

 

というわけで『ロンリー』の解説はもう十分だろう。

 

最愛の師のいない世界で使徒ヨハネが感じていた孤独を歌ったものだったわけだ。

 

 

前回の『ロージー』に続いて、今回も簡単だったね…

 

 

でも次回の『ICECREAM MAN(アイスクリーム・マン)』は、また手の込んだ内容になってるよ。

 

この歌も多くの人に誤解されたままだから、解説のし甲斐があるね。

 

腕が鳴るってもんだ。乞うご期待!

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

「なぜRosieは窓枠の上の男の呼び掛けに何も答えてくれないのか?」〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説11

  • 2018.10.18 Thursday
  • 10:48

 

 

 

 

 

さて、前回でA面の解説が終わったね。

 

 

やっぱりB面もやるんか?

 

 

当たりき車力、ケツの穴ポリスだよ。

 

 

それを言うなら「ケツの穴ブリキ」でしょ!

 

 

そうとも言う、早見優。なんちゃって。

 

冗談はこれくらいにして、B面へ行く前に各曲の内容紹介を再掲しておこうかな。

 

side A

1)Ol'55:イエスの誕生と死(駆け足で)

2)I think that I don't fall in love with you:イスカリオテのユダ

3)Virginia Avenue:イエスの誕生と死(自身の感想)

4)OLD SHOES:ローマにおける使徒ペトロ

5)Midnight Lullaby:主が受け入れた異邦人

6)Martha:マルタとマリアの姉妹について

 

そしてB面は、こういうことになっている…

 

side B

7)Rosie:ゲッセマネの祈り

8)Lonely:最も愛された弟子ヨハネの孤独

9)Ice Cream Man:イエスの十字架での死と復活

10)LITTLE TRIP TO HEAVEN:福音記者ヨハネの夢

11)Grapefruit Moon:福音記者ヨハネの主への想い

12)CLOSING TIME(インスト)

 

 

それではB面最初の曲『ROSIE(ロージー)』の解説を始めるよ。

 

 

その前に曲を聴かないと!

 

今回は白組からだぞ!

 

 

よし。白組はスペインのアルフォンソ・オルティスに歌ってもらおう。

 

 

 

渋いな、スペインと来たか。

 

せやったら紅組はイスラエルと行かせてもらいまっせ。

 

前回のオランダ語版『マーサ』に対抗して、ヘブライ語の『ロージー』やで!

 

 

 

ヘブライ語バージョンもあるのか!

 

 

でも「ある意味」正しいよね、この歌をヘブライ語で歌うのって…

 

なぜならこの歌は、最後の晩餐のあとにゲッセマネの園で祈るイエスの歌だから…

 

「Rosie(Rosy)」とは「Lordie(Lordy)」のことなんだよね…

 

 

ローディー?

 

 

アメリカ人が困った時や切ない時に思わず発する言葉だよ。

 

「Lord!(主よ!)」よりも、よりいっそう切羽詰まった感じだね。

 

この『ロージー』という歌は、アルバム『クロージング・タイム』の中で最も「わかりやすい」歌だと言える。

 

だって「ロージー」を「ローディー」をするだけで本来の意味がわかるようになっているからね(笑)

 

 

ま、マジで!?

 

 

では歌詞を見ていこう。

 

Well I'm sitting on a windowsill,

blowing my horn
Nobody's up except the moon and me,

 

「表向きの意味」では、こんな感じだね。

 

よっしゃ、窓枠の上に座って俺様が歌でも歌ってやろうか

なにせ俺様とお月様以外は皆、寝ちまってるんだからな

 

 

出た!

 

「窓枠の上に座る主人公」と「お月様」と「寝てしまった人たち」!

 

 

これやな。

 

『ゲッセマネの祈り』ジョルジョ・ヴァザーリ

 

 

もう、そのまんま過ぎて何も言うことはないね。

 

続く歌詞はこうだ。

 

And a lazy old tomcat on a midnight spree
All that you left me was a melody

 

「表向きの意味」ではこう訳せる。

 

物憂げな俺様は真夜中なのに眠れないと来てる

お前がいつも俺の言うことを聞き流し

肝心なことには答えてくれないからだ

 

 

このシチュエーションも「そのまんま」やんけ。

 

「ゲッセマネの祈り」の場面では、イエスは死への恐怖から血の汗を流し、天の父へ救いを求めた。

 

せやけど天の父は何も答えてくれへんかったんや…

 

ちゅうか、天の父がイエスの呼びかけに答えてくれたことは一度もないけどな。

 

 

いわゆる「Agony in the Garden of Gethemane(ゲッセマネでの苦悶)」だね。

 

だからロージーも同じように何も答えてくれないんだ。

 

「Rosie」とは「Lordie(天の父)」そのものだからね(笑)

 

サビはそんな「Lordie」への嘆きだ。

 


Rosie, why do you evade?

Rosie, how can I persuade? Rosie

 

ロージー、なぜいつもはぐらかす?

どうやったらお前を納得させられる?

ロージーよ…

 

 

そう言われて聞いてみれば、ホントに「そのまんま」の歌詞だな。

 

おかえもんの言う通り、これまでの曲の中で一番簡単(笑)

 

 

でしょ?

 

2番も「そのまんま」だよ。

 

And the moon's all up, full and big,
Apricot tips in an indigo sky,

 

 

なんか矛盾してね?

 

「満月」って言ってみたり「アプリコットのチップス」って言ってみたり。

 

「tips」って「先端が尖った、ざっくりと切ったもの」でしょ?

 

 

矛盾してないよ。

 

だってトム・ウェイツは、さっきのジョルジョ・ヴァザーリの絵をもとにして歌っているんだから。

 

ほら、見てごらん。「満月」のようでもあり「先端が尖った」ようにも見えるでしょ?

 

 

 

 

ああ!やられた!

 

まさに満月のようでもあり、ざっくり切ったようでもある!

 

 

 

面白いよね、トム・ウェイツは。

 

続く歌詞もナイスだよ。

 

And I've been loving you, Rosie,
Since the day I was born
And I'll love you, Rosie 'til the day I die.

 

 

なるほどね。

 

「生まれた日から愛してる。そして死ぬ日まで愛してる」って変だと思ってたんだよな。

 

いくらラブソングでも言い過ぎだもん(笑)

 

 

元々「唯一神」なんやさかい、愛することが出来るのは「分身」しとる時だけや…

 

つまり人の子イエスとして生まれた日から、死ぬ日まで…

 

 

「Lordie」を「Rosie」と言い換えただけという、こんなシンプルな歌なのに、約半世紀の間、誰もそこに気付かなかった…

 

トム・ウェイツのソングライティングの才能と、衆人の目をはぐらかし続ける演技力は凄まじいね。

 

あのボブ・ディランに匹敵すると思うよ。いや、ディラン以上の「道化っぷり」かもしれないな…

 

というわけで『ロージー』解説はお終い。あとは同じ歌詞の繰り返しだからね。

 

次回は『Lonely(ロンリー)』だ。お楽しみに!

 

 

今回は無駄話も無く簡潔に終わったな…

 

 

物足りない?

 

 

いえ、この調子でお願いします!

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:音楽

「マルタ」MARTHA後篇〜トム・ウェイツ『CLOSING TIME』徹底解説10

  • 2018.10.14 Sunday
  • 22:34

 

 

 

 

 

さて、前回はロバート・フロストの詩『The Road Not Taken(選ばれざる道)』の意味を理解してもらった。

 

アメリカ人なら誰でも知ってるあの詩は、タイトルが示す通り、過去を振り返った旅人の心境が「二通り」に取れるようになっていたんだよね。

 

「あのとき普通の道を選ばなかったことに後悔する旅人」とも読め…

 

「あえて誰も選ばなかった道を進んだことに満足しながら懐かしむ旅人」とも読めた。

 

 

詳しくはこちらで…

 

 

 

トム・ウェイツは、福音書における「イエスとマルタ&マリア姉妹」のストーリーに、このロバート・フロストの詩を被せたんだ。

 

多くの人が選ぶような道=目の前のことにあくせくするマルタ

 

誰も選ばなかった道=目に見えない大切なことを信じるマリア

 

そして「過去を振り返った旅人が満足してるようにも後悔してるようにもとれる」という仕掛けを最大限に利用した。

 

なぜなら福音書における「マルタの扱い」は、ちょっと可哀想なところがあるんだ。

 

村にやって来たイエスを迎えに行ったり、イエスと弟子たちの食事の支度をしたりしたのは、すべて姉のマルタだった…

 

その間、妹のマリアは家の中で何もしていなかった…

 

そんな妹に対し、マルタは不満をこぼした。

 

「私はこんなに苦労しているのに、妹は何もしていません。先生からひとこと言ってやってください」とイエスに申し出たんだよね。

 

だけどイエスはマルタの献身を労うどころか、マリアの行為を褒め称えたんだ…

 

本当に大事なことをしているのはマリアの方だと…

 

『マルタとマリアの家を訪れたイエス』ハロルド・コッピング

 

 

確かにマルタお姉さんは可哀想…

 

何をやっても許される末っ子のマリアに、ちょっとだけイラっと来ただけなのに…

 

 

福音書でそういうふうに書かれて以来、妹マリアの姿勢はクリスチャンの理想像とされ、イエスが最も愛したとされる「マグダラのマリア」と同一視されるようになった…

 

そして姉マルタは、目の前の大事なものに気付かない俗物主義者のような存在にされてしまったんだ…

 

これをトム・ウェイツは可哀想だと思ったんだろうね。

 

だからマルタの唄『MARTHA』を書いたんだよ。彼女の名誉挽回のために…

 

 

そろそろ誰か突っ込んでやれや。

 

 

ねえねえ、おかえもん…

 

『マルタ』じゃなくて『マーサ』ですから…

 

 

だけどね、アルファベットを使う言語で「Martha」を「マーサ」と発音するのは少数派なんだよ…

 

多くは「マルタ」と発音するんだ。

 

それに日本で流通している聖書でも「Martha」は「マルタ」と訳されているよね?

 

 

確かに「イエスとマルタ&マリア姉妹」だけどさ…

 

「ジーザスとマーサ&メリー姉妹」じゃなくて…

 

 

では、歌詞の解説を始める前に、曲を聴いてもらおうかな。

 

ベルギー・フランドル地方のトム・ウェイツこと、LEVIEN による『マルタ』だ。

 

オランダ語なのかな?それともフラマン語かな?とにかく絶品の『マルタ』を聞いてくれ。

 

3番を歌う女性コーラス隊も素晴らしいよ…

 

 

 

素敵すぎる!

 

天国のマルタもこれで報われそう!

 

 

では歌詞を見ていこうか。

 

Operator, number, please

It's been so many years

Will she remember my old voice

While I fight the tears?

 

まずは、主人公の男が長距離電話の交換手相手に話しかけるシーンから始まる。

 

「もう何十年も話してない相手なんで、俺が涙ぐんでしまう前に思い出してほしい」と言うんだ。

 

このシーンを理解する上でのポイントは「the tears」だね…

 

このアルバム『クロージング・タイム』の法則を覚えているかな?

 

 

『クロージング・タイム』に出て来る「the tears」は「涙」じゃなくて「引き裂かれたものたち」です!

 

 

その通り。

 

トム・ウェイツは「天の父」と「子イエス」の分離を「the tears」と表現していたんだね。

 

つまりこの冒頭シーンは「久しぶりにイエスが神から分離して、マルタに長距離電話をかける」という場面になっているわけだ…

 

 

天国に長距離電話なんてあるの?

 

 

これとちゃうか?

 

元祖・長距離電話の交換手、大天使ガブリエルや。

 

『受胎告知』フラ・アンジェリコ

 

 

ああ!そうか!

 

ガブリエルは神様の言葉を下界の人間につなぐ役割だから、まさに長距離電話のオペレーターだ!

 

 

ちなみにアンジェリコの『受胎告知』には「the tears」も描かれているよね。

 

 

この絵は処女マリアに「妊娠のお知らせ」を長距離電話した時のものだから、最初から計画通りだった。

 

だけど今回のケースは「天の父」の計画には無い「tear(分離)」なので、ちょっと困難が伴ったんだろう。

 

だから「fight(苦闘)」しなければならなかったんだ…

 

 

「涙と闘ってる間に」じゃなくて「分離と闘ってる間に、思い出してくれたらいいんだけど」なんだ(笑)

 

 

そして歌詞はこう続く。

 

Hello, hello there, is this Martha?

This is old Tom Frost

And I am calling long distance,

Don't worry 'bout the cost

 

この長距離電話はガブリエルを使っているから、料金の心配はいらないってわけだ…

 

笑えるね(笑)

 

 

 

確かに通話料はかからないな。

 

モーセやムハンマドは何日間もぶっ通しで長距離電話した。これぞ元祖・無料かけ放題プラン。

 

 

そして歌詞の続きはこうだ。

 

’Cause it's been forty years or more

Now Martha please recall

Meet me out for coffee

Where we'll talk about it all

 

男は彼女の声を聞いてない期間が「40年か、それ以上」だと言う。

 

 

出たな「40」!

 

やっぱり電話の主の男の正体は主イエスや!

 

 

え?え?何で?

 

 

「four(4)」は神様の口癖や。

 

新約聖書の冒頭で、始祖アブラハムからイエスまでの代を数える時も「fourteen(14代)」ごとに数えとった…

 

そんで何か長い期間を言う時には、たいがい「40日」とか「40年」と言うてまう…

 

シナイ山に登ったモーセの期間も、イスラエルの民の荒野の旅も、荒野におけるイエスの試練も、みんな「40」やった…

 

主は「four」が好きなんや…

 

 

 

誰このヒゲのおじさん!?すごい熱唱!

 

コーラスのお母さんも寝てしまった子供を背負って頑張ってるし(笑)

 

 

ベン・キャプランは、オリエンタル風情たっぷりのバンドを従え、芝居仕立てのショーを行うアーティストだ。

 

トム・ウェイツも似たようなことしてたよね。

 

 

さて『マルタ』に戻ろう。

 

男は「40年ぶりに喫茶店で会って話をしないか?」と誘う。

 

実はこれ、駄洒落になってるんだけど、わかるかな?

 

 

誘い文句が駄洒落!?どこが?

 

 

「Meet me out for coffe(コーヒ屋で会おう)」が…

 

「Meet me out for coffin(墓場で会おう)」の駄洒落なんだよ。

 

 

は、墓場!?

 

 

『ヨハネによる福音書』によると、あるときイエスたちのもとへマルタからの使いが来た。

 

マルタの兄弟ラザロが死んでしまったという知らせだ。

 

しかしイエスはマルタの家には向かわずに、二日間もその場に留まった。

 

そして満を持して弟子たちに「ラザロのところへ行こう」と告げる。

 

この言葉に弟子たちは驚いた。もうラザロは納棺されてしまい、会うことは出来ないからだ。

 

おっちょこちょいキャラの弟子トマスに至っては、それを「我々も死んでラザロのところへ行こう」と勘違いしてしまうほどだったんだよね。

 

さて、イエスの一行が目的地のベタニヤの近くまで来ると、マルタが町の外れまで迎えに来ていた。

 

愛する兄弟を失って悲しみに打ちひしがれていたマルタは、イエスにこんなことを言う…

 

「最初からあなた様がここにいてくれたら、ラザロは死なずに済んだでしょう。でも、あなた様が願えば、どんなことでも神は聞き入れてくれるはず…」

 

 

要約すると「呼んでもすぐに来てくれへんかったんやさかい、生き返らせてください」っちゅうことやな。

 

 

そしてイエスやマルタたちは、ラザロが埋葬されている墓地へ向かう。

 

イエスが埋葬室の石蓋をどかしなさいと言うと、マルタがこう答えた…

 

「死んでから4日間も過ぎています。酷い悪臭がすることでしょう」

 

だけどイエスは石蓋を開けさせた…

 

『ラザロの復活』カール・ハインリヒ・ブロッホ

 

 

ああ!「4」だ!

 

「死後4日間経ったラザロを復活させるためにMarthaと墓(coffin)で会う」が…

 

「別れてから40年後に復縁するためにMarthaとコーヒー屋(coffe)で会う」になったのか…

 

 

キレッキレの駄洒落だよね。

 

そしてイエスはラザロを蘇らせた。

 

フアン・デ・フランダス『ラザロの復活』

 

この奇跡に人々は熱狂し、それを危険視したユダヤ評議会の長老たちは、イエスの処刑計画を練り始めることになる…

 

そしてイエスはマルタの家に行き、妹マリアが高価な香油でイエスの足を洗い、髪の毛で拭く。

 

これを見たイスカリオテのユダが「もったいない!そんな貴重品は換金して我々に寄付すべきだ!」と激昂するんだったね。

 

そんなユダについて、福音書の著者ヨハネはこう書いていた…

 

「ユダは教団の資金を横領していたから金にうるさかった」

 

 

ほんとかよ…

 

なんか「死人に口無し」で全ての責任を押し付けてないか?

 

 

そしてサビに入る。

 

And those were the days of roses,

poetry and prose

And Martha,

All I had was you and all you had was me

 

 

 出たな「rose」!

 

例によって「Lord's」のことだよね!

 

 

この部分も面白いよね。

 

トム・ウェイツはトムキャットばりに「どこがセンテンスの区切りかわからないように」続けて歌う。

 

ただの恋愛ソングだと思って聴くと、こんなふうに聞こえる…

 

マーサ、あの頃は夢だった…

 

 

それ尾崎や。「夢」やのうて「バラ色」やろ。

 

トムキャットとか尾崎とか懐かし過ぎるわ。

 

 

アイム・シェリー…もとい、アイム・ソーリー。

 

普通に訳すとこんな風になる。

 

あの頃はバラ色だった

詩と散文の日々

そしてマーサ、お前が俺の全てで

俺がお前の全てだった

 

指摘の通り「roses」は「Lord's」の駄洒落だ。

 

そして「Lord's poetry and prose(主の詩と散文)」とは「ヘブライ聖書(旧約聖書)」のことを意味している。

 

ヘブライ聖書って、散文形式の部分と詩の部分で構成されているからね。

 

当時イエスたちが読みこんで勉強していたのはヘブライ聖書だ。

 

だからマルタとの日々を懐かしんだイエスは、同時に旧約聖書を懐しんだというわけ。

 

 

なるほど!上手く出来てるな!

 

 

そしてサビの後半部分。

 

There was no tomorrows

We'd packed away our sorrows

And we saved them for a rainy day

 

ここでのポイントは「packed away」した「sorrows」と、最後の「a rainy day」かな。

 

「pack away」とは「何かに入れておいたものを、そこから出す」という意味だよ。

 

 

ラザロを石棺から出したことじゃんか!

 

そのまんま過ぎる(笑)

 

 

だよね(笑)

 

イエスはマルタの使いが来た時に、すでに「死ぬこと」を決めていた。

 

だからわざと出発を遅らせて、奇跡を大々的に演出してみせたんだ。民衆が騒いで、ユダヤの長老たちが処刑を決断するようにね。

 

だからマルタの妹マリアが高価な香油を足に塗った時に「これは私の葬いのために用意してくれたのだ」と語ったんだ。

 

 

「There was no tomorrows」か…

 

 

そしてイエスとマルタは「packed away our sorrows」した。

 

実はこの「sorrows」はラザロの英語名「Lazarus」のことなんだね。

 

「私たちの愛するラザロを墓から出した」という意味になっていたんだ。

 

「for a rainy day」は、もう説明しなくていいよね?

 

 

キリスト教文化圏において「rain」とは「主のめぐみ・降臨」のこと…

 

だから「a rainy day」とは「主の日」…

 

つまり「救済の日」…

 

 

「a rainy day」を謳うのが「福音(ゴスペル)」だからね。

 

それを歌にしたのがゴスペル・ソングだ。

 

 

 

これゴスペル・ソングなの?

 

 

SAY イエス。

 

 

今からお前を殴りに行こうか?

 

 

うまい!山田君、この二人に切り株もって来て(笑)

 

 

切り株!?

 

 

ということで2番に行こう。

 

And I feel so much older now

And you're much older too

How's your husband? And how's your kids?

You know that I got married too?

 

 男は「お互い年をとったな」と言い、マルタに「旦那さんや子供はどんな感じ?」と尋ねる。

 

そして「俺も結婚してること知ってるよな?」と言う。お互いに家庭があることを敢えて口にし、安心させる作戦だったね。

 

ここでのポイントは「married」だ。

 

これが「Mary」つまり「マルタの妹マリア」のことなんだね。

 

つまり「You know that I got married too」は…

 

「私がマリアを選んだことは知っていると思う」という意味なんだ。

 

イエスは妹マリアばかりを褒め称えて傍に置き、のちにマグダラのマリアと同一視されるようにもなったからね…

 

 

そこにマリアが隠されていたのか!

 

確かにどちらも英語では「マリー」だ!

 

 

そしてこんなふうに2番は続く。

 

Lucky that you found someone

to make you feel secure

'Cause we were all so young and foolish

Now we are mature 

 

男は「お前が安心できる相手が見つかって良かったな」と語る。

 

当時のマルタは不安や心配だらけだった。

 

家事を手伝わない妹のことで、イエスへ不満を口にするくらいにね。

 

だから『ルカによる福音書』第10章「マルタとマリアの家にて」では、こんなふうに言われてしまう…

 

Luke10:41

the Lord answered, “you are worried and upset about many things,”

 

主は応えて言った。「マルタよ、お前は多くのことを煩い、心配し過ぎている」

 

 

なるほど!

 

 

 

そして3番はトム・ウェイツからの大サービスだ。

 

名曲だからついついしっとり聴いちゃうけど、歌詞だけ見たら大爆笑だよ。

 

And I was always so impulsive

I guess that I still am

And all that really mattered then

was that I was a man

 

普通に訳すと他愛もない歌詞になる。

 

「あの頃の俺はいつもイキがっていた。今もまだそうかもしれないが。でもまあ、若造だった俺がいっぱしの男だと勘違いしてたことが問題だったんだよ」

 

 

すべて若気の至りやさかい、許してチョンマゲってことか…

 

 

でも本当の意味は違う。

 

まず「impulsive(衝動的)」がナイスだよね。この「インパルス的」という言葉には、深い意味が隠されているんだ。

 

「インパルス」とは「活動電位」のことだよね。

 

細胞内で「発火」したインパルスは、他の細胞へ「伝導」して行き、生物が生きるために重要な情報を伝える役割をもつ。

 

男は「むかしインパルス的だったけど、今もまだそうかも」と言うんだ…

 

 

深い…

 

 

そして自嘲的に「I was a man」だったと語る。

 

 

確かにあの頃は血肉をもつ「人の子」だった…

 

 

そしてついに、この歌の「タネ明かし」が行われる…

 

I guess that our being together

was never meant to be

And...

Martha, Martha...

I love you can't you see?

 

まず男はマルタに「俺たちが一緒になるなんて絶対ありえないことだった」と語る。

 

 

そりゃそうだ。

 

妹のマリアさんと一緒になることだって多くの人にはありえないと考えられているのに。

 

 

だよね。

 

そして極めつけのフレーズの登場だ。男はマルタに呼び掛ける…

 

「Martha、Martha…」

 

実はこれ、さっき紹介した『ルカによる福音書』第10章41節の最初のフレーズなんだ。

 

不満を訴えたマルタを諭す時の「呼びかけ」なんだよね。

 

「マルタよ、マルタ…」といえば、誰しもこれを思い浮かべるくらい有名なセリフなんだよ。

 

 

シェイクスピアの「O Romeo, Romeo」みたいなもんか…

 

 

まさに。

 

そして男は「俺がお前を愛していることがわからないのかい?」と言う。

 

福音書では妹マリアにいいところを全部持って行かれ、損な役割ばかりを押し付けられたマルタだったけど、ちゃんと主は愛してくれていたんだ。

 

ペトロにしろユダにしろ、損な役割を与えられる人物って実は、重要な存在であることの裏返しなんだ。

 

そのことをひとこと言っておきたかったんだろうね。

 

冷たい仕打ちをしてしまったかもしれないんだけど、それも愛ゆえのことだった…と。

 

だから久しぶりに「長距離電話」を掛けたというわけだ。

 

面白いね、トム・ウェイツって(笑)

 

 

でもやっぱり「何を今さら?」なんじゃない?

 

女の人からしたら「そのセリフ、あの時に言ってよ」って感じじゃない?

 

 

そう言われると身も蓋も無いんだけど…

 

やれやれ…まったく最近の子供ときたら…

 

 

おい、まだ終わりちゃうで。

 

『Martha』は最後をこないなフレーズで締め括る…

 

And I remember quiet evenings

Trembling close to you...

 

 

 

男は昔のことを思い出すんだね。マルタのそばで「tremble」したことを…

 

この「tremble」は「身震いする・心を震わせる」という意味なんだけど、ポイントは「close」とセットで使われていることだ…

 

 

このアルバムのキーワード「close」だ!

 

「close」が出て来たら「cross(十字架)」のことだと思え、の法則!

 

 

その通り。

 

イエスが十字架で死んだ際、大切な人たちが見守っていたとされている。

 

母マリアや使徒ヨハネ、そしてマグダラのマリアやベタニアのマリアなどだ…

 

このメンバーがいたのなら、当然マルタがいてもおかしくない。

 

そしてイエスが死んだ瞬間には不思議なことが起きた。

 

急に空が夜のように暗くなり、天を裂くような猛烈な音が鳴り響き、地震が起きて天幕が裂けたんだ。

 

ラストのフレーズは、このことを言ってるんだね。

 

 

最後まで完璧だな、トム・ウェイツ!

 

 

僕の解説もね。

 

 

その格好でドヤ顔するな!

 

材木屋さんにカットしてもらってに十字架にしてしまうぞ!

 

 

面木ない。

 

 

面目!

 

 

さて、例によって最後がグダグダになってしまったんで、今回は清らかな心でお別れすることにしよう。

 

 

清らかな心?

 

 

これまでこのシリーズでトム・ウェイツの曲を歌ってくれたアーティストたちが、素敵なプレゼントを僕に送って来てくれたんだ。

 

みんなで『Martha』を歌ってくれたんだよ。心が洗われるような素晴らしいコーラスでね…

 

 

マジで!?わざわざうちらのために!?

 

 

では、ここまで読んでくれた皆さん、どうもありがとう。

 

またB面編でお会いしましょう。

 

よい夜を。

 

 

 

素敵…

 

ホントに心が洗われちゃった…

 

 

ええなァ。

 

せやけどホンマにあの歌手たちなんか?

 

 

まさか(笑)

 

 

輪切りにしてバウムクーヘンにしたる。。。

 

 

 

 

 

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